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10カ月続いた激戦地ウクライナ・バフムト、占領すなわち勝利ではない

登録:2023-06-03 06:26 修正:2023-06-03 07:34
ウクライナ侵攻最大の激戦地バフムト…ロシアが占領しても、今後の戦況がより重要に
ウクライナのバフムトの劇場と商店が破壊される前の2022年5月8日の様子(上)と交戦で建物が破壊された2023年5月15日の写真(下)の比較/AP・聯合ニュース

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が西側の主要7カ国首脳会議(G7サミット)に参加した2023年5月22日、ウクライナ戦争最大の激戦地であるバフムトがロシアによって最終的に陥落したという知らせが飛び込んできた。ゼレンスキー大統領はこの日、ウクライナが今もバフムトを統制しているのかを問う記者団の質問に「違うと考えている」としたうえで、「いまやバフムトは私たちの胸中にしかない。悲劇だ。そこには何もない」と述べた。だが、バフムトが10カ月間の激烈な戦いの最後にロシアによる占領という新しい局面に入ったという状況は変わらなかった。

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象徴的な重要性に執着した消耗戦

 米国防総省も5月24日、ロシアがこの都市を統制しているのかについて言及することを拒否した。西側メディアにウクライナ戦争の戦況を提供する米国の「戦争研究所」(ISW)も同日、ウクライナ軍参謀本部が2022年12月以来初めて出した状況報告書で、バフムトの戦闘報告をしなかったことを伝えた。研究所は、これはバフムトの戦いを主導したロシアの傭兵部隊ワグネル・グループが、都市内をさらに前進していることを示唆するものだと評した。

 2022年8月初めから本格化したバフムトの戦いは、その後、ウクライナ戦争における戦闘の大部分を占める激戦地として浮上した。ロシアは最終的には占領したが、双方の損益は現在も進行形だ。双方が、バフムト自体の戦略的価値より、兵力と資源を投じる被害を甘受してまで消耗戦を行い、象徴的な重要性に執着したためだ。

 まずロシアは、都市の占領そのものによって象徴的な勝利をおさめた。2022年夏に北部のハルキウと南部のヘルソンを奪還されて以来、初めてのことだ。G7サミットに合わせてバフムトを占領し、ウクライナ支援をこの会議の焦点としようとしていた西側の雰囲気に冷や水を浴びせた。

 何より、ロシアがバフムトの戦いに執着した理由は、ウクライナの戦力と資源を消耗させようとする戦略であったとする評価が多い。ワグネル・グループのトップであるエフゲニー・プリゴジン氏は、バフムトでのロシアの真の目的は、バフムトではなくウクライナの戦力を消耗させる「肉挽き器」の状況を作りだすことだと述べた。2022年末から西側の軍事当局は、ウクライナは戦略的価値がないバフムトの死守に執着せずに放棄すべきという不満を表出していたという報道が出ていた。ウクライナがロシアの消耗戦戦略に巻き込まれたという懸念だ。

 ウクライナの立場からすると、バフムトは自国の抗戦能力を誇示し、西側の支援を促す戦場だった。2022年12月、ゼレンスキー大統領は米国を電撃訪問する直前、バフムトを訪れた。米国議会を訪れた際には、バフムトで戦う兵士たちのサインが書かれた国旗を誇示した。ウクライナはバフムトでの抗戦によって、西側から中距離精密兵器や装甲車、戦車を引きだし、ついに今回のG7サミットではF-16戦闘機の支援まで引きだした。

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誰がより大きな犠牲と代価を払ったのか

 何よりウクライナも同様に、バフムトの戦いの目的は、ロシアの戦力を縛りつけ消耗させ、2023年に予告した自国の反撃を準備することだと主張してきた。特殊作戦軍司令官のイェウヘン・メゼビキン大佐は「彼らを消耗させ攻撃する」と5月21日にAP通信に述べた。英国セント・アンドルーズ大学戦略研究所のフィリップス・オブライエン教授は「ロシア軍はバフムト周辺で甚大な犠牲を被り消耗し、これ以上は前進できない」と評した。

 このような主張と評価から、バフムトの戦いにおける双方の損益は、誰がより大きな犠牲と代価を払ったのかにかかっている。

 プリゴジン氏は、5月24日に公開された政治専門家コンスタンチン・ドルゴフとのインタビューで、契約制の傭兵1万人と刑務所から抽出した受刑者1万人を含む2万人が死亡し、約3万人が負傷したことを明らかにした。プリゴジン氏は、ワグネル・グループでは5万人程度が最大の動員だったとしたうえで、ウクライナ軍8万2000人を相手にしたと述べた。同氏はさらに、ウクライナ兵士は約5万人が死亡し、5万~7万人が負傷したと主張した。彼の主張通り、ワグネル・グループが5万人以上の兵力を動員するのは難しいとみられる。この戦争で動員された双方の兵力が20万~30万人であることを考慮すると、バフムトの戦いに投入可能な双方の戦力は最大10万人前後であり、数万人の死亡者は誇張されている。双方が2万人の犠牲者を出したことも、きわめて高い死亡者比率と評価される。

 戦傷者数よりも、その過程で誰がより戦力を消耗し、コストを払ったのかという点が重要だ。この戦いでは、ロシア正規軍はほとんど被害を受けなかった。ワグネル・グループの損失が大きかったとすれば、ロシア側も被害を受けたとはいえる。だが、傭兵の特性上、特定のエリアでの戦いにだけ投入され、広範囲な正規戦の戦線を引き受けはしない。これは、今後広がるウクライナの反撃攻勢に臨むロシア正規軍の戦力が比較的保全されていることを意味する。その反面、ウクライナは正規軍を動員して激戦を行い、予告した反撃攻勢に用いる戦力を消耗したことは明らかだ。

 ウクライナ側は、すでにバフムトの陥落直前に、周辺の郊外で有利な高地を確保する成果をあげ、バフムトを包囲し反撃の機会をつかんでいる立場だ。ウクライナのハンナ・マリャル国防次官は「敵はバフムトを包囲することに失敗した。都市周辺の高地を喪失した。わが軍は前進を続け、都市の半分を包囲した」と評価した。戦力が補充されれば攻勢に打って出ることができるという主張だ。プリゴジン氏も5月24日、SNSのテレグラムを通じて「ウクライナはバフムトを包囲し、クリミアを攻撃するだろう」としたうえで、「危険な戦争に備える必要がある」と述べた。

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ウクライナが抗戦の成果を得る可能性も

 第2次世界大戦以降で欧州で最も激烈な戦闘となったバフムトの戦いの勝敗は、今後の戦況によって決まるだろう。ウォール・ストリート・ジャーナルなどの西側メディアによると、軍事専門家らはバフムトの戦いの真の勝者は、都市の占領の有無よりも次の局面によって決まるとみているという。現時点では予告状態にあるウクライナの反撃が無為に終わるか反撃されるのであれば、バフムトでロシアが所期の目的を達成することになる。一方、ウクライナがロシアの占領地に食い込み、占領状態を変えるのであれば、ウクライナはバフムトでの抗戦で効果を得ることになる。

チョン・ウィギル|国際部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://h21.hani.co.kr/arti/world/world_general/53912.html韓国語原文入力:2023-05-29 14:09
訳M.S

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