韓国の鉄鋼産業で信用格付けの下方調整リスクが少しずつ増えていると信用評価機関が評価した。鉄鋼はトランプ関税ショック、韓国国内の建設景気低迷、中国製鉄鋼の供給過剰、ウォン安の為替レート、サプライチェーン再編にともなう海外での現地生産拡大まで、韓国内外の景気と価格、政策が一度に反映されている代表業種だ。
ナイス信用評価が29日に発行した韓国鉄鋼産業点検報告書は「鉄鋼産業全般にわたり実績低迷に加えて各種のネガティブな事業環境が続き、財務負担が増加傾向にあり、業界全般の信用リスクが次第に増加していると判断される」と分析した。韓国の鉄鋼産業は、建設・自動車・造船などの前方需要が萎縮し、中国製の輸入製品の流入拡大による供給過剰で鉄鋼生産量が減少し、流通価格の下落も続いている。昨年の韓国の粗鋼生産量は6360万トンで、2023年(6670万トン)に比べ4.6%減少した。1~2月にも韓国の粗鋼生産量は前年同期比2.3%縮小している。
鉄鋼産業の主力前方産業である自動車および建設産業の業況鈍化は、鉄鋼需要の縮小を招き、鉄鋼価格の下落を招いている。報告書は「内需の建設産業への依存度が大きい鉄筋・形鋼の場合、建設の景気沈滞の影響が他の鋼材に比べて強く作用している」と分析。中国の鉄鋼製品輸出の増加傾向も続いており、供給面で負担要因として作用している。昨年の中国の粗鋼生産量は10.1億トンで、2020年以降10~11億トン水準を持続している。中国内の不動産景気が活況だった時期(2021年以前)に大きく増加した鉄鋼生産量はその後も減産なく、類似した規模の生産が続き、余剰在庫が韓国市場など海外輸出の増加につながっている。
トランプ政権が3月12日から米国市場に輸入されるすべての鉄鋼製品に対し25%の関税を賦課したことも、米国の需要業者が価格引き下げに圧力をかけることに作用する公算が大きい。韓国の鉄鋼産業は全生産量に占める輸出比重が25%、内需比重が75%の内需中心の産業であり、輸出量に占める米国市場の割合は10%と低い水準ではある。しかし報告書は「昨年、韓国の鉄鋼の米国輸出製品の平均単価は他の国の輸出分の131.4%に達し、高付加価値製品群を主に輸出している」として「関税賦課により米国内の前方需要業者の価格引き下げの圧力があらわれる可能性があり、需要鈍化の可能性も存在し、輸出減少と収益性低下が予想される」と見通した。
韓国の産業用電力単価(今年1月、KWH当たり190ウォン)とウォン安傾向も収益性の負担を加重させている。高炉生産工場は主な原材料である鉄鉱石と有煙炭を大部分輸入に依存しているため、ウォン安によって原材料調達の負担が増す。電気炉生産の場合、鉄スクラップの国内調達の割合は高い方ではあるが、電力使用量が多いため電力単価の費用負担が収益性の下振れ圧力として作用したと報告書は判断した。
報告書によれば「韓国の主要鉄鋼企業は自発的減産で価格防御に乗り出しているが、稼動率下落により固定費の負担が拡大することで、減産を通じた財務効果は制限的な水準であると判断され、韓国の鉄鋼企業の営業実績低下が中短期的に続くものとみられる」との予想だ。