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危機サイレン鳴るも逃げ場なし…北朝鮮、再度衛星打ち上げの可能性(1)

登録:2023-06-03 05:25 修正:2023-06-03 09:02
[ハンギョレ21] 
安保理の無力な「決議違反」に 
中国「状況悪化防ぐには対話再開せよ」
2023年5月31日早朝、北朝鮮の平安北道鉄山郡東倉里の西海衛星発射場から、軍事偵察衛星「万里鏡-1号」を載せた宇宙ロケット「千里馬-1型」が打ち上げられている/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 北朝鮮の初の軍事偵察衛星打ち上げは失敗に終わった。北朝鮮は直ちに再度の打ち上げを予告した。韓米日は国連安全保障理事会(安保理)決議違反だと批判したが、中国は「双軌並進」(非核化と平和体制の同時推進)を改めて強調した。これは、新しい北朝鮮への制裁など安保理レベルの対応措置は容易ではないことを意味する。朝鮮半島情勢の緊張は高まる一方で、これといった突破口を見いだせない状況が長期化・固定化しつつある。

「予想外」の打ち上げ失敗の理由

 「朝鮮中央通信」の報道を総合すると、北朝鮮は2023年5月31日午前6時27分ごろ、平安北道鉄山郡(チョルサングン)の西海(ソヘ)衛星発射場から軍事偵察衛星「万里景-1号」を新型衛星運搬ロケット「千里馬-1型」に載せて打ち上げた。宇宙ロケットは通常3段で構成されるが、第1段エンジン分離後、第2段エンジンがきちんと作動しなかったため、推進力を失い西海上に墜落した。

 北朝鮮は打ち上げ失敗の原因を独自分析し、新型エンジンシステムの信頼性と安定性が欠けていたこと、使用した燃料の特性が不安定だったことなどをあげた。続けて「衛星打ち上げで現れた厳重な欠陥を具体的に調査解明し、これを克服するための科学技術的対策を至急講じ、様々な部分試験を経て、できるだけ早い期間内に2回目の打ち上げを断行する」と表明した。

 1998年8月31日、テポドン1号に搭載した「光明星1号」衛星の打ち上げを皮切りに、これまで北朝鮮は計7回の衛星打ち上げを試みている。2012年4月13日に「光明星3号」を載せた銀河3号が空中爆発するまでの4回の試みは失敗に終わったが、同年12月12日と2016年2月7日には、「光明星3号」2号機と「光明星4号」衛星を地球軌道に乗せるという成功を収めた。その後、北朝鮮は宇宙ロケットと同様に3段ロケットを使用する大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射能力を複数回誇示している。今回の打ち上げ失敗について「予想外」だとの評価が示されているのはそのためだ。科学技術政策研究院(STEPI)のイ・チュングン名誉研究委員は以下のように分析する。

 「ICBMは高度を最高値まで引き上げなければならない第1段エンジンが大きく、第2段エンジンの役割は補助的。一方で衛星は、第2段エンジンが低い高度で長く燃焼を反復しつつ衛星を望む軌道に乗せるという重要な役割を果たす。新型エンジンは真空状態で燃焼試験を行わなければならないが、北朝鮮にはそれだけの設備がない。北朝鮮が液体燃料として使用する四酸化二窒素(N2O4)はマイナス11度で凍り、プラス22度で沸騰する。ロケットが太陽から見て地球の裏側に入ったり、逆に表側に出て来たりすれば、真空状態で極端に温度が低くなったり高くなったりして液体燃料の管理が難しくなる。北朝鮮がムスダン系列のミサイル発射実験に何度も失敗しているのもこのためだ。偵察衛星の墜落直後、北朝鮮が失敗の原因は第2段エンジンと使用燃料だと明らかにしたことを考えると、事前に問題があることをある程度把握していた可能性が高い。にもかかわらず打ち上げ予告期間(5月31日~6月11日)初日の早朝に打ち上げを強行したのは、指導部の決定であれ実務陣の忠誠競争であれ、危険を甘受してでも日程を合わせなければならない理由があったとみられる」

北朝鮮が史上初の軍事偵察衛星を搭載した宇宙ロケットを打ち上げた5月31日午前、ソウル駅の待合室のテレビに、ソウル全域に警戒警報が発令されたという速報が流れている/聯合ニュース

再度の打ち上げに成功すれば、「報復抑止力」強化

 北朝鮮は、2023年上半期の党・国家機関の事業と経済状況、主要政策を討議するために「6月上旬」の開催を予告している労働党中央委第8期第8回全員会議の前に、偵察衛星の打ち上げを成功させようとしている。このような見通しが中国では示されている。ただし労働党のキム・ヨジョン副部長が6月1日の声明で、「朝鮮民主主義人民共和国の軍事偵察衛星は遠からず宇宙軌道に正確に進入し、任務遂行に着手することになると断言する」と強調したことをめぐっては、評価が割れている。ロケットのエンジンと燃料の欠陥を早期に解決すれば、予告した期間内に再打ち上げを行うだろうとの見通しもあるが、1回目の打ち上げが失敗して搭載していた衛星も失ったため、再度の打ち上げに必要な衛星を事前に確保できなければ、打ち上げはかなり延期されるだろうとも指摘されている。2012年の銀河3号打ち上げでは、1回目(4月)の失敗から2回目(12月)の成功までに約8カ月かかっている。

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は政権初期の2012年から「宇宙強国建設」を掲げ、「国家宇宙開発5カ年計画」を樹立している。また翌年の2013年4月に行われた最高人民会議第12期第7回会議では「国家宇宙開発局」を新設したほか、「宇宙開発法」を制定するなど、衛星打ち上げの意志を示している。特に2021年の第8回党大会では、軍事偵察衛星の開発を宇宙開発部門の最重大課題かつ戦略兵器部門の核心課題として提示した。「労働新聞」は軍事偵察衛星について、2022年3月10日付で金委員長の言葉を引用し「南朝鮮地域と日本地域、太平洋上での米帝国主義侵略軍隊とその追従勢力の反共和国軍事行動情報をリアルタイム」で確保し、「戦争準備能力を完備するための急務の事業」だと伝えている。世宗研究所のキム・ジョンソプ副所長は次のように指摘する。

 「軍事偵察衛星は常時相手側の標的に対して偵察を行うほか、誘導兵器を制御する役割も果たす。これまで北朝鮮が弱かった分野だ。北朝鮮は2022年の核武力政策法の制定とともに、様々な射程距離の弾道ミサイル発射実験と実機動訓練を実施しつつ、いわゆる『核戦争遂行能力』を強調してきた。偵察衛星まで確保すれば、従来の鈍重な攻撃方式がより細密かつ精密なものへと変わり、北朝鮮の主張するいわゆる対南・対米『報復・膺懲(ようちょう)抑止力』を強化できるとみられる」(2に続く)

チョン・インファン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://h21.hani.co.kr/arti/world/world_general/53939.html韓国語原文入力:2023-06-01 22:03
訳D.K

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