韓国に向けた米国の関税措置を廃止するための韓米通商協議が第一歩を踏み出したが、交渉の「進行スピード」をめぐる双方の温度差が大きい。大統領選挙など国内政治状況を考慮して「慎重論」を強調する韓国政府とは異なり、米国側が「速やかな交渉」を目指しているからだ。ややもすれば、米国に急かされ、不利な交渉に引きずり込まれる恐れがあるという懸念が高まっている。
27日の関係省庁の発表によると、ハン・ドクス大統領権限代行首相はこの日、ソウル首相公館で開かれた経済安保戦略タスクフォース(TF)会議で、アン・ドックン産業通商資源部長官から「韓米2プラス2通商協議」の結果について報告を受け、後続措置などについて議論した。同日の政府協議は非公開で行われた。
アン長官は24日(現地時間)、チェ・サンモク副首相兼企画財政部長官と米ワシントンで開かれた韓米2プラス2長官級通商協議に参加し、26日午後、韓国に先に帰国した。アン長官は仁川空港で記者団に「協議の第1ボタンがちゃんとかけられたと思う」としたうえで、「今週から実務協議を本格的に進め、実務協議で具体的な作業部会を確定する」と述べた。
韓米両国は初めての通商協議で、米国の相互関税猶予が終了する7月8日までに関税・非関税措置、経済安保、投資協力、通貨(為替レート)政策など4分野を集中的に議論し、関税廃止のための「7月パッケージ」を用意することにした。今回の協議を通じて、今後の議論の議題と日程など交渉の基本的な枠組みを決めており、今後本格的な実務協議に着手する見通しだ。
チェ副首相も通商協議直後、米国で「韓国の政治日程と通商関連法令、国会との協力の必要性など、様々な考慮事項があることを説明し、米国側の理解を要請した」とし、「急がずに落ち着いて秩序ある協議に向けた両国の認識を共有することができた」と述べた。
しかし、米国側が示した反応は韓国側とは対照を成している。今回の交渉を率いたスコット・ベッセント米財務長官は韓米協議直後、ホワイトハウスで韓国との協議が思ったより速く進んでいるとし、「早ければ来週貿易に関する『了解合意』(agreement of understanding)がなされるだろう」と強調。産業部と今後実務協議を担当する米通商代表部(USTR)も報道資料で、「韓米双方は、互恵的でバランスの取れた貿易に向けた速やかで意味のある進展を成し遂げることが重要だということで一致した」として交渉のスピードを強調した。
これは、米国のドナルド・トランプ大統領が1月20日の就任直後に全世界を相手に関税の刀を抜いたが、就任100日目(4月29日)になるまで明確な成果を出せずにいるためとみられる。実際、トランプ大統領は今月25日に公開された時事週刊誌「タイム」のインタビューで、「(主要国とすでに)200件の取引を成功させた」とし、「(関税交渉は)今後3~4週間で終わるだろう」と述べた。
米国が交渉を速やかに進める意思を明らかにし、韓国政府が「7月パッケージ」に言及したことに対し、懸念の声もあがっている。対外経済政策研究院のキム・フンジョン院長は「交渉の時限を決めておくのはおかしい。時間に追われる側がうまくいかなくなるものだ」とし、関税・非関税措置を越え経済安保と為替レートなどにまで交渉議題を拡大したことについては、「あらかじめ私たちのカードを全部見せてしまった」と指摘した。
これに対して通商当局関係者は「ベッセント財務長官が言及した『了解に関する合意』とは、通商分野では使わない表現」だとし、「米国側も直ちに韓米間合意を導こうというのではなく、細部協議の対象と議論していく機関の構成などに言及したものとみられる」と述べた。アン長官も「考慮すべきことは考慮し、慎重かつ落ち着いて協議過程を進める計画」だと話した。
産業部は近いうちにUSTRと細部議題を扱う交渉窓口を稼動し、国内関係部署と共に非関税障壁緩和の可否などを議論する方針だ。