「ソ連を締め出し、米国を引き込み、ドイツを抑え込む」
北大西洋条約機構(NATO)の初代事務総長を務めた英国出身のヘイスティングス・イスメイ氏のこの言葉は、第二次世界大戦後、国際秩序の主軸だった米国と欧州の大西洋両岸同盟、すなわち西側同盟を最も的確に表現した言葉だ。戦後の国際秩序は、米国が主軸の西側勢力がソ連に象徴される反西欧勢力を制圧する過程だった。1991年のソ連解体で本格化した社会主義圏の崩壊後も、NATOに象徴される西側同盟は多様な国際事案を主導した国際秩序の柱だった。
だが、西側同盟の一主軸だった欧州は今や「米国を締め出し、ロシアおよび中国と妥協し、ドイツを浮上させる」という新しいパラダイムに直面しているものとみられる。
5日、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は、ドナルド・トランプ米大統領が自国の自治領のグリーンランドを獲得すると主張したことと関連し、「米国が他のNATO加盟国を軍事的に攻撃するとき、すべてが止まる」とし、「それはNATO自体、そして第二次世界大戦後に提供されてきた安全保障も含まれる」と述べた。フレデリクセン首相は「トランプ大統領(の主張)を真剣に受け止めなければならない」として、トランプの主張が単なる脅しでは終わらないと語った。
その後の状況は、フレデリクセン首相が警告した通りに進んでいる。J・D・バンス米副大統領は8日、グリーンランドに関する「(トランプ)大統領の発言をありのままに受け止めなければならない」と脅す一方、トランプ大統領は軍事力の使用も辞さないという意思を示している。14日、米ホワイトハウスで米国とデンマークとグリーンランド間の高官級会談が成果なしで終わったことを受け、欧州の8カ国のNATO加盟国は同日、グリーンランドで軍事演習「北極圏耐久演習」の実施を発表した。
これに対しトランプ大統領は17日、この軍事演習に参加した欧州8カ国に「2月1日から米国に輸出するすべての商品に10%の関税を課し、6月からは25%に引き上げる」と脅しにかかった。翌日の18日、欧州委員会が930億ユーロ規模の対米報復関税を検討するという報道が出た。
報復関税が現実化されなくても、互いに対する不信感はすでに臨界点を過ぎたと欧州はみている。第1次トランプ政権(2017年1月〜2021年1月)からトランプ大統領は欧州の効用性を早くから否定してきた。
英国の対外政策研究所「チャタムハウス」のブロンウェン・マドックス所長は13日、「米国の同盟国は、これからは想像できなかった状況、すなわち貿易と安全保障の両面で米国に対抗して自らを守らなければならない状況を考えるべきだ」とし、「これを西側同盟の終末と呼ぶのは決して過言ではない」と診断した。
ロシアと中国は、西側内部の対立に喜びながらもそれを顔に出さないようにしている様子だ。クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は19日の定例会見で、トランプ大統領のグリーンランド併合の試みが「良いか悪いか、あるいは国際法に符合するか否かと切り離して考えることができる」とし、「グリーンランド併合問題を解決すれば、(グリーンランドを占領すれば)トランプは歴史に長く残るという国際専門家たちがいる」と述べた。国際法違反の素地があることを遠まわしに嘲弄したのだ。20日、中国官営の「グローバル・タイムズ」は「欧州の最大の問題は友人と敵を区分できない無能力にある」という見出しの論評で、欧州がが米国にまともに対抗せず「簡単に振り回される境遇」になったと指摘した。