10月7日、ガザに拠点を置く軍事集団ハマスがイスラエルに奇襲攻撃を仕掛けたのが火種となって「イスラエル・ハマス戦争」が始まり、この残酷な戦争は今も止まる気配がない。イスラエルはハマスの撲滅を名目に掲げたが、民間人が居住する地域を無差別に攻撃し、これまでに少なくとも1万6248人のパレスチナ人が死亡した。また、全体人口230万人のうち80%を超える190万人が住居を失い難民となった。
ならば、イスラエルが繰り広げる戦争は、彼らの言うように、ハマスに対する報復のためだけだろうか。ユダヤ人でありながら、20年以上イスラエル・パレスチナ問題を報道してきた独立ジャーナリストであり、『ショック・ドクトリン』の映画監督であるアントニー・ルーヴェンシュタインは著書『パレスチナ実験室』で、世界で「占領の技術」を売って莫大な利益を得ているイスラエルの素顔を告発する。著者はイスラエルが住民を統制し分離する方法を実験する現場としてパレスチナを活用しており、各種の新兵器を使った後「戦場で試した兵器」だと広報し、世界各国に新兵器を販売し莫大な利益を得ていると伝える。
同書によると、イスラエルは2021年の兵器販売額が以前の2年間の実績を55%も上回り、113億ドルに達するほどだ。このようにイスラエルが世界10大兵器大国に浮上できた背景には、米国やフランス、ドイツ、英国など西側勢力の支援があった。同書にはロケットや防空システム、ミサイル、サイバー兵器、レーダーなどイスラエルが販売する各種兵器を購入しようと血眼になった国々の現況が紹介されているが、現在戦争を繰り広げているロシアとウクライナはもちろん、欧州の国々、インドとアゼルバイジャン、そしてトルコまで、その広範囲さには開いた口が塞がらないほどだ。対外的には世界平和を唱えていた数多くの国々が、イスラエルの「占領技術」と兵器を購入し、隠密な関係を結んでいたという事実に苦々しさを感じると同時に、冷酷な国際関係の力学を直視させられる。
同書はまた、1948年のイスラエル誕生以来、彼らの兵器の発達および販売の歴史を深く取り上げている。独自に生存可能な国防力を発展させたイスラエルは、1950年代半ばから国境を越えて殺傷道具を販売し始めた。 政府所有の防衛産業企業が発展し、1960年代には民間所有の企業が成長した。著者は機密解除された資料を通じてイスラエルとスハルトのインドネシア、シャー統治下のイラン、内戦中のレバノン、1980年代の内戦中のグアテマラの防衛関係に関する多様な事例を取り上げているが、膨大な資料の量と客観的記述が目を引く。他にも著者はイスラエル退役軍人が設立した企業「NSO」や「セレブライト」、「ブラックキューブ」などが開発したサイバー監視技術が、世界各国でどのような形で反政府人物を監視するのに活用されているのかも詳細に紹介する。
イスラエル・ハマス戦争を見守る世界市民は、この戦争が一日も早く終息することを望んでいる。しかし、同書を読んでいると、単純に戦争を中止するだけでは根本的な問題解決にならず、国際社会がイスラエルの兵器販売の問題点を正確に認識し、不買運動や投資撤回のようなより積極的な方法が必要であることが分かる。