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「人口の崖」が特に深刻な東アジア諸国、なぜ?(1)

登録:2023-02-22 03:30 修正:2023-02-22 10:41
「少子化危機」世界ワースト10に6カ国が集中 
強固な「儒教文化」作用が共通点
今月7日の香港の地下鉄の車内。通勤する人々がスマートフォンを見ている/AP・聯合ニュース

 「急速に進展する少子化により、我が国は社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況に置かれています」

 日本の岸田文雄首相は先月23日、日本の通常国会の開会を告げる衆議院本会議の施政方針演説で、出生率の低下によって大きな社会的危機に陥った日本社会の現実を指摘した。首相はこの危機に立ち向かうために子育て政策は「待ったなしの先送りの許されない課題」だとし、「年齢・性別を問わず、みなが参加する、従来とは次元の異なる少子化対策を実現したい」と語った。

 翌日、米国「CNN」はこのような現実を伝えつつ、少子化問題は日本だけでなく中国や韓国を含めた東アジア全体を貫く主要な懸念事項だと指摘した。1961年の大躍進運動の失敗で一時的に人口が減った後、61年ぶりに減少へと転じた中国、世界最低水準の出生率を記録している韓国なども同じ状況だということだ。

 実際に、国連経済社会局が昨年7月に発表した「国連世界人口推計2022年」を見ると、東アジアの少子化危機が特に深刻であることが分かる。世界238カ国の合計特殊出生率(2021年)を低い順に列挙すると、世界ワースト10以内に香港(1位、0.75人)、韓国(2位、0.88人)、シンガポール(5位、1.02人)、マカオ(6位、1.09人)、台湾(7位、1.11人)、中国(10位、1.16人)の6カ国が入っている。「合計特殊出生率」(15~49歳の女性1人が産むと期待される子どもの数)の世界平均は2.3人だが、東アジア主要国は1人を超えるのが容易ではない。岸田首相が国の存続を懸念する日本は、これらの国よりはまだましな1.3人(19位)。ワースト20以内の国は東アジアの7カ国、欧州の3カ国(ウクライナ、イタリア、スペイン)を除くと、大半が小さな島しょ国だ。全世界が産業化されるにつれ共通して少子化現象に直面してきたが、東アジア諸国は特に深刻ということだ。なぜだろうか。

孔子が死んでこそ国が生きる

 台湾の英字新聞「台北タイムズ」は16日、台湾を含む東アジア諸国の出生率が低いのは、養育費や住宅価格の高さなどの経済的な要因だけでなく、この地域の強固な「儒教文化」が作用しているからだと指摘した。この文化圏では、子育てと家事を特定の性別に押し付けた結果、女性のキャリア断絶現象が発生し、それに伴い出産を忌避するという現実が現れているというのだ。

 国際的な人口専門ジャーナルも、少子化危機に見舞われている東アジア諸国が共通して「儒教文化圏(Confucianism)」に属していることに注目している。この地域において儒教は宗教であり、国家の統治理念であり、2000年以上も社会全体に倫理原則を提供してきた。学者たちは、そのためこの地域には性に関する道徳的厳格主義▽厳格な性役割の区分により、一方の性に集中する子育ての負担▽社会的成功を重視する立身出世文化▽科挙制の伝統にもとづく学歴主義▽暮らしの満足度より勤勉誠実を強調する社会の雰囲気など、出生率が低下せざるを得ない「固有の特徴」があると指摘する。

 台湾国立中央研究院の人口統計学者の鄭雁馨博士は、「東アジアの超少子化現象:儒教とその不満」(2020)と題する論文で、東アジア社会の独特な家族形成パターンと少子化の関連性を説明した。同氏は婚外出産をタブー視する儒教の家族制度を、他の文化圏と区別される最も大きな特徴としてあげた。同氏は昨年6月のオーストラリアABCのインタビューでも「東アジアには婚外出産という概念がない。結婚しなければ出産もない」とし「未婚や非婚での出産をタブー視するこれらの国々の儒教的理念は非常に強力な合意を形成しており、全世代にわたって依然として存在する」と述べた。東アジア全域では経済発展によって、ここ数十年間は男女共に平均結婚年齢が上昇している。結局、結婚しなければ子どもは産めないが結婚が遅くなっているために少子化が普遍化したということだ。

 同氏はさらに学歴主義(credentialism)を、少子化を招いた社会の主な特徴だと指摘した。科挙制度の伝統によって、儒教文化圏では多くの人々が試験準備と資格確保のために若い時期を過ごす傾向がある。学問的成就と立身出世を最も重要な人生の目標と教えているため、多くの人々が人気の高い少数の職場や職位を得るために若い時期に激しい競争に苦しめられることになる。そのため、結婚と出産というライフサイクルの課題は後回しにされてしまった、というのが鄭博士の見解だ。(2に続く)

キム・ミヒャン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1080512.html韓国語原文入力:2023-02-21 05:00
訳D.K

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