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「選挙に不服」も交渉術?トランプ大統領の計算された訴訟戦略

登録:2020-11-06 06:07 修正:2020-11-06 07:04
“不正”主張し、問題提起 
支持層の結束・退任後の保障などが狙い 
捜査中の各種容疑の“取引用”とみられる
ドナルド・トランプ米大統領が今月4日未明(現地時間)、ワシントンのホワイトハウスで記者会見を行っている=ワシントン/AP・聯合ニュース

 ドナルド・トランプ米大統領は2016年の大統領選挙に出馬した時から、結果に承服すると言ったことがない。彼は、選挙に違法や不正がない限り、自分が敗北するのは不可能だとし、敗北を認めること自体を避けてきた。これについては、トランプ特有の勝負師的気質に加え、支持層を結束して激動させようという計算が働いたというのが大方の分析だった。トランプ氏は2020年の大統領選挙を控えた今年7月から再び選挙結果への承服を拒否してきた。

 彼は当時、「FOXニュース」との会見で、「選挙で敗北したら平和的な政権移譲に協力するか」という質問に対し、「結果を見なければならない」と答えを避け、不服を示唆した。その後、郵便投票などを問題にして選挙不正があると主張し、さらには選挙日の延期まで主張した。

 9月23日の記者会見でも、郵便投票は詐欺だと繰り返し主張し、「正直、(政権)移譲はないだろう。これからも続くだろう」と述べた。彼は当時死亡したルース・ベイダー・ギンズバーグ最高裁判事の後任を直ちに任命する理由として、大統領選挙の結果をめぐる紛争を取り上げ、自分に不利な結果が出れば、法廷闘争を繰り広げることを予告した。今回の大統領選挙は激戦州で勝負が分かれ、各得票数も大きく変わらないだろうという予想の下、民主党に有利な郵便投票など期日前投票の結果に不服するため、あらかじめ“予防線”を張っておいたのだ。

 トランプ氏の「選挙不正」主張は退任後に備えた取引用ともみられる。彼は、大統領就任前後に犯したり、明るみになったさまざまな容疑で捜査を受けている。一部の容疑は令状が出たものの、現職大統領のため執行されていない状態だ。ニューヨーク州など州検察と連邦検察はトランプ氏とトランプ財団に対する脱税などの違法財務処理、女性への性暴力などを捜査している。ロシアの大統領選介入疑惑を捜査したロバート・モラー特別検察官も「トランプ氏が大統領でなければ直ちに起訴する」と述べた。

 トランプ氏としては、支持層とともに今回の開票結果に問題を提起することが、退任後の発言権と防御力を同時に高める方法だ。開票をめぐる紛争で妥協し、後で大きく譲歩する形を取れば、紛糾を鎮めてさらなる分裂を防ごうとするバイデン陣営もトランプ氏の妥協と譲歩を条件に彼の“退任後”を考慮せざるを得ない。相手を崖っぷちに追い込み、最後に妥協するのは、トランプ氏が自分の交渉術だと公言してきたものだ。

チョン・ウィギル先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/america/968804.html韓国語原文入力:2020-11-06 05:00
訳H.J

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