ウクライナ戦争で5~6日に起きたカホウカダムの決壊を巡り、ロシアとウクライナが互いに相手側の仕業だと主張する中、ウクライナが傍受でロシアの犯行を立証する情報を入手したと主張した。しかし、その内容が不明でウクライナ側の主張を立証できないうえ、米国は誰の仕業なのか断定できないという慎重な立場を保っている。
ウクライナ保安局(SBU)は9日、ロシアのサボタージュ団体がカホウカダムを爆破したことを立証する通話を傍受したとし、その内容をテレグラムのアカウントに載せた。ロイター通信が報じた。
1分30秒にわたるこの音声ファイルで、ロシア語で会話する2人はロシア軍兵士であり、カホウカダムの破壊とそれによる災害について話し合う内容だと、ウクライナ保安局は主張した。
音声ファイルでは、ある男性が「彼ら(ウクライナ人)はそれを攻撃しなかった。攻撃したのは私たちサボタージュグループだ」とし、「彼らがダムで(人々を)怖がらせようとした」と語った。この男性は「計画通りにいかず、彼らが計画していた以上のことを行った」としたうえで、その結果、下流の「サファリ公園」で「数千匹」の動物が死んだとも話した。これに対し、別の男性はロシア軍がダムを破壊したという主張に驚きを示した。
ウクライナ保安局は、この通話をした人たちの身元や詳しい内容については明らかにしなかった。保安局は声明で「ウクライナ保安局の傍受はカホウカダムが占領者のサボタージュで爆破されたことを確認させるもの」だとし、「侵略者たちはダムを爆破してウクライナを脅し、我が国の南部に人工的な災害をもたらした」と主張した。
ロイター通信はこの傍受とその内容の真偽を確認できないと報じた。
米国はダムの破壊がどちらの仕業かについて、断定しない慎重な態度を保っている。米国防総省のパトリック・ライダー報道官は8日の定例記者会見で、ダムの破壊について「これがどのように起きたかを引き続き分析している」とし、国防総省がダム崩壊について調査中であることを明らかにした。
ライダー報道官は「仮説を立てたり推測をするつもりはない」としながらも、「しかし、私たちがこのような状況に陥った理由はロシアがウクライナに侵攻したためであることは非常に明らかだと思う」と述べた。さらに「そのため、ウクライナ人は当然自分たちを守る権利を持っており、私たちには彼らを守ることを支援する権利がある」と語った。
これに先立ち、ホワイトハウスのジョン・カービー国家安保会議(NSC)政策調整官も6日の記者会見で「私たちはダム爆発にロシアの責任があるという報道を分析するため最善を尽くしている」とし、「今のところ何が起きたのかについて断定的には言えない」と述べた。
ウクライナ側は、カホウカダムがロックフィルダムであるため、外部攻撃ではなく内部に爆弾装着で破壊されたとし、ダムを占領したロシアの意図的な破壊工作でダムが決壊したと主張している。一方、ロシア側はウクライナがロシア占領地であるクリミア半島の水源地を遮断し、反撃攻勢の失敗を隠すためにダムを意図的に破壊するサボタージュ工作を行ったと反論している。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は同日、ヘルソンを訪問して浸水被害状況を点検した。へルソン州のオレクサンドル・プロクジン州知事は、約2千人の民間人が浸水地域から疎開したとし、被害状況を明らかにした。プロクジン知事はヘルソン地域での浸水地域の68%はドニプロ川東岸のロシア占領地だとし、ロシア側の被害も大きいことを認めた。