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韓国にも「原子力潜水艦開発」への道開かれるか…米英、豪と原潜で協力(2)

登録:2021-09-23 05:03 修正:2021-09-23 10:21
フランスのエマニュエル・マクロン大統領(左から2番目)とオーストラリアのマルコム・ターンブル首相(中央)が、2018年5月2日にシドニーのガーデンアイランドでオーストラリア海軍のコリンズ級潜水艦「HMASウォ―ラー」の船体の上に立っている。オーストラリアは15日(現地時間)の米英豪3カ国間の安全保障協力機関「AUKUS」の発足に伴い、米国の技術支援を受けて原潜の開発を開始し、フランスと進めてきた660億ドル(約77兆ウォン)規模の従来型潜水艦建造計画を撤回すると予想される/AFP・聯合ニュース資料写真

(1からの続き)

米国、韓国にも豪と同じ基準を適用するか

 しかし、軍当局が原潜の開発を開始するには、まず米国の強力な牽制、反対、規制を乗り越えなければならない。何よりも米国の了解がない限り、原潜の原子炉の原料である濃縮ウランは入手できない。

 2015年に改正された韓米原子力協定の第11条は、韓国に「20%未満のウラン濃縮」を認めているが、それを可能にするためには韓米間の書面による合意が前提になる。米国が同意しなければ、原潜の原子炉の燃料として使用するためにウランを濃縮する方法がない。

 一部からは、韓米原子力協定は国内の民需用原発での利用のためのものであるため、軍事用に対しては拘束力がないという見解も提示されている。しかし、同協定が第13条で、核物質は「いかなる軍事的目的のためにも利用されない」と明示していることを考えると、軍事用に対しては拘束力がないという解釈にどれだけ説得力があるかは疑問だ。

 原潜の原子炉に使う濃縮ウランを国際市場で商業的に購入するという方法も残っている。国内で稼動中の原子力発電所に使われる濃縮ウランも、すべて国際市場で購入したものだ。しかし、国際市場の商業的取り引きも米国の了解がなければならない。原子力供給国グループ(NSG)のどの加盟国も、米国と摩擦を引き起こしてまで濃縮ウランを韓国に渡そうとはしないはずだからだ。軍事用の濃縮ウランの購入を、民需用のように米国に大目に見てもらうことを期待するのは難しい。

 実際に米国は、韓国の原潜開発に否定的な態度を示してきたという。昨年9月にキム・ヒョンジョン第2次長が米国を訪問して原潜の建造計画を説明し、核燃料の導入を打診したが、米国から断られたという報道もある。当時、大統領府はこの報道について「外交・安保事案について確認することは認められない」とし、肯定も否定もしていない。

 その米国が今回、英国とオーストラリアの3カ国が参加する研究チームを編成し、18カ月間にわたってオーストラリアの原潜開発の最適の方策を探るための共同研究を進めることを決めたのは、劇的な態度の変化と読み取れる。実際に、1958年に英国に原潜の推進技術を提供して以来、米国が外国に原潜技術を渡したケースはない。米国が韓国の原潜開発にも過去とは異なり前向きな態度を示す可能性が高まったのではないかという観測も流れている。

 もちろん米国は、今回のオーストラリアの原潜開発に対する支援について「例外的」として、拡大解釈を警戒している。米国の高位当局者は、原潜の技術は「極度に敏感な」技術だとし「率直に言って、これは多くの面で我々の政策の例外に当たる」と釘を刺している。また、「これが今後、別の状況において着手されるとは予想しない。我々はたった一度のこととしてこれを行う」とし、今回のことをきっかけに他の国々が類似の期待を抱かないよう牽制した。

 この高位当局者は、オーストラリアには核兵器を開発する意向はなく、核不拡散の努力でも先頭に立っているとし、核不拡散に対する米国の意志に変化はないと強調した。韓国の原潜開発には、オーストラリアとは異なる基準を当てる余地を残したものと解釈できる。

 実際のところ、北東アジアの国際政治環境から見ると、米国にとっては韓国の原潜開発への技術支援どころか、黙認も容易ではない。韓国の原潜開発に目をつぶれば、韓国と競争関係にある日本の原潜開発も阻止できなくなる。ややもすれば「原潜ドミノ」が起こりうる。中国の反発もさらに激しくなり、北東アジアにおける軍事的緊張が高まる恐れがある。

原潜開発への道のりは遠い

 原潜の開発では、北朝鮮の方が韓国をリードしているとみられる。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長は、今年1月の第8回党大会で、「新しい原子力潜水艦の設計研究が終わり、最終審査段階にある」と公言している。

 韓国が米国の了解を得て、実際に独自の原子力潜水艦の開発を開始したとしても、越えなければならない山は少なくない。韓国は「張保皐-3」事業の3000トン級潜水艦を独自設計するなど、潜水艦設計能力を保有している。これは数十年間にわたってドイツの技術支援を受け、1200トン級潜水艦(張保皐-1事業)と1800トン級潜水艦(張保皐-2事業)を10隻あまり建造し、技術の蓄積を行ってきた結果だ。

 原潜の動力となる原子炉についても、基盤技術は確保しているとみられる。韓国には、1990年代末からロシアの技術支援を受けて海水淡水化用小型一体型原子炉「スマート原子炉」(熱出力330メガワット)と、これを5分の1規模に縮小した実証炉「スマート-P」(熱出力65メガワット)を開発した前例がある。これを基盤として開発すれば、数年以内に原潜用原子炉を確保できると軍当局は期待している。

 しかし、まだ韓国の技術水準では独自の原潜の建造は難しいとの反論もある。従来型の潜水艦に原子炉による動力機関を搭載したからといって、原子力潜水艦になるわけではないからだ。原子力潜水艦は、従来型潜水艦よりもはるかに深い場所を、より速く航行するため、このような条件に合わせて新たに設計しなければならない。そのため、従来型潜水艦の設計経験だけを信じて原潜の建造を進めれば、予期せぬ困難に直面するとの指摘だ。

 原潜の騒音問題を技術的な壁としてあげる専門家もいる。潜水艦の命は隠密性と静寂性だが、原潜は従来型の潜水艦より騒音が激しい。原潜先進国の米国も、長年の経験と技術を蓄積した末に、ようやく原潜の騒音低減技術を確保したという。米国などの技術支援がない限り、原潜初心者にとっては原子炉の冷却装置、減速装置などから出る騒音を減らす技術の確保は容易ではないとの指摘だ。

パク・ビョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1012228.html韓国語原文入力:2021-09-18 21:32
訳D.K

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