日本の岸田文雄首相が、急死した安倍晋三元首相の最側近である萩生田光一前経済産業相を自民党の要職の政調会長に、安倍派には属さないが安倍首相と近かった高市早苗政調会長は経済安保担当相に起用した。岸田首相は内閣改造前に「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」との関係を人事の基準にすると明らかにし、安倍派をはじめ自民党内の派閥への影響が注目されたが、今回の人事では派閥配分を通じて政権内の安定を選んだ。
岸田首相は10日、このような内容などで内閣改造と自民党幹部人事を断行した。岸田首相は同日午後開かれた記者会見で、「国の内外で歴史を画するような課題が生じている。骨格を維持しながら有事に対応できる『政策断行内閣』として、山積する課題に対し、経験と実力を兼ね備えた閣僚を起用することとした」と述べた。
萩生田前経産相が自民党の政策を総括する政調会長に選ばれたのは、安倍派に配慮した人事とみられる。安倍派からは「党4役を確保したのは成果だ」「安倍さんの政策を進めるため政調会長をとることができたのは万々歳」だとして、歓迎の声が上がっているという。安倍派は安倍元首相という求心点を失ったうえに、最近所属議員が旧統一教会と関係があった事実が明らかになり窮地に立たされていた。
安倍元首相が担ってきた党内保守派の意見調整の役割を、萩生田政調会長に任せるという岸田首相の意図も読み取れる。朝日新聞は「安倍元首相が派閥のリーダー候補の一人に挙げていた萩生田氏は(岸田)首相との関係も良好だ。保守派のパイプの役割が期待できる」と報じた。下半期に本格的な議論を控えた防衛費を国内総生産(GDP)の2%以上に引き上げる問題と関連し、財源調達をめぐって穏健派の岸田派とタカ派の安倍派の隔たりが大きい。
今回の人事では、19人の閣僚のうち14人が交代した。閣僚を派閥に分類すると、「安倍派」(97人)が松野博一官房長官(留任)や西村康稔経済産業相(入閣)など4人で、「麻生派」(50人)と並んで最も多い。安倍派ではないが、安倍元首相の側近に分類される高市早苗経済安全保障担当相まで考慮すれば、安倍元首相の影響力は依然として健在なわけだ。高市経済安保相は、中国を牽制し、半導体サプライチェーンの強化などの政策をリードすることになる。茂木派(54人)と岸田派(43人)の各3人、二階派(43人)の2人などが内閣に合流した。
今年政策の大転換を予告している外交・安全保障分野では林芳正外相が留任し、新防衛相には浜田靖一(無派閥)衆議院議員が起用された。浜田防衛相は麻生内閣時代の2008~2009年に防衛相を務め、防衛庁副長官、衆議院安全保障委員長などを務めた12選の安保分野の専門家だ。前回の自民党総裁選挙の際、二階派が押した野田聖子議員を支持したという。安倍元首相の実弟の岸信夫前防衛相は、国家安全保障を担当する首相補佐官に起用された。
旧統一教会との関係が浮上した末松信介文部科学相ら7人は交代された。しかし、旧統一教会の行事で挨拶をしたと明らかにした萩生田政調会長は、自民党の要職に席を移動し、岸前防衛相も首相補佐官に起用されるなど、影響がどれほど大きくなるかは不透明だ。
岸田内閣の新たな陣容が整い、変化を模索している韓日関係にどのような影響を与えるかにも関心が集まっている。自民党内の保守派の意見調整を担当する萩生田政調会長は、韓国に対して強硬な立場を持つ極右性向の人物であるため、強制動員被害者など韓日間の核心争点で譲歩を引き出すのは容易ではないとみられる。萩生田政調会長は韓国に対する輸出規制が正当だと何度も主張し、2014年には「新たな談話を出すことで、『(河野)談話』は結果的に骨抜きになる」と発言した人物だ。太平洋戦争A級戦犯が合祀された靖国神社も毎年参拝している。岸田首相も安定した国政運営に重点を置いただけに、党内保守派を刺激する可能性が高い韓日関係で身動きの幅は大きくはないものとみられる。