「TSMCの建設現場ですよね?どうぞお乗りください」
8日、東京から飛行機で2時間ほど飛んで到着した九州の熊本空港。タクシーの運転手は慣れた様子で車を運転し始めた。「あちこちからたくさん訪ねてきて、道はよく知っています」。15分ほど走ると、キャベツ畑の間に大規模な工事現場が姿を現した。約2メートルの高さの安全鋼板に囲まれた現場では、数十台のクレーンや掘削機、大型トラックなどが慌ただしく動いていた。
ここが世界最大のファウンドリ(半導体委託生産)メーカー、台湾のTSMCが日本に初めて建設中の半導体工場だ。敷地全体は約21万平方メートル、東京ドーム4.5個分の大きさだ。事業費1兆1000億円のうち、日本政府が約40%の4760億円を補助する。日本ではこれまで見られなかった外国企業に対する破格の支援だ。半導体を作る施設であるファブ(Fab)とオフィスの建物が形を整えていく姿を確認することができた。昨年春に始まった工事は、今年12月に完工し、1年後の来年12月に半導体の初出荷を目指している。
この現場はTSMCと日本のソニー、自動車部品メーカーのデンソーが出資した子会社「JASM」が建設と運営を担当している。向かい側の徒歩5分の距離のところにはソニーの半導体専門企業「ソニーセミコンダクタソリューションズ」の工場がある。さらに10分ほど行くと、世界的な半導体装備メーカー「東京エレクトロン九州」の工場がある。TSMC工場が完成すれば、ここ一帯が日本の半導体産業の「新しいメッカ」に生まれ変わりそうな予感がした。
1980年代半ばから1990年代初めまで世界半導体市場の「絶対王者」だった日本は、30年間の低迷を払しょくする巨大な復活を夢見ている。「産業のコメ」と呼ばれる半導体市場は、2030年の世界売上高が現在より2倍(約120兆円)増えると予想される未来の核心産業だ。日本政府は半導体産業を国家戦略産業に位置付け、日本国内で半導体生産が行われるよう大規模な支援に乗り出している。米中対立から始まった半導体産業におけるサプライチェーンの再編や技術競争など、市場全体を揺るがす大混乱を巨大な跳躍の機会とみて、積極的に対応しているのだ。日本が半導体大国の台湾や米国と手を組んで追撃に乗り出し、韓国を圧迫している形だ。
半導体復活のための日本の挑戦を象徴するのがまさに熊本のTSMC半導体工場だ。ここでは12~28ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)の非メモリー半導体を月5万5000枚(300ミリウェハー換算)生産する計画だ。10ナノ未満の最先端半導体ではないが、日本国内の需要を満たす半導体の国内生産が可能となる。これまではルネサスエレクトロニクスが作る40ナノが日本で作られる最も性能の良い半導体だった。
熊本も盛り上がっている。地方経済総合研究所の主任研究員の漆嶋秀郎氏は「2016年4月の熊本大震災以降、地域ではこれを回復するための努力が続いていた。今回の工場誘致は地域復活を知らせる信号弾」だと話した。当然、雇用創出など経済効果に対する期待感も高まっている。同氏は「熊本県の総生産は6兆円程度だが、TSMC工場の投資費は1兆円を越える」とし、「県内の半導体関連会社は100社以上。この工場が県にもたらす経済的波及効果が10年間で4兆3000億円という推計もある」と説明した。
関連の雇用も大幅に増える見込みだ。新工場には台湾のTSMCから派遣される技術者約320人、ソニーグループから200人、新規・経歴採用が700人など、1700人余りが働くことになる。関連業界まで合わせて県内に7500人以上の雇用が新しく生まれるという見通しもある。優秀な人材を確保することが主な課題として浮上している。
熊本大学はこのために、昨年4月に「半導体研究教育センター」を設立した。来年は半導体製造と工程管理などを教える学部も新たに開設する。同大学に45年ぶりにできる新学部だ。熊本大学先端科学研究部付属半導体研究教育センターの青柳昌宏センター長は「TSMC工場の誘致は半導体分野の優秀な人材を育てる良い機会」だとし、「世界最高の企業で働きながら最新の知識と技術を学ぶことができる」と強調した。1980年代、世界の半導体生産の10%を占め、「シリコンアイランド」と呼ばれた九州全体も浮き立っている。ソニーや京セラ、三菱電機、東京エレクトロン、大陽日酸など他の半導体関連企業も設備を増やし、工場の拡張を準備している。材料・部品・装備など関連業者が多い半導体産業の力だ。TSMCは日本で2番目の工場建設も検討している。
日本政府はスーパーコンピューターや人工知能(AI)などに使われる最先端半導体にも挑戦状を突きつけた。トヨタやNTTなど日本を代表する主要大企業8社が提携し、昨年11月に半導体量産会社「ラピダス」(ラテン語で速いという意味)を設立した。企業が70億円を出資し、日本政府が700億円以上を支援する。米国のIT大手のIBMは、ラピダスとともに2ナノに象徴される最先端半導体の共同研究だけでなく、技術者の育成や販売先の開拓などにも協力することにした。ラピダスは2025年の2ナノのテスト生産に続き、2027年頃に本格的な量産を計画している。青柳センター長は「日本国内の半導体生産体制が弱くなると、現在好調な材料・部品・装置分野の競争力も保てなくなる。失われた半導体産業の復活のために政府の持続的な支援が重要だ」と強調した。