ウクライナ軍が激しい戦力の劣勢を克服してロシア軍に対抗するうえで、「民間の偵察衛星」が大きな役割を果たしているとの評価が出ている。地理情報の把握と画像制作など商業的な目的を持つ民間の衛星が、今回の戦争を通じて軍事的効用を発揮しているのだ。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは1日、商業用の偵察衛星数百基が地球軌道を回っている中で勃発した今回の戦争で、衛星で収集した情報が米国やその同盟国を通じてウクライナに提供されていると報じた。一部企業はウクライナに直接情報を提供している。
民間の偵察衛星の活躍は、今回の戦争前から予告されていた。ロシアは戦争が差し迫っていた今年2月、兵力を撤退させると主張したにもかかわらず、装備を残し、戦車を移動させる橋を建設している場面が衛星写真で公開され、欺瞞戦術が効果を発揮できなかった。
民間の衛星は軍事用偵察衛星に比べ、画像解像度など性能は落ちる。しかし、多基の衛星が収集した情報を総合すれば、ロシア軍の移動状況などを詳しく把握できる。民間の衛星も曇りや夜間でも観測が可能なほどの性能を持っており、電子シグナルをとらえられるものもある。ウォール・ストリート・ジャーナルは、米国の安保関係者らの話として、民間の衛星がロシア軍を追跡し隠蔽能力を低下させることで、戦争の様相を変えていると報道した。民間の衛星は避難民の移動把握と集団埋葬地の発見にも役立つ。マスコミに提供された衛星写真を通じて人々が破壊の様子を見ることで、「心理戦」にも貢献している。
米国防総省と契約した宇宙企業プラネット・ラボの最高経営責任者(CEO)ウィル・マーシャル氏は、衛星200基が毎日とらえるウクライナの地上状況をまとめて提供していると述べた。宇宙技術会社MDAのCEOマイク・グリーンリー氏は、「ウクライナは雲が多く、夜間作戦も観察しなければならないため、(偵察が)困難なところだ」としながらも、自社の衛星は木の下に隠れた戦車も識別できると述べた。彼は地上状況を15分以内に画像で見ることもできると説明した。ブラックスカイ・テクノロジーのCEOブライアン・オトゥール氏は、ウクライナをより詳しく観察するため、先月2日に打ち上げられた衛星の軌道を変えたと明らかにした。
米国では1999年、衛星の国家独占時代が終わり、民間の衛星が活性化した。米政府は従来の軍事用衛星の隙間を埋めるため、経済性に優れた民間の衛星に頼ってきたきた。
一部の企業はロシアのサイバー攻撃など報復の可能性のため、ウクライナ戦争に関与した事実を公表していない。しかし、アルゼンチンの企業サテロジックはウクライナ政府に情報を直接提供し、赤十字や「国境なき医師会」には無料で提供すると発表した。同社は「大義のためならばログイン情報と認証書を送る」と明らかにした。ウクライナ政府が民間の衛星会社に直接要請し、ウクライナ地域をより多く偵察するよう募金運動をする団体もある。
プラネット・ラボのCEOマーシャル氏は、今や大規模な軍事活動は皆が知ることになるとし、「我々はこのような技術のため、より透明で、責任を伴う時代に向かっている」と同紙に語った。