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北朝鮮、実質的な脅威に浮上…米国主導の安全保障環境を揺るがす「重大な要因」に

登録:2023-09-15 06:25 修正:2023-09-15 07:23
[ニュース分析] 金正恩とプーチンの密着
朝鮮中央テレビは14日、北朝鮮の金正恩国務委員長が前日にロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談したと報じた/朝鮮中央テレビ画面・聯合ニュース

 米国と中ロの陣営対決が本格化する中で行われた13日の朝ロ首脳会談で、北朝鮮が東アジアを越えて欧州と米本土を含む全世界の安保環境を揺るがしかねない「重大な要因」に浮上した。30年間未解決状態の北朝鮮核問題が、朝鮮半島と東アジアを越えて全世界に大きな懸念を抱かせる難題になったのだ。

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は今回のロシア訪問を通じて、国連安保理常任理事国のロシアと「戦略・戦術的協力をより緊密に」(14日、朝鮮中央通信)することで合意した。社会主義圏が崩壊して以来、この30年間続いてきた孤立から抜け出し、対米共同戦線に参戦することになったのだ。

 中ロは冷戦終結後、韓国と国交を樹立した後は伝統的な友好国だった北朝鮮を冷遇し、事実上放置してきた。残された北朝鮮は、核開発という「危険な選択」を進めることで、米国との関係正常化を通じた生き残りの道を模索しようとした。米国は時には中ロの支援のもと(2003~2008年の6カ国協議)、時には2国間交渉を通じて(1994年のジュネーブ合意、2018~2019年の朝米核交渉)核問題を解決し、北朝鮮を米国主導の国際秩序に組み入れようとした。安保理常任理事国である中ロは、北朝鮮の立場に同情しながらも、2006年の北朝鮮の第1回核実験前後に始まった11回にわたる対北朝鮮制裁決議に賛成票を投じた。ところが、2019年2月末ベトナムのハノイで行われた2回目の朝米首脳会談が残念な「ノーディール」で終ったことを機に、北朝鮮は米国との関係正常化を事実上諦め、「核武力の高度化」の道に突き進むことになる。

 その後、国際情勢は大きく変わった。ジョー・バイデン米大統領の登場後、米中戦略競争が本格化し、昨年2月末にはウクライナ戦争が勃発した。米国は中国を自国に対する「挑戦」とし、ロシアを「脅威」とみなしている。中国に対してはクアッド(QUAD)、オーカス(AUKUS)、韓米日三角同盟などを通じて包囲網を強化し、ロシアに対抗してウクライナに全面的な軍事支援を行う一方、主要7カ国(G7)などとともに過酷な経済制裁を維持している。中ロは「制限のない協力」を宣言し、戦略的協力を強化している。

 このような情勢の変化が北朝鮮に「風穴」を開けた。ウクライナ戦争が長期化し、窮地に追い込まれたロシアが、北朝鮮の戦略的価値を見直したのだ。朝ロの接近に対する米国の見解は、「孤立した」ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が同じく孤立状態の金委員長から砲弾などの武器を手に入れようとしているということだ。

 しかし、両国の協力はこれを越えて「米国に対する挑戦」という明確な戦略的目標の下で行われるものとみられる。プーチン大統領は13日、ロシア宇宙技術の心臓部であるボストーチヌイ宇宙基地に金委員長を招待し、「両国が戦略的協力を強化する必要がある」と述べた。さらに、北朝鮮に人工衛星打ち上げ技術を伝授する用意があるという趣旨の発言もした。金委員長も「政治、経済、文化をはじめ関心事案など協力する問題が多く、また私たちが幇助(助け)を受けるべき問題も多い」として、全面的な協力を進める意思を隠さなかった。さらに「ロシアが覇権主義勢力に対抗して正義の偉業を行っている」とし、「私たちはロシア政府が取るすべての措置に無条件的な支持を表明してきた。今後もロシアの側に立つだろう」と宣言した。

 ロシアがプーチン大統領の言及どおり、北朝鮮に人工衛星技術を伝授すれば、まだ性能が疑わしいと評価されている北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の米本土打撃能力が飛躍的に発展する可能性がある。さらに、北朝鮮が望む原子力潜水艦技術まで手に入れることになれば、米国は北太平洋で北朝鮮の戦略潜水艦を追跡するために頭を悩ませなければならない。米国にとっては到底黙過できない致命的な安全保障上の脅威だ。ジョン・カービー国家安保会議戦略広報調整官は13日(現地時間)、ブリーフィングで「朝ロが武器取引を進展させるなら、我々も対応措置を取る」とし、「北朝鮮の軍事力を向上させるいかなる合意も我々にとっては非常に懸念すべきことだ」と述べた。

 ロシアは国連安保理で拒否権を持つ常任理事国であるため、米国の強硬対応にも限界が伴う。韓国の保守メディアは政府に強い対抗措置を求めているが、北朝鮮に対する「強対強」の対応はその後さらに大きな破局を生んだ。

 朝ロの危険な連帯がどこまで進むかを予測するのは難しい。両国間の合意内容、中国の反応、ウクライナ戦争の展開の状況、韓米の今後の対応など複雑な要素がある。唯一明らかなのは、ドナルド・トランプ前大統領が金委員長を残しハノイを離れてから4年7カ月ぶりに、北朝鮮が世界の安全保障に影響を与える主な要因に浮上したという事実だ。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1108637.html韓国語原文入力:2023-09-150 1:09
訳H.J

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