ハマス撲滅を名目にパレスチナ住民をガザ地区から追い出そうとするイスラエルの構想が現実化しているものとみられる。
10日、カタールのドーハで開かれた「ドーハ・フォーラム」でアラブ諸国や国連関係者らは、イスラエルがガザ地区南部に避難した住民らを再び攻撃し、事実上、彼らを国境の外に追い出していると指摘した。ヨルダンのアイマン・サファディ外相は、「我々が今ガザ地区で見ているのは、単に罪のない住民を虐殺し、彼らの生計を破壊することではない。ガザ地区で住民を立ち退かせようとする組織的な取り組みだ」と述べた。さらに、ガザ地区住民に対する「無差別的な」破壊の範囲はハマスを撲滅しようとするイスラエルの目標が偽りであることを示しているとしたうえで、これは「大量虐殺の法的定義」を充足するものだと非難した。
国連パレスチナ難民救済事業機構(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長も同フォーラムで、「私たちが目撃しているのは、パレスチナ住民がどこに滞在するか、他の場所に再移住するかにかかわらず、エジプトに移そうとする(イスラエルの)試み」だと指摘した。また、ガザ地区北部の広範囲な破壊とそれによる難民の発生は「そのようなシナリオの第一段階」であり、南部の都市ハンユニスで民間人をエジプト国境付近に追い出すのは次の段階だと評価した。また「すでに多くの人々が第2の『ナクバ』と呼んでいるこのような計画が続けば、ガザ地区はもはやパレスチナ住民の土地ではなくなるだろう」とし、「国連および米国などの加盟国はガザ住民をガザの外に強制的に移住させることを断固拒否する」と付け加えた。
イスラエルは1948年の建国当時、パレスチナ住民の土地を武力で合併し、その土地に住んでいた76万人を追い出した。この事態はアラビア語で「大厄災」を意味するナクバと呼ばれるが、今回のガザ戦争が第2のナクバを引き起こしているという指摘だ。これについて、イスラエル国防軍(IDF)の報道官は「イスラエルはガザ地区の住民をエジプトに移す計画はなく、今後もない」と否定した。
だが、イスラエル情報省は戦争勃発5日後の10月13日、ガザ住民をシナイ半島に強制移住させることを提案した報告書を出した。同省は当時、最も有力な対策としてガザ地区北部に対する大規模な空爆と攻撃を通じて、北部住民の南部移住→イスラエル国防軍の北部から南部への進軍・占領で住民をシナイ半島に追い出す→住民の帰還禁止を提案した。
イスラエルの閣僚と議員たちからもガザ地区から住民を移住させる案を支持する発言が相次いでいる。ギラ・ガムリエル情報相は11月、「(戦争終結後の)一つの代案は、ガザ地区のパレスチナ住民をガザの外部に自発的再移住するよう促すこと」だと述べた。ダニ・ダノン議員とラム・ベン・バラック元国連大使も11月13日、ウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿で、欧州には紛争を逃れてきた難民を助ける長い歴史があるとし、世界の国々もこれにならい、再移住を望むガザ住民に避難所を提供すべきだと主張した。イスラエルの元高官も最近、マスコミとの会見で、エジプトが国際援助を受け、シナイ砂漠にパレスチナ難民のための巨大なテント都市を建設することも考えられると主張した。
米国はガザの外部に住民を追い出すことに強く反対する立場を明らかにした。しかし、米国の反対意見が、イスラエルがこのような計画を進めている情況証拠として受け止められている。アントニオ・グテーレス国連事務総長は同日、カタールで、ガザ南部の状況について「公衆秩序がまもなく完全に破壊され、伝染病が増え、エジプトへの大量移住の圧力が強まるなど、さらに悪化した状況が発生するものと予測される」と述べた。