米国の時事週刊誌「TIME」は先月22日、「2020年 世界で最も影響力のある100人」を選定、発表した。韓国からはK-防疫の責任者であるチョン・ウンギョン疾病管理庁長官と映画『パラサイト』のポン・ジュノ監督が名を連ねた。名簿を見ていると、自然に一人の人物に目が行った。日本の「MeToo運動」の象徴、伊藤詩織さんだ。「伊藤さんは性暴力加害者に対する勇気ある告発によって日本の女性たちの生き方を変えた」。女性学者で東京大学名誉教授の上野千鶴子さんによる紹介文だ。
伊藤さんはジャーナリスト志望だった2015年4月、日本のテレビ局TBSの山口敬之記者(当時)に性的暴行を受けた。加害者に謝罪するよう伝えたものの、返ってきたのは「そんなことはしていない」という返事だった。悩みに悩んだ。「ジャーナリストになるのが夢だったのに、自分についての真実にすら向き合えないのならば、この仕事をする資格はないと思ったんです」。警察に通報したものの、その瞬間から新たな苦痛が迫ってきた。報道の世界では仕事ができないぞという脅迫から、どのように性的暴行を受けたのか人形を使って再演せよという要求にまで応じなければならなかった。複数の証拠を提出しにもかかわらず、検察は嫌疑不十分で不起訴とした。
伊藤さんは、日本の法と社会システムが性犯罪の被害者のためにまともに作動していないと考えた。実際、日本の性的暴行事件のうち、通報されるのは5%に満たない。頭の中に家族の顔がちらついたが、伊藤さんは遺書まで書いた状態で、2017年5月に世に姿を現した。日本で性的暴行の被害者として初めて身分を公開し、民事訴訟を起こしたのだ。記者会見後、「2次加害」と脅迫で身の危険を感じ、ロンドンに避難してもいる。しかし伊藤さんはあきらめず、さらに大きな声をあげることを決意した。「話をすれば誰かに届く」。伊藤さんはこの言葉を信じ、自分の性的暴行の内容を記した本を出し、内・外信のインタビュー、講演、討論会に積極的に臨んだ。
こうして5年が過ぎた。伊藤さんは昨年12月、損害賠償を求めた一審で勝訴し、現在は二審が進められている。深刻な2次加害を行った政治家、漫画家などを相手取って損害賠償訴訟を起こしてもいる。微動だにしなかった日本社会も動き始めた。国会では、性暴力被害者に対する調査慣行の改善を求める国会議員の会が作られた。2018年4月には、報道機関の女性記者が財務省の福田事務次官にセクハラを受けたと暴露し、野党議員、記者、弁護士、研究者ら約200人が被害者と共に闘うとして「With You」キャンペーンに参加した。性的暴行を受けた女性たちが昨年4月、「フラワーデモ」という組職を作り、1年のあいだ毎月1回、街頭で自らの話を伝えた。彼女たちは「性的暴行をなかったことにしないために、未来を変えるために、痛みを語る」と叫んだ。伊藤さんの抵抗以降、日本社会の風景ははっきりと変わりつつある。
伊藤さんは自分の夢のジャーナリスト活動も熱心に行なっている。ネット上で自分の名前を打ち込めば必ずついてくる「性暴力被害者」という言葉は仕方のないことだが、ジャーナリストを追加したい、という。フリーランスで海外メディアに映像ニュースやドキュメンタリー作品を配信している。日本の「孤独死」問題を扱ったドキュメンタリーは、国際メディアコンクール「ニューヨークフェスティバル」で受賞もした。伊藤さんの抵抗を一つひとつ辿ると、胸が熱くなる。胸が痛く、申し訳なく、そしてありがたい。そんないろいろな感情がぶつかる。伊藤さんに伝えたい言葉はただ一つ。あなたを支持し、応援します。
東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )