ウクライナが予告してきた「大反撃」が始まったかどうかをめぐり様々な分析が飛び交う中、ウクライナ国防省高官が「東部ドネツク州で本格的な攻勢に転換した」と述べた。ウクライナ軍はドネツク州中部バフムト周辺で一定の戦果をあげたと主張している一方、ロシア軍は南西部地域で、2日連続でウクライナ軍に撃退したと発表した。
ウクライナのハンナ・マリャル国防次官は5日(現地時間)、ソーシャルメディアのテレグラムに掲載した文で、自国軍が東部戦線から攻勢に転じたと明らかにした。また「(攻勢の)焦点はバフムト地区」とし、「バフムトの北側に位置する二つの村での戦闘で進撃に成功し、いくつかの高地も掌握した」と主張した。ただし、大規模な反撃に出たというロシアの主張と一部海外メディアの推測については否定的な立場を示した。バフムト占領のための先鋒隊の役割を果たしてきたロシア傭兵集団のワグネル・グループの設立者エフゲニー・プリゴジン氏も、ウクライナ軍がバフムト北西部のベルキフカの一部を奪還したと認めた。
バフムトはウクライナ軍が統制しているハルキウ州とロシア軍が掌握したドネツク州の南部およびルハンスク州を繋ぐ橋頭堡の役割を果たす地域。ロシア軍とワグネル・グループは約10カ月にわたる封鎖攻撃の末、先月20日、同地域を完全に占領したと宣言した。
ロシア国防省は前日に続き、5日にもドネツク州南部で大規模な攻撃に乗り出したウクライナ軍を撃退したと主張した。同省はドイツ製のレオパルト戦車8台を含む戦車28台と装甲車109台を破壊し、2日間でウクライナ軍の戦死者が1500人に達したと発表した。同省は前日もウクライナ軍が同地域で大規模な軍事作戦に乗り出したが、自国軍が撃退したと明らかにした。しかし、ウクライナ側はこの主張を「フェイクニュース」だと一蹴した。
ロイター通信は、ロシア国防部が前日公開した映像を検討した結果、2本の映像に現れた地形がザポリージャ州と隣接したドネツク州南西部のベリカノボシルカ地域と一致することを確認したと報じた。英紙フィナンシャル・タイムズもベリカノボシルカ、ノボドネツケなど南西部の4地域を主要交戦地域に挙げた。同地域はこれまで比較的戦闘が少なかった。
ウクライナが攻勢を強化していると分析される地域は、ドネツク州南部最大の都市であるマリウポリから100キロメートルほど離れている。マリウポリは、ロシア軍がウクライナに侵攻した昨年2月末から5月まで莫大な被害にもかかわらず包囲攻撃を続け占領した都市。
AP通信の報道によると、ロシア側ではウクライナ軍が同地域で軍事作戦に入ったのは、黒海の内海に当たるアゾフ海まで進出し、ザポリージャ、ヘルソン、クリミア半島とドネツク州をつなぐルートを遮断するためだという分析もあるという。ザポリージャ州のロシア地方政府関係者のウラジーミル・ロゴフ氏は、「ザポリージャ州とドネツク州の境界付近地域で、同日戦闘がまた起きた」とし、「敵軍の攻撃規模が昨日(4日)より大きかった」と述べた。氏はウクライナ軍がアゾフ海沿岸まで進出し、黒海沿岸南部地域と東部ドンバス(ドネツク州とルハンスク州)間の補給通路を遮断しようとしていると分析した。
ロシア国防総省がドネツク州南部で2日連続でウクライナ軍を撃退したと発表したことに対し、ロシアの軍事専門ブロガーたちは疑問を示していると、英紙ガーディアンが報じた。ロシア情報機関出身の予備役軍人イゴール・ギルキン氏は、テレグラムに掲載した文で「(国防総省の発表とは異なり)一部地域で敵軍の進撃が続いているという報告がある」としながらも、戦線は突破されていないと主張した。また、ウクライナ軍がこの地域にまだ主力軍を投入していないという見解を示した。ジャーナリストで軍事専門ブロガーのセミョン・ペゴフ氏は、ノボドネツケ地域でウクライナ軍がロシア軍の防衛を突破して2キロメートルほど進出したとし、ウクライナ軍が西側の供与した装甲車を活用し攻撃を続けていると主張した。
ワシントン・ポスト紙は、米政府当局者の話として、ウクライナの反撃はすでに始まっているが、大規模兵力を動員して敵軍の防御戦線を突破するのではなく、集中砲撃、破壊工作、後方のゲリラ攻撃などの形で展開されるだろうと見通した。