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口腔の健康が脳の健康…口内の微生物によって認知力が変わる

登録:2025-04-16 20:36 修正:2025-04-17 10:12
[クァク・ノピルの未来の窓] 
認知力に相反する影響を与えるバクテリア群の発見
脳の認知力に影響を与えると見られる口腔微生物群が発見された=エクセター大学提供//ハンギョレ新聞社

 歯茎と歯の健康は脳の健康にも影響を及ぼす。口内の炎症物質と口腔微生物(バクテリア)が損傷した歯茎の血管壁を突き破り入った後、血流に乗って脳血管にまで流れるからだ。例えば、歯周炎と関連した炎症物質や口腔微生物は、脳血管の炎症を誘発したり悪化させたりして、脳卒中・認知機能の低下・アルツハイマー病などのリスクを高めかねない。では、口腔微生物を通じて認知症のリスクを予測できるだろうか?

 英国エクセター大学の研究チームが50歳以上の成人115人の唾液から脳の健康、特に脳の認知力に影響を及ぼす口腔微生物を確認し、国際学術誌「国立科学院会報(PNAS)Nexus」に発表した。実験参加者の52%は脳の認知力に異常がなく、48%は記憶力を含めて軽微な認知障害(MCI)を患っていた。

 研究チームは、彼らの唾液を分析した結果、ネイセリア(Neisseria)とヘモフィルス(Haemophilus)という二つの微生物グループが、より良い脳の健康と関連があることを突き止めた。この口腔バクテリアを持つ人々は、脳の認知力検査でより良い点数を示した。特に記憶力と注意力、複雑な作業を遂行する能力が高かった。彼らの唾液からはまた亜硝酸イオンの数値がより高く出た。亜硝酸塩はバクテリアが野菜に含まれた硝酸塩を分解する時に生成される物質だ。

 口腔バクテリアは、亜硝酸塩の分解を通じて一酸化窒素を生成することで、血液循環をより円滑にし、血圧を下げるのに役立つ。研究チームは「これはホウレン草のような硝酸塩が豊富な野菜を摂取すれば健康なバクテリアの数値を高め、脳の健康に役立つということを示唆する」と明らかにした。

 さらに、今回の研究の後続として硝酸塩と豊富なビートジュースが口腔バクテリアを通じて脳機能に良い影響を及ぼすことができるかを調べていると付け加えた。

アルツハイマー認知症患者の脳神経細胞にある歯茎疾患菌「ポルピロモナス」(赤)=Cortexyme提供//ハンギョレ新聞社

■アルツハイマーの認知症予防の糸口になるかも

 一方、脳の健康に有害な影響を及ぼすとみられる口腔バクテリアも発見された。記憶力に問題を示した人々からは、一般的に歯茎の疾患と関連のある「ポルフィロモナス(Porphyromonas)」というバクテリアがより多く発見された。

 また、亜硝酸塩の数値が低い人々から多く発見されたプレボテラ(Prevotella)というバクテリアも脳の認知力低下と関連があるとみられると明らかにした。アルツハイマーの危険遺伝子であるアポリポタンパク質E4(APOE4)を保有している人々のプレボテラ数値がさらに高い傾向を示した。しかし、直接的な因果関係は明らかにされなかった。

 今回の研究は、認知症と口腔健康の関連性を示唆する最近のさまざまな研究と脈を共にする。例えば日本の東北大学の研究チームは、歯茎の疾患と記憶化学習に重要な役割をする海馬の体積縮小が互いに関連があるということを確認し、米国ルイビル大学の研究チームは、死亡したアルツハイマー患者の脳から歯茎の疾患の病原菌であるポルピロモナスを発見した。ネズミを対象にした実験では、このバクテリアに感染したネズミの脳からアルツハイマー病のたんぱく質であるアミロイドベータがさらに多く検出された。

口腔バクテリアの管理を通じて認知症を早期に発見し進行を遅らせる可能性が開かれる可能性もある=ピクサベイ//ハンギョレ新聞社

■硝酸塩の豊富な葉野菜の摂取で良い微生物を増やす

 研究チームは「今回の研究は脳の健康研究において大きな意味がある」として、脳の健康を支援したり害したりするバクテリアがあるならば、口腔バクテリアの生態系を変える治療法が認知症予防策の一つになりうると期待した。例えば、ネイセリアのような亜硝酸塩生成バクテリアの成長を促進し、プレボテラとポルピロモナスの個体数を減らせば、老化による脳機能の低下を抑制するのに役立つということだ。

 また、「このようなバクテリアの数値を測定する検査を将来に歯科検診の一部として導入し、脳の健康低下の兆候を初期に感知することも考えられるだろう」とも述べた。

 研究を主導したジョアンナ・レフルー博士研究員(分子生物学)は「ザ・カンバセーション」への寄稿で「今後、口腔微生物群集が脳の健康に重要な役割をするということが確認されれば、口腔バクテリアの管理を通じて認知症を早期に発見し、進行を遅らせることができる新しい可能性が開かれることもありうる」とし「それまで最も良い方法は歯を清潔に管理し、葉が多い緑色野菜のように硝酸塩が豊富な食品を摂取して口内に良いバクテリアを増やすこと」と話した。

*論文情報
 Oral microbiome and nitric oxide biomarkers in older people with mild cognitive impairment and APOE4 genotype.

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/science_general/1191682.html韓国語原文入力:2025-04-10 17:08
訳J.S

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