韓国最高裁(大法院)の量刑委員会は、n番部屋事件(テレグラムのチャットルームで性搾取物が取引されていた事件)のように児童・青少年性搾取物を複数回にわたって組織的に制作した者に対して、最長で29年3カ月の懲役を宣告できるようにした。 「デジタル性犯罪」に対する国民的怒りを考慮した措置で、被害者が深刻な被害を受けた場合には、加重処罰を勧告することにした。
最高裁量刑委員会が15日に確定し、同日発表した量刑基準案によると、児童・青少年性搾取物制作犯罪の基本領域の量刑基準は懲役5~9年。13歳以上の青少年に性的暴行を加えた場合、基本領域は5~8年だが、これより厳しい量刑基準を設定したことになる。
特に、n番部屋事件のように、多数が役割を分担して組織的な犯行に及んだり、▽犯行を主導的に計画して指揮したり、▽インターネットで撮影物を流布したり、▽制作によって被害者が自殺、家庭崩壊、学業中断などの深刻な被害を受けた場合、などを「特別加重因子」と設定し、特別加重因子が1つの場合は7~13年、2つ以上の場合は最長の懲役を19年6カ月とすることを勧告した。さらに、同じ犯罪を2回以上繰り返し、常習性も認められれば、最短10年6カ月から最長29年3カ月までの懲役刑を言い渡せるようにした。
児童・青少年性搾取物を営利目的で複数回販売した犯罪でも、特別加重因子が2つ以上あれば最長で27年の懲役を勧告することとした。また、複数回にわたって性搾取物を配布したり、児童・青少年を斡旋した場合も、特別加重因子が2つ以上含まれれば、18年までの懲役を科すことが可能となる。児童・青少年性搾取物を購入しただけでも、少なくとも懲役6カ月を勧告することとし、特別加重因子が2つ以上含まれ、複数回購入していれば、量刑は最長で6年9カ月となる。
カメラなどを用いて営利目的で人の身体を撮影し、これを複数回配布して常習性が認められれば、最短で6年から最長で18年までの宣告が可能となる。不法撮影物を所持するだけでも懲役刑を言い渡され、基本領域は懲役6カ月から1年。また、ディープフェイク(人工知能を使って合成・偽造された画像や動画)などの虚偽の映像物を制作・配布した犯罪については、懲役6カ月~1年6カ月の基本領域を適用し、営利目的の配布は基本領域の量刑を最短1年、最長2年6カ月に引き上げた。撮影物を用いて脅迫・強要を行った場合は、罪質が悪く常習犯が認められれば、刑量を大幅に増やし、脅迫は最短3年、最長9年、強要は最短7年6カ月、最長19年の懲役刑を勧告することとした。
被害者の意思とは関係なしに、「合意に向けた被告人の努力」とみなされてきた刑事供託は、軽減因子から除外される。これまでは被告人が裁判所に供託金を支払えば、量刑を減らしていた。また、性犯罪特別軽減因子だった「処罰不願」(被害者が加害者の処罰を望まないと申し出ること)を、デジタル性犯罪では一般軽減因子に格下げし、減刑量も縮小した。性搾取物を流布前に削除・廃棄し、流布した性搾取物を自発的に回収した場合に限って、特別軽減因子と認められる。
最高裁量刑委は今回の基準案を基に、10月まで関係機関に意見照会を行い、11月に公聴会を開催することとした。基準案は、12月7日に開かれる量刑委全体会議での最終議決後に効力が発生する。