「原発の新増設について自民党は認めているということでよいか」(記者)
「電力の安定供給、価格を考えた場合に再エネ一本足打法では応えられない」、「まずやるべきは原発の再稼働」(岸田文雄首相)
18日、東京都千代田区内幸町の日本記者クラブ。31日の衆院選を控え、午前10時に始まった各政党代表による討論会(党首討論)の席で最重要論点に浮上したのは、脱炭素と脱原発という「2つの難題」を前にした日本のエネルギー政策だった。日本は韓国と同様、2050年までに「炭素中立(カーボンニュートラル)」を実現する計画だが、2011年3月に福島第一原発事故という悪夢を経験しているため、「脱原発」を求める国民世論は非常に強い。かつての民主党政権はこれを受け入れ、新たな原発は建設せず、老朽化した原発は徐々に廃棄し、「2030年代には脱原発を完成させる」との案を確定した。しかし、その後に登場した安倍晋三元首相は2014年、「原発の割合を20~22%に保つ」との内容を含む「エネルギー基本計画」を確定し、「脱原発」という社会的合意を一方的に廃棄してしまう。岸田首相も「新しい原発を建設するのか」との質問には即答を避け、「(止まっている原発をひとまず)再稼働すべきだ」という従来の立場を繰り返した。
脱原発と脱炭素という「二兎」を得ることは日本のみの苦悩ではない。コロナ禍からまさに抜け出そうとする世界経済を「エネルギー危機」が直撃し、今は世界各国がこの難題に対するそれぞれの答えを探っているところだ。世界的には、雨が降ろうが雪が降ろうが電力の一定部分をまかなう「ベースロード電源」となりうる原発を一定程度維持すべきだとする現実論が大勢だが、脱原発もまた避けて通れない道であるため、各国の苦悩は深まりつつある。
こうした中、このところ大きな関心を集めているのがフランスと英国の動きだ。電力全体の70%を原発で生産する「原発大国」フランスは2014年6月に、原発の割合を2025年までに50%に引き下げることを決めていた。しかし、エマニュエル・マクロン大統領の就任後の2017年11月、目標年度は2035年に延期された。フランスは12日、さらに一歩進んで300億ユーロ(約4兆円)規模の産業再活性化計画「フランス2030」に、小型原子炉開発に対する10億ユーロ(約1330億円)の投資計画を含めた。英国「フィナンシャル・タイムズ」も16日、2050年のカーボンニュートラル達成に向けた英国政府の「ネットゼロ(Net 0)戦略」の中心に原発が据えられることになるだろうとの見通しを示した。英国の老朽原発は2035年ごろにほぼ寿命を迎えるため、原発の割合を高めるためには新たに原発を建設するしかない。
主要国がこのような動きを見せているのは、再生可能エネルギーの不安定さが大きな理由となっている。代表的な例はスペインだ。スペインは、2000年には電力生産の36%を占めていた石炭の割合を2019年に5%にまで減らし、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの割合(原発の割合は21%)を大幅に高めた。しかし今年の夏以降、風が大幅に弱まったことで風力発電量が20%も減少した。その影響などにより、15日のスペインとポルトガルの電力1メガワットアワー当たりの卸売価格は、1年前の実に6倍に当たる230ユーロ(約3万円)にまで上昇した。
韓国は脱原発と脱炭素という「二兎」を同時に追う計画だ。過激に見えるが、実態を見れば新古里(シンゴリ)5、6号機を最後に新規原発は建設せず、約60年にわたって原発の割合を徐々に下げ、脱原発を実現しようという穏健な案と評価できる。国際エネルギー機関のファティ・ビロル事務総長は最近のメディアインタビューで、2050年のカーボンニュートラルという「目標達成」のためには、原発の割合が2050年ごろには3倍ほどに高まっていなければならないだろうという見解を明らかにしている。「長期的な脱原発」という韓国政府の計画と大きくぶつかり合ってはいない。