本文に移動

「良心に照らしイラン戦争支持できない」…「トランプ忠誠派」米対テロ所長が電撃辞任

登録:2026-03-18 06:51 修正:2026-03-18 08:33
「差し迫った脅威ではなかったイラン…イスラエルの強力なロビー活動で戦争開始」
ジョセフ・ケント米国家テロ対策センター(NCTC)所長が、2024年10月7日、オレゴン州ポートランドのKATUスタジオで開かれた下院議員候補討論会で発言している=ポートランド/AP・聯合ニュース

 米国家テロ対策センター(NCTC)のトップが「イランは差し迫った脅威ではなかった」とし、イラン戦争を支持できないという内容の公開書簡を残して電撃的に辞任した。大統領の首席対テロ補佐官であり情報機関の高官が、戦争開始の主な名目である「差し迫った脅威」を全面否定したことで、米政府は深刻な打撃を受けることになった。

 ジョセフ・ケントNCTC所長は17日(現地時間)、ソーシャルメディア「X」への投稿で、ドナルド・トランプ大統領宛ての辞表の形の書簡を公開した。ケント所長は書簡の中で、「イランは米国に対する差し迫った脅威ではなかった。良心に照らして、現在行っているイランとの戦争を支持することはできない」とし、「今回の戦争はイスラエルと強力な米国内ロビー活動の圧力によって始まった」と主張した。ケント所長は、2度にわたり共和党下院議員候補として出馬したことがあるトランプ大統領の忠実な支持者であり、昨年7月に上院の承認を経て、対テロ・対麻薬政策を率いてきた。

 ケント所長は「イスラエルの高官や一部の米メディアが『偽情報キャンペーン』を通じて戦争支持世論を煽り、トランプの『アメリカ・ファースト』路線を損ない、イランが差し迫った脅威であるかのように大統領を欺いた」と指摘した。さらに「短期間での勝利を約束した論理は偽りであり、これはイラク戦争に米国を引きずり込んだ際、イスラエルが用いたのと同じ戦術だ」と批判した。ケント所長は「米国国民に何の利益ももたらさず、米軍の犠牲を正当化することもできない戦争に、未来ある世代を送り込むことを支持することはできない」とし、「トランプ大統領は今からでも進路を修正し、国家のための新たな道を切り開くことができる。すべてのカードは大統領の手中にある」として、決断を促した。ケント所長は米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)出身で、11回にわたり戦闘地に派兵されており、米中央情報局(CIA)の準軍事組織でも活動した経歴のある安全保障の専門家。同時に、トゥルシ・ギャバード国家情報長官(DNI)の側近であり、トランプ政権内部で不干渉主義路線を貫いてきた代表的な人物とされる。

 1973年に制定された戦争権限決議は、大統領による軍事力の行使を(1)戦争の宣戦布告、(2)議会の具体的な授権、(3)米国に対する攻撃によって引き起こされた国家非常事態の3つの場合に限定している。法律専門家たちは、差し迫った脅威への対応ではなく、将来の潜在的な脅威を名目にした軍事行動は、これら3つの要件のいずれにも該当せず、法的根拠が弱いと指摘している。大統領の首席対テロ補佐官がイランの「差し迫った脅威」を真っ向から否定しただけに、トランプ政権が掲げる戦争の名目が少なからぬ打撃を受ける可能性があるとみられる。ホワイトハウスと国家情報長官室は、今回の辞任に関してまだ立場を表明していない。

 ケント所長の辞任は、「アメリカ・ファースト」を標榜してきた陣営内部でさえ、今回の戦争に反発する勢力がいることを示す象徴的な出来事といえる。ケント所長の直属の上司であるギャバード長官はイラン戦争勃発以降、公の場での発言を控え、慎重な体制を貫いている。以下はケント所長の辞表全文。

トランプ大統領殿

 熟考の末、本日付けで国家対テロセンター所長の職を辞任することを決めました。

 良心に照らして、現在行われているイランとの戦争を支持することはできません。イランはわが国に対し、差し迫った脅威を与えておらず、今回の戦争がイスラエルおよび米国内の有力なロビー団体の圧力によって開始されたものであることは明らかです。

 私は、大統領が2016年、2020年、2024年の選挙で掲げ、第1次政権で実践された価値観と外交政策を支持します。大統領は2025年6月まで、中東の戦争が我々の愛国者たちの尊い命を奪い、わが国の富と繁栄を消耗させる罠であるという点を理解しておられました。

 大統領の第1次’政権時代、大統領は終わりなき戦争に巻き込まれることなく、軍事力を断固として行使する方法を、どの現代の大統領よりもよく理解しておられました。これは、カセム・ソレイマニの殺害とISISの撃退を通じて実証されました。

 しかし、今回の政権発足当初、イスラエルの高官や米国内の有力なメディア関係者が、大統領の「アメリカ・ファースト」路線を全面的に損なう偽情報キャンペーンを展開し、イランとの戦争を誘導する戦争賛成世論を作っていきました。このような「エコーチェンバー(SNSやネット上の閉ざされたコミュニティの中で、似た意見や価値観を持つ人々と交流することで、自分の意見が正しいと強化・増幅される現象)」は、イランが米国に差し迫った脅威となっており、今攻撃すれば迅速な勝利につながるという信念を大統領に植え付けるために活用されました。しかし、これは偽りであり、イスラエルが過去に米国を数千人の若者の命を奪った惨憺たるイラク戦争へと引きずり込んだ際に用いたのと同じ手法です。私たちは同じ過ちを繰り返してはなりません。

 私は11回にわたり戦闘に派遣された退役軍人であり、イスラエルが引き起こした戦争で最愛の妻、シャノンを失った「ゴールドスター」遺族として、米国国民に何の利益ももたらさず、米国人の命という代償を正当化することさえできない戦争に、未来ある世代を送り出して戦わせ死なせることを支持することはできません。

 私は、大統領に私たちがイランで何をしているのか、そしてそれが誰のためなのかを深く考えていただきたいと思っております。今こそが果敢な決断が必要な時です。大統領は方向を転換し、わが国のための新たな道を選ぶこともできれば、私たちをより深い衰退と混乱へと突き落とすこともできます。選択は大統領にかかっています。

 トランプ政権において、そして偉大なるわが国のために奉仕できたことを光栄に思っております。

ジョセフ・ケント国家テロ対策センター所長

ジョセフ・ケント米国家対テロセンター所長が17日(現地時間)、ソーシャルメディア「X」に投稿したドナルド・トランプ大統領宛ての辞表の形の書簡=ソーシャルメディアよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社
ワシントン/キム・ウォンチョル特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/america/1249821.html韓国語原文入力:2026-03-18 02:45
訳H.J

関連記事