韓国産業通商資源部の国家技術標準院は19日、今年1~9月の世界貿易機関(WTO)加盟国によるTBT(貿易の技術的障害)通報は3304件で、過去最多を記録したと明らかにした。
TBTは技術規定、規格、認証手続きを理由とした、商品の自由な移動をさまたげる貿易の障害要素。関税のように明示的にはあらわれないが、企業にとっては輸出を遅延させる非関税障壁となる。米国と中国の貿易戦争をはじめとする、主要国を中心とした通商政策の強化にともない、TBT通報は急増傾向にある。
米国は今年1月から9月にかけて328件(前年に比べ8.6%増)のTBT通報をおこなっており、加盟国の中で最も多かった。中国も167件。今年に入って米国は自動車の試験走行の基準、自動車のリアバンパーおよび燃料タンクの安全規制を新設したほか、洗濯機やエアコンなどの家電製品のエネルギー効率基準や試験手続きなどを改正した。欧州連合(EU)は、化学物質や化粧品などの安全および環境に関する表示の基準を改定した。また、二輪車と超小型電気自動車のサイバーセキュリティー要件を新設するなど、83件の規定を改定した。中国は生活用品、消防設備(火災感知器、消火器など)の安全規制を制定、改定した。
インド政府は最近、「機械および電気設備の安全令」を新設し、2026年9月から認証を受けていないポンプ、圧縮機、切削機などの機械類市場への流入を規制することを発表した。ただし認証要件についての説明が不足しており、認証コストの増加でインド市場に進出している韓国企業は困難に直面している。これを受け韓国の国家技術標準院は、インド規格局と会議を行い、規制緩和と認証についての明確な情報の提供を要請しており、9月にはインドで現地に進出している韓国企業に対する説明会を開催してもいる。
環境および健康に関する安全規制が強化されるにつれ、関連するTBT通報の件数も増加傾向にある。ケニア(318件)、ルワンダ(237件)、タンザニア(235件)、ウガンダ(208件)などからのTBT通報が多いことが象徴的だ。これらの国で環境や健康に関する関心が急速に高まっていることを傍証するものだ。
慶煕大学のチャン・ヨンジュン教授(貿易学科)は「TBT通報で企業の輸出額が減少することもありうるが、輸出先の国の認証を得るために品質と技術力を高めた企業にとっては、むしろ市場シェアを高める機会になりうる」と述べた。