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米国、ウクライナに対艦ミサイル支援を推進…西側諸国とロシアの「黒海衝突」の恐れも

登録:2022-05-21 00:56 修正:2022-05-21 07:40
米国、ロシアに黒海港封鎖の解除を求め 
ウクライナに先端対艦ミサイルの提供を検討 
ロシアは制裁の解除を要求…戦域が黒海に広がる可能性も
ウクライナのミサイル攻撃を受け、ロシア海軍黒海艦隊の旗艦「モスクワ」が4月中旬に沈没した。米国は食糧危機を引き起こすロシアの黒海港に対する封鎖を解くため、ウクライナに対するミサイル提供を検討している/ロイター・聯合ニュース

 米国が主要な穀物輸出港であるウクライナ黒海沿岸港を封鎖しているロシアに圧力をかけるため、対艦ミサイル「ハープーン」などの提供を検討しているという。黒海をめぐる西側諸国とロシア間の「制海権争い」が本格化すれば、最悪の場合、両者間の直接衝突が発生する可能性もある。

 ロイター通信は19日、米政府当局者の話として、ウクライナが黒海に対するロシアの海上封鎖を撃退するのに役立てるよう、先端の対艦ミサイルを提供しようと検討していると報じた。先端対艦ミサイルは、米国がこれまでウクライナに提供した兵器の中で最も破壊力の高い兵器だ。

 米国がこのような動きに乗り出した最大の理由は、ウクライナ戦争で本格化した世界的な食糧危機のためだ。世界的な穀倉地帯に挙げられるウクライナは、2020~21年の輸出時期に4150万トンの小麦とトウモロコシを全世界に供給した。このうち95%がオデーサ港など黒海沿岸港を通じて輸出された。ここを出発した穀物は、トルコのボスポラス海峡、ダーダネルス海峡を通って地中海に出た後、スエズ運河などを経てアフリカやアジアなど全世界に供給される。

 だが、戦争以後ロシアがオデーサなどウクライナの黒海沿岸の主要港を封鎖したことで、穀物輸出が事実上止まった状態だ。ウクライナもロシア軍の上陸を防ぐため、主要港周辺に機雷を設置した。

 国際社会はロシアに穀物輸出を妨げる港封鎖を解除するよう求めてきた。主要7カ国(G7)外相は14日、ベルリンで会談した後に発表した共同声明で、ロシアに「ウクライナの穀物輸出に使われる港などへの攻撃を直ちに中止するよう」要求した。ドイツのアンナレーナ・ベアボック外相は、2500万トンの穀物がオデーサなどウクライナの黒海港に積まれているとし、これらの穀物はアフリカや中東諸国が切実に必要とする食糧だと指摘した。アントニオ・グテーレス国連事務総長も18日、ニューヨークで開かれた世界食糧安全保障会議で、ウクライナ戦争は「数千万人の人々を食糧不安に追い込んでいる」とし、ロシアにウクライナの穀物輸出を許可するよう求めた。

 一方ロシアは、食糧危機は自分たちだけの責任ではないとし、西欧諸国が先に制裁を解除すべきだと主張している。ロシアのアンドレイ・ルデンコ外務次官は19日、「ロシア連邦に訴えるだけではなく、現在の食糧危機を引き起こした複雑な全体の理由を深く考えなければならない」とし、「米国と欧州連合(EU)がロシアに加えた制裁が、小麦や肥料などを含む正常かつ自由な貿易を妨害している」と指摘した。主要な穀物輸出港封鎖の解除を求める西側諸国の要求を、事実上拒否したということだ。黒海制海権は、帝国主義時代にクリミア戦争(1853~1856)などを通じて西欧とロシアがたびたび激突した事案だ。

 双方の意見の相違が容易に解決する兆しがみえない中、米国ではロシア軍の海上封鎖を強制的に解除できるよう、ウクライナ軍を武装させるべきだという声が高まっている。ロイター通信は同日、米政府と議会の消息筋5人の話を引用して「米国はボーイングの『ハープーン』ミサイルとノルウェーのコンスベルグ社が開発した対艦巡航ミサイル『ネイバル・ストライク(NSM)』をウクライナに提供する案を積極的に検討している」と報じた。米国は、これらのミサイルをウクライナに直接伝達するか、欧州の同盟国を通じて渡す案を考慮している。米国は「ハープーン」ミサイル発射台を保有していないウクライナのために、自国の戦艦に設置された発射台を撤去して提供する案も検討している。

 射程距離が最大300キロメートルに達する「ハープーン」ミサイルは、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が4月にポルトガルに提供を要請した兵器だ。議会のある消息筋は、NSMを提供する国に浮上したのはノルウェーだと同通信に明かした。ハープーンとNSMは1発当たり150万ドルに達する。

 米国政府は最近、155ミリM777曲射砲をウクライナに提供することを決めた。この曲射砲は艦艇に搭載できる。米国はまた、ウクライナが要求するM270などの多連装ロケット発射(MLRS)システムの提供も考慮している。米議会は19日、ウクライナに対する400億ドルの追加支援案を可決し、近いうちにM270も提供される見通しだ。

 米国の兵器支援が行われれば、黒海沿岸で作戦中のロシア海軍は大きな脅威を感じざるを得ない。英国防省は現在、ロシアは潜水艦を含め20隻の艦艇を黒海沿岸に配置していると述べた。

 ハドソン研究所のブライアン・クラーク先任研究員は、射程が100キロメートル以上のハープーンミサイルのような対艦ミサイル12~24発程度があれば、ロシア海軍に脅威を与えるのに十分であり、海岸封鎖を解除するよう強制できると指摘した。ロシアは4月14日、黒海艦隊の旗艦「モスクワ」がウクライナの攻撃で撃沈される被害を受けた。

 しかし、黒海制海権は互いに死活的な利害がかかっている問題であるため、ウクライナが西欧の支援を追い風に本格的な圧力をかけ始めた場合、ロシアも積極的に対応せざるを得ない。この過程で西側諸国とロシアが海上で直接衝突する可能性もある。

チョン・ウィギル先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1043690.html韓国語原文入力:2022-05-2016:23
訳H.J

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