中国製のリチウムリン酸鉄(LFP)バッテリーを搭載した韓国製電気自動車(EV)が増えている。KGモビリティ(旧双龍自動車)の中型スポーツ実用車(SUV)「トーレスEVX」に続き、起亜自動車の軽自動車「レイEV」、準中型SUV「EV5」が発売または発売される予定だ。中国製のリン酸鉄リチウムイオン(LFP)バッテリーは、韓国国内の二次電池メーカーが作る三元系(NCM)バッテリーより走行距離は劣るが、価格が安いという長所がある。韓国のEV市場の勢力図を変えるか注目される。
KGモビリティは21日、ソウル市中区のKGビルで開いた記者懇談会で、「トーレスEVX」の価格競争力を基に市場を攻略する計画を発表した。価格が4750万ウォン(約526万円、E5モデル)のこの車は、政府の補助金などを受ければ3千万ウォン(約330万円)後半で購入できる。現在、韓国で販売されているEVは、三元系バッテリーを搭載し、価格が5千万ウォンをはるかに超えるものが多いが、中国製LFPバッテリーを採用して価格を下げている。
KGモビリティのクァク・ジェソン会長はこの日、「トーレスEVXが中国製バッテリーを使うからといって、私たちが中国製バッテリーだけを使うと断定してはならない。車種ごとに最適な条件を探して選択する」とし「中国製LFPバッテリーは火災安全性、走行距離、価格の面で私たちの立場では最適」と述べた。
起亜がこの日発売した軽自動車の「レイEV」も、中国製LFPバッテリーを搭載している。電気自動車だが補助金を考慮した実購入価格を2千万ウォン(約220万円)台前半に下げた。1800万ウォン(約200万円)程度のレイ内燃機関モデルの価格と比べてほとんど差がないという反応だ。これに先立ち、テスラも中国製LFPバッテリーを搭載したモデル「Y」を韓国国内に導入した。米国工場で生産し持ち込んだ従来モデルのYより価格を2000万ウォンほど引き下げた。
EV市場の値下げ競争に火がつき、低価格車を中心に主に搭載されていたLFPバッテリーへの関心が高まっている。これまで三元系バッテリーが中心だった韓国国内の二次電池メーカーも、最近になってLFPバッテリーの拡散に対応するため苦心している。
サムスンSDIは今月初め、LFPバッテリーにマンガンを加えたバッテリー(LMFP)をドイツ・ミュンヘンモビリティショーで発表した。短所に挙げられた低いエネルギー密度を改善するなど、差別化されたLFPバッテリーを披露したのだ。LGエナジーソリューションとSKオンは、三元系バッテリーの鉱物の割合を調整して価格を下げた製品(マンガンリッチなど)を生産し対応している。バッテリー業界関係者は「LFPバッテリーは普及型で出発したが、プレミアム級などでもシェアが急速に増えており、韓国企業などがこれに対抗するための新しいバッテリーを作っている」と話した。
LFPバッテリーに対する見通しは交錯している。この業界の関係者は「中国のCATLが開発したLFPバッテリーは1回の充電で700キロメートルまで運行が可能だというが、まだ言葉だけだ。(より高性能が必要なモデルもあり)すべてのEVのラインナップがLFPバッテリーになることはないだろう」と述べた。
一方、ユジン投資証券のハン・ビョンファ理事は、「LFPバッテリーの陽極材価格は三元系バッテリーに比べ30~50%の水準で安いが、技術的に同等な状態であるため、拡散は速いだろう」と話した。