日本政府が福島第1原発敷地内のタンクに保管中である放射能汚染水の海洋放流を今月27日に決める可能性が高い中で、有力日刊紙の東京新聞が日本の代表的な環境惨事である“水俣病”を取り上げて時期尚早と主張した。
東京新聞は21日「放射能汚染水、安全対策は万全なのか」という社説で、日本政府が2011年の東日本大震災当時に爆発事故を起こした福島第1原発の放射能汚染水の海洋放出を断行する方針だとして懸念される問題点を指摘した。
社説は、汚染水を多核種除去設備(ALPS)で浄化しても、放射性物質であるトリチウム(三重水素)は除去できず、他の物質も依然として残っていると伝えた。日本政府が1次浄化したものの、汚染水の70~80%からセシウムやストロンチウムなど人体に致命的な放射性物質が基準値以上含まれていることに言及したのだ。
トリチウムを海水で薄め、濃度を法定基準以下にして放流する方案についても問題があると説明した。社説は、トリチウムについては他の一般の原発から出る排水にも含まれており、基準値以下の濃度にして海に放出することは国際的に認められているが、総量規制がないことが弱点だと強調した。新聞は「トリチウムの放射線は微弱だが、ゼロではない」とし、メルトダウン(炉心溶融)した原発からの処理水を長期にわたって海へ流し続けた場合の(環境)影響は未知数だ」と伝えた。炉心溶融とは、原子炉が入った圧力容器中の温度が急激に上昇し、中心部の核燃料棒が溶けて流れることを意味する。炉心溶融が起きれば放射性物質が大量に放出される。
さらに、水俣病を取り上げて論じた。同紙は「海水の希釈能力を過信し、有機水銀を含む化学工場の排水を海に流し続けた結果が水俣病ではなかったか」と指摘した。水俣病は、熊本県水俣市のある化学工場が放流し続けた排水のために、1956年に最初の人の発病が確認された水銀中毒性神経疾患だ。水俣湾で獲った魚や貝を食べた地域の住民たちが、魚介類に蓄積された水銀を間接的に摂取し、神経マヒ、言語障害、難聴などの症状を起こし、死亡者も続出した。
同紙は「漁業者の憂慮と、海を分かち合う他国の反応も気掛かりだ」とし「拙速は将来に深く禍根を残すことになる」と警告している。