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イラン戦争派兵はうまくいっても「無駄骨」、まかり間違えば「泥沼」

登録:2026-09-12 08:57 修正:2026-09-12 11:26
侵略戦争加担、大義名分失い実益もなし…「同盟」と「国民」のどちらか選ぶ時
2026年9月7日、紅海とインド洋を結ぶバブ・エル・マンデブ海峡を事実上掌握したイエメンのフーシ派が、サウジアラビアに支援される政府軍の施設周辺を弾道ミサイルで攻撃し、真っ黒な煙が立ち上っている/UPI・聯合ニュース

 大統領府が唐突に「イラン戦争への派兵」という火種をまいた。「まだ決まったことはない」という発言には、ある意図が隠されている。2026年9月8日、国防部は「アラブ首長国連邦(UAE)に中東情勢を点検するための現地調査団を派遣した」と明らかにした。イラン戦争勃発直後から、UAEは湾岸諸国の中でイランと最も鋭く対立している。調査団の判断はUAE側の主張に影響されざるを得ない。派兵の準備は着々と進んでいるが、「最終決定」を下したわけではないという。様子見しているのだろうか。たちが悪い。

■国連憲章に明記されている侵略戦争そのもの

 2026年2月28日、米国とイスラエルはイランに侵攻した。「差し迫ったイランの核の脅威を根絶する」というのが、掲げるに値するせめてもの大義名分だった。中央情報局(CIA)をはじめとする当の米国の情報機関は、「イランは2003年以降、核兵器開発の取り組みを中止している」という評価を何度も示している。国際法に則れば、米国とイスラエルの軍事行動は「違法な侵略」に当たる。しっかりと検討してみよう。

 国連憲章第2条4項は、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」と規定している。例外は2つある。1つ目、憲章第51条が規定する、自国を標的とした武力攻撃が発生した場合に限定される「個別的または集団的自衛の権利」によるもの。2つ目、国連安全保障理事会(安保理)決議によるもの。安保理は「安全保障理事会は、平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在を決定し、並びに、国際の平和及び安全を維持し又は回復するために、勧告をし、又は第41条及び第42条に従っていかなる措置をとるかを決定」(憲章第39条)できる。勧告と暫定措置(憲章第40条)、制裁と外交関係の断絶(憲章第41条)などが不十分な場合、安保理は「国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍又は陸軍の行動」(憲章第42条)を取ることができる。

 イランは、米国とイスラエルを標的とした武力攻撃をおこなってはいなかった。逆に米国とイスラエルは、2025年6月に12日間にわたりイランの核施設などを空爆している。米国とイスラエルによるイラン侵攻は「自衛権の行使」とはみなせない。国連安保理は2006年から2010年にかけて計6回、イランのウラン濃縮などの「過去の核」を問題視する制裁決議をあげている。しかし2015年7月にイランと米国、ロシア、中国、英国、フランス、ドイツ(P5+1)、欧州連合(EU)が、イランの核の凍結・制限を盛り込んだ「包括的共同作業計画(JCPOA、イラン核合意)」を妥結したことを受け、安保理は決議第2231号によって対イラン制裁を解除した。条件がついていた。イランが合意に違反した場合、安保理の評決なしにそれまでの制裁を自動的に復活させる「スナップバック」条項である。

2026年9月8日、米国のトランプ大統領がワシントンで開催された9・11同時テロ犠牲者追悼式典で演説している/UPI・聯合ニュース

■憲法に違反し、自ら手足を縛られるようなもの

 米国は第1次トランプ政権時代の2018年5月に、イラン核合意からの離脱を宣言した。イランは強く反発した。イランとEUは共に合意の枠組みの維持に努めたが、状況は年を追うごとに悪化していった。最終的に、米国・イスラエルとイランの「12日戦争」後の2025年9月に安保理は、「合意不履行」を理由にイランに対する制裁を復活させた。にもかかわらず安保理は、憲章第42条にもとづくイランに対する軍事力の使用は認めてこなかった。安保理が「国際平和と安全の維持・回復」のために戒めるべき対象は、イランではなく、侵略戦争を起こした米国とイスラエルの方だからだ。

 「悠久の歴史と伝統に輝く我々大韓国民は…内には国民生活の均等な向上を期し、外には恒久的な世界平和と人類共栄に寄与することによって…」。大韓民国憲法の前文はこう記している。「恒久的な世界平和と人類共栄」は、韓国の対外政策基調を示す憲法の精神だ。憲法第5条1項は「大韓民国は国際平和の維持に努め、侵略的な戦争を否定する」と規定している。米国とイスラエルによるイラン侵攻は、憲法に則って否定されなければならない。

 憲法第69条は、大統領就任宣誓を「私は憲法を順守し」で始める。憲法に則り、李在明(イ・ジェミョン)大統領は米国とイスラエルによるイラン侵攻を「否定」しなければならない。侵略戦争への加担は違憲である。また憲法第60条2項は、国軍の外国派遣に対する国会の「同意権」を明示している。大統領府が派兵を強行したら、国会には違憲状況を防ぐという憲法上の責務があるということだ。大統領府の「火入れ」が招いた状況は、それほどに深刻だ。

 「イランと大韓民国の関係は64年を超える歴史を有しており、両国関係は一貫して相互尊重を基盤として発展してきました。…他国がペルシャ湾とホルムズ海峡において軍事的に駐留したり作戦に参加したりすることは、侵略行為の当事者を直接的に支持するものとみなされざるを得ず、深刻な結果を招くでしょう」

 イラン外務省のバガイ報道官は9月7日午後、ソーシャルメディアのXに韓国語で投稿し、「危険な選択には代償が伴う」としつつ、そう警告した。米国とイランは、2026年6月14日に14項目からなる「イスラマバード覚書」に合意し、3日後に両国大統領が署名して発効させた。これにより両国は60日以内に最終合意に至らなければならなかったが、無為に終わった。8月16日に覚書の有効期間は満了した。トランプ大統領が開戦初期に「4~6週間で十分だ」と言っていた戦争は、いつしか半年を超えた。

2026年9月7日、イラン南部のバンダルアッバースの海岸で、少年が自転車に乗ってホルムズ海峡を見つめている/AP・聯合ニュース

■「非戦闘兵派兵」は幻想…「南北の雪解け」は妄想

 米国とイランは今も交戦中である。ホルムズ海峡も完全に塞がっている。それだけではない。ホルムズ海峡と同じくらい重要な海路であるスエズ運河を通じて北は地中海、南はインド洋へとつながるバブ・エル・マンデブ海峡の通航をめぐり、イエメンのフーシ派とサウジアラビアが全面戦争をはじめる兆しが見える。したがって「非戦闘兵」派兵は幻想である。過去の政権で要職にあった外交・安保の専門家は「李在明政権の対外政策は親米的な外交官僚に振り回されている」と断言する。この専門家は次のように診断する。

 「盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権や文在寅(ムン・ジェイン)政権の時代には、外交官僚は一つの軸を形成していたに過ぎず、対外政策を主導したことはない。しかし李在明政権では、外交官僚出身者が対外政策を主導している。彼らの基本的な属性は、米国務省の誰かに何か言われると『はい、承知しました』と答えるというもの。そして帰ってくると米国側の発言を膨らませる。クーパン事態がまさにそれ。イラン派兵もいきなり出てきた話ではないだろう。戦時作戦統制権の返還問題も同様にみえる。時期が先延ばしになり、条件が変わってきていることが、大統領に正確に報告されていないようだ。派兵問題も戦作権返還問題も、いずれも複数の省庁が絡んでいる。しかし外交・安保省庁同士では、政策協議がまったくできていない。国家安全保障会議(NSC)もまともに機能していないと認識している」

 凍りついた南北関係を雪解けに導くためにも派兵は避けられないという主張もある。北韓大学院大学のク・ガブ教授は「派兵は、国際的な対立の平和的手段による解決を放棄すると韓国が国際舞台に宣言するようなものになるだろう」と述べる。ク教授は以下のように指摘する。

 「口には出さないが、『派兵すれば朝米関係の促進に効果があるだろう』という考えが頭にあるようだ。多国間交渉の入り口は朝米首脳会談にならざるを得ず、トランプ大統領にそれを言い出されたので、派兵はそのために韓国が支払うべき『コスト』だと考えているようだ。しかし、派兵は南北の雪解けに役立つのか。朝米関係は北朝鮮と米国が自身の判断で取り組むべき問題だ。韓国が割り込む余地はない。派兵が南北関係の改善につながる可能性はまったくない。

 現情勢において南北の対面は、多国間対話を通じた『二つの国家』としての対面のみだ。中国が変数だ。韓国と同様に、中国もホルムズ海峡を通じた原油供給に大きく依存している。かつての4カ国、6カ国協議で見られたように、朝鮮半島問題を解決するカギは米中協力だ。派兵によって韓中関係が悪化したら、中国は朝鮮半島問題に関する多国間協議に臨むだろうか。中国は韓国を糾弾するだろう。そして韓国に問うだろう。『お前たちの言う包摂的な平和共存とはいったい何なのだ』と」

フランスを国賓訪問した李在明大統領が2026年9月8日、パリのエリゼ宮に到着し、出迎えるマクロン大統領と共に取材陣に手を振っている/聯合ニュース

■米国との一対一の等価交換は可能か

 大統領府の高官は9月4日のブリーフィングで、「ホルムズ海峡の自由な通航は、韓国の国益にとって極めて重要な部分」だと強調した。米国とイランの衝突が激化する中、ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡の状況が悪化し、国際原油価格はまたも動揺している。9月10日、北海産ブレント原油の先物価格は、約4カ月ぶりの高水準となる1バレル当たり101.21ドルにまで高騰。韓国軍が派兵されれば状況が変わるだろうか。中央大学のイ・ヘジョン教授(政治国際学)は「ホルムズ海峡は国際水域として全面開放すべきだ。しかし、米国とイランの双方が封鎖している」と指摘。イ教授は次のように語る。

 「米国もイランも、今してはならないことをしている。このような状況で韓国軍が行って助けられることは何もない。米国が軍事力でホルムズ海峡を開放できるのなら、すでにそうしていたはず。軍事的な選択肢がないから、ああしているのだ。米国は『ホルムズ海峡は完璧に統制しており、機雷もすべて除去した』と主張している。米国側の主張を全面的に信じれば、韓国軍が行く理由もなくなる。

 韓米同盟の観点から派兵すべきだという主張は、なおさら理解できない。米国が望めば、韓国は絶対に従わなければならないのか。李在明政権は『国益中心の実用外交』を掲げた。派兵にどのような実益があるのか。『通商圧力が想像以上に強い』と主張する者がいる。すでに対米投資については『商業的合理性』を条件として掲げている。派兵すれば米国の通商圧力がなくなるのか。そうではないだろう。だから問いたい。派兵によって米国と『一対一』で等価交換できるものは何か。原子力潜水艦か。それは約束手形にすぎない。

 違法な侵略への加担は、取り返しのつかない不可逆的な状況へと自らを追いやる行為だ。英国もフランスも日本も派兵していない。派兵決定は尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権よりもひどい陣営便乗外交だ。選択すべきは一つ。同盟か、国民か。同盟に国益を載せて米国に宿命的に依存する外交は捨てるべきだ。韓国はもはやかつての韓国ではない。同盟は手段であって、目的にはなり得ない」

チョン・インファン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://h21.hani.co.kr/arti/world/world_general/59894.html韓国語原文入力:2026-09-10 22:20
訳D.K

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