「テレビの録画と聞いて野外撮影バスに乗り込んだら、性暴力を受けた。その時に撮影された映像が販売されていると聞いた」
「ツイッターでモデル募集の書き込みを見て応募した。直接会ったら性行為を強要され、撮影された。後にその映像がインターネットで販売されていた」
日本のあるデジタル性犯罪被害者支援団体に寄せられた相談内容だ。国籍を聞かなければどこかで聞いたことのある話だ。望まない撮影を強要され、被害を受ける過程が撮影された映像は国境を越えて出回る。まるで韓国の「n番ルーム」のように。異なる点があるとすれば、日本の被害女性と加害者の間には「契約書」があり、その契約書は抜け出せないように被害者を縛り付ける。契約書のせいで、彼女たちは被害者と呼ばれるのではなく、「被害誘発者」という烙印を押されている。また、わなにはまった被害者はAV(成人用ビデオ)女優と呼ばれ、エンターテインメントとして消費される。
契約書のせいで「被害誘発者」の烙印
「AV出演強要」は最近、日本で社会問題として浮上している。日本政府は毎年4月を「AV出演強要・『JKビジネス』(女子高生のコスプレをして稼ぐ事業)等被害防止月間」と定めているが、デジタル性暴力の被害者を政府レベルで支援する制度や機関はない。日本ではほぼ唯一、PAPS(People Against Pornography and Sexual Violence、ぱっぷす)がデジタル性暴力の被害者を支援している。本誌はぱっぷすに、電子メールと画像を通じて3回にわたりインタビューを行った。2020年8月の画像インタビューには、ぱっぷすの理事長、金尻カズナさんとスタッフの岡恵さんが応じてくれた。
「被害者の大半は20歳前後。20歳が多い」。金尻理事長が言った。社会経験のない大学生であるケースが多いが、未成年者ではないため契約が取り消せず、標的となる。AVへの強制出演の被害を受けた女性から初めて相談を受けた2013年以来、ぱっぷすに寄せられる相談の件数は毎年増えている。2013年に1人だった相談者数は、2019年には181人にまで増加し、2020年1月現在の累計相談人数は718人にのぼる。ぱっぷすは、このうち60%以上がAV関連の被害者と分析している。残りの相談内容は「児童ポルノ」、「リベンジポルノ」、児童への性売買の強要などだ。
日本においてAVは「実質的に合法」(金尻)だ。ただし性器を露出したり陰毛があらわになっている映像(ハードコアポルノ)は、モザイク処理しなければ販売できない。ハードコアポルノが合法である米国、カナダなどには、モザイクなしで映像の伝送が可能だ。このため、日本国内でも修正されていない映像をインターネットで簡単に手に入れることができる。映像には日本人が登場し、日本語で表記されているにもかかわらず、サーバーが海外にあることを理由に日本の刑法(第175条、わいせつ物頒布等の禁止)が適用されない。「(AV出演を強要された被害者が)どんなに残虐な性行為を強要され、負傷しても『同意』『演技』とされ、強姦、強要、傷害、暴行罪などで立件されるケースはほとんどない。同様に『演技』との理由で売春防止法の適用も受けない」(「ヒューマン・ライツ・ナウ」(HRN)2016年報告書)
AV被害とデジタル性犯罪の共通点
「AV出演の強要」が日本で社会問題と認識されたのは、2014年に国際人権団体ヒューマン・ライツ・ナウ(HRN)がある事件を暴露したためだ。高校生のAさんは2011年、路上で「グラビアモデル」としてスカウトされた。演技に興味があったので、Bプロダクションが提示した契約書にサインした。しかし実際にAさんに与えられた仕事は、露出の激しい服装でカメラの前に立つことだった。やめたいというAさんの言葉に、プロダクションは違約金100万円の支払いを要求してきた。Aさんはやむを得ず撮影に応じざるを得なかった。Aさんが20歳になると、プロダクションはAさんにAVを撮るよう強要した。Aさんはまた何度もやめたいと言ったが、B社は再び違約金を持ち出し、Aさんの要求に応じなかった。耐えかねたAさんが、支援団体の助けを借りてB社に契約の解除を通知すると、B社はAさんを相手取って2460万円の賠償を求める民事訴訟を起こした。幸い東京地裁は「成人ビデオへの出演は、出演者である被告の意思に反して作業することは許されない性質のもの」とし、2015年にプロダクション側の損害賠償請求を棄却した。その後、同様の被害を受けたという女性の声が相次いだ。
ぱっぷすは、「性的同意のない拡散」という点で、AV被害とデジタル性犯罪は本質的に同じだと言う。AVも広く流布され、ネット上に半永久的に残るうえ、2次、3次と繰り返し使用されたり、新作として加工されたりもする。また、被害者が撮影に同意したとしても、撮られた動画がどのように扱われるのか予測できず、被害者の同意なしの視聴も可能だ。「撮影者との交渉力、情報量の格差に気付かぬまま撮影されてしまう。具体的な撮影内容も知らず、相互合意を放棄したという認識もなく撮影に臨むケースが多く、インターネット上に映像が広がってようやく人権侵害を受けたことに気づく」(岡)
しかし「金」を受け取って「契約」したという理由により、AV被害者たちは「デジタル性暴力の烙印」ピラミッドの最も下に置かれる。そのため、さらに過酷な非難を浴びる。岡さんは「『契約書にサインしなければよかったじゃないか』『嫌だったのなら(撮影場所に)行かなければよかったのに』などというふうに、被害者が非難される」と説明した。主に「テレグラム性搾取」の対象となったのはツイッターに自分の体の写真を載せた10代女性だったという事実が知られた際に、「写真をアップした人の過ち」という非難があったことと似ている。「日本の性教育は『自分の体は自分が守れ』というもの。だからいっそう被害者のせいにされる」(金尻)
ぱっぷすがこの1年間に、デジタル性犯罪の被害者の要請により、インターネットサイトの提供者に対して映像の削除を要請したケースは1万7839件にのぼる。このうち、一部でも削除されたケースは41.7%、キャッシュの削除は20%で、削除されないケースは38.2%に達する。「児童ポルノ」や「リベンジポルノ」の削除率は100%だが、AV出演などの商業的経路を通して拡散された映像の削除率は52%にとどまる。金尻さんは言う。「合法だから被害がより深刻になる。アンダーグラウンド化すれば(違法だったら)被害が訴えやすくなるが、合法なので被害を訴える力が奪われる」
「性的搾取のないAVは見たことがない」
産業としてパッケージされたデジタル性犯罪に接してきたぱっぷすは「n番ルーム事件」が韓国で発生した時には、それほど驚かなかった。むしろ「犯人が捕まり、事件が裁判に持ち込まれたということに驚いた」(金尻)。日本では捜査がなかなか進まないからだ。その理由は韓国と似ている。「サーバーが海外にある」「掲示者の身元の特定が困難」
金尻理事長は「警察に通報した際、映像プラットフォーム会社が米国にあることなどを理由として、調査は難しいと言われたことがある」と述べた。ぱっぷすが2020年4月に出した「削除要請事業報告書」によると、サイトの登記上の住所は米国が1334件で最も多かった。次いで日本(433件)、オランダ(60件)、シンガポール(38件)、香港(33件)の順だった。韓国は20件だった。そのためぱっぷすは国際捜査協力が必要だと感じている。
「性的搾取に依存するAV産業はなくならなければならない。撮影時に同意したとしても、後日取り消しを望む人がいる可能性がある。また実際に撮影をしてみたら、本人の予測や意思に反していたという状況もある。私はまだ性的搾取のないAVは見たことがない」(岡)