韓国政府が2050年にカーボンニュートラル(炭素中立)に向かう重要な分かれ道となる2030年の国別温室効果ガス削減目標(NDC)を、2018年の排出量(7億2700万トン)に比べて40%削減することにした。これは従来の「対2018年排出量比26.3%削減」案より目標値を13.7ポイント引き上げたものだ。文在寅(ムン・ジェイン)政権が昨年、2050年までのカーボンニュートラルを宣言した後も進展した2030年の削減目標を示しておらず、環境団体など市民社会や国際社会からもっと進展した削減案を求められてきた。11月の国連総会で予定された削減目標の公開を控え、政府としては要求に応える上方修正案を出したということだ。
大統領所属の「2050カーボンニュートラル委員会」や環境部、産業通商資源部などは8日、新たな2030NDCを発表し「2018年基準年度から2030年までの年平均削減率(4.17%)を考慮すると、非常に挑戦的な目標」だと評した。英国や米国などの主要国よりも炭素削減を遅く始めた韓国は、急激に削減経路をたどるほかないということだ。上方修正された削減目標に到達するためには、2030年までに韓国の温室効果ガス排出量を以前の目標値より約1億トン少ない4億3600万トンに削減しなければならない。過去最多の排出量である2018年の7億2700万トンを基準にすると、3億トン近く削減しなければならない。2018年から2019年にかけて削減した排出量が2500万トンであることを考えると、決して容易に達成できる数値ではない。
具体的に見ると、最も排出量の多いエネルギー転換と産業部門が、それぞれ4280万トンと2120万トンずつ既存の目標より削減量を増やした。履行が不確実な国外削減部門も既存の目標の1620万トンを3510万トンへと1890万トン増やした。産業とエネルギー転換・国外削減部門が全体1億トンのうち8200万トンを占める。
しかし、既存の目標に比べて、エネルギー転換部門は22%の追加削減目標を設定したが、産業部門は8%の追加削減にとどまった。業界ではNDCの上方修正は行き過ぎだという反発の声もあがっており、政府が業界の要求に少なからず配慮したとみられるとの評価が出ている。
この日、同委員会が発表した案は、先月国会で制定された「気候危機対応のためのカーボンニュートラル・グリーン成長基本法」(カーボンニュートラル基本法)が定めた2030年のNDC下限線である35%より高いが、気候活動家が主張した50%削減案よりは低い目標だ。気候活動家らは、50%削減は地球の平均温度が産業化前より1.5度以上上昇するのを防ぐためのマジノ線だと主張してきた。
文在寅政権は昨年末、朴槿恵(パク・クネ)政権が立てた2030NDC目標を数値の表現方式だけ変えて実質的な改善なしに国連に提出したが、目標が低すぎるという理由で、事実上突き返された。特に今年に入って米国のジョー・バイデン大統領をはじめとする国際的に強力な気候危機への対応を求める声が高まり、韓国政府は「年内にNDCを引き上げる」と何回も約束した。
カーボンニュートラル委員会は18日の全体会議でこの案を審議・議決した後、今月最後の週の国務会議議決を経て韓国政府案として最終確定する。