中国の人工知能(AI)スタートアップ企業のディープシーク(DeepSeek)が、韓国内でのサービスを暫定的に中断した。韓国政府による独自の分析で、ディープシークの利用者のデータがショート動画のプラットフォーム「TikTok」の運営会社バイトダンスに渡った事実が確認されたことを受け、ディープシークは個人情報保護法に照らして不十分な点を改善した後、サービスを再開する方針だ。
個人情報保護委員会は17日、「ディープシークのモバイルアプリの韓国内でのサービスが、15日午後6時から暫定的に中断された」とし、「韓国の個人情報保護法に基づく改善・修正がなされた後、サービスが再開される予定」だと明らかにした。
ディープシークのサービス中断を受け、グーグルやアップルなどをはじめとする韓国内のすべてのアプリストアでは、ディープシークのアプリの新規ダウンロードは当面のあいだ制限される。サービス中断前にモバイルアプリをダウンロードした既存の利用者や、パソコンを用いている利用者は、継続してサービスを使うことが可能だ。
今回の措置は、個人情報保護委が「先にサービスを中断、後で改善」を勧告し、ディープシーク側がこれを受け入れたことによって行われた。委員会は、ディープシークが韓国の国内法に従いサービスを修正するのに「相当な期間」を要する見込みだとした。
個人情報保護委は、独自の技術分析の結果、ディープシークの利用者のデータが、中国のバイトダンスに渡った事実を確認したことを明らかにした。ただし、これらのデータが利用者の個人情報に該当するものなのかどうかについては追加の確認が必要だと委員会は補足した。このため、現段階ではディープシークに個人情報保護法違反の容疑を適用することは難しい。
これに先立ち、中国のディープシークは、米国で開発された他のAIと同程度の性能を低コストで開発したという「衝撃」を与え、あわせて、ディープシークが学習データの確保のために個人情報を無差別に収集する可能性があるという懸念が広がっていた。これを受け、韓国の科学技術情報通信部や保健福祉部などの政府機関とカカオなどの企業は、4日ごろからディープシークへの接続を遮断するなど、「警戒令」を発した。この過程で、韓国政府内に統一指針がなく政府の各機関がそれぞれ対応に乗り出したため、混乱が拡大したりもした。
個人情報保護委は先月31日、中国のディープシーク本社に、データの収集・処理方式などを確認する質問書を送ったところ、ディープシーク側は半月後の今月14日、「グローバルサービスの発売の過程で、韓国内の保護法に対する配慮が一部おろそかになっており、今後は個人情報保護委員会に積極的に協力する」という意向を表明した。
ディープシークは同日、個人情報保護規則を改正し、これまでは自動収集項目の対象だった「利用者のキーボード入力のパターンとリズム」を削除した。しかし、今回も利用者がディープシークの自動情報収集に対して拒否の意向を表明できるようにする「オプトアウト」条項は改訂内容から外れた。
個人情報保護委は、サービス中断期間中にディープシークの個人情報処理の実態を詳しく点検し、韓国の個人情報保護法に忠実に従わせる一方、今後は国外のAI開発会社が韓国でのサービス発売前に点検すべき内容のガイドラインを設け、最終実態点検結果とあわせて発表する計画だ。委員会は、昨年3月にもオープンAIやグーグル、メタなどの巨大言語モデル(LLM)の開発企業6社の個人情報保護方針などを点検し、改善を勧告している。
個人情報保護委のナム・ソク調査調整局長は、既存のディープシークの利用者に対して、「最終結果の発表までは、ディープシークの入力欄に個人情報を入力しないなど、慎重な利用をお願いする」としたうえで、「実態調査の過程で、既存の利用者の個人情報の処理・保管状況などに応じ、必要な対策を講じる計画」だと述べた。