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「中国の浮上も米国IRAも韓国には脅威…『一つの戦略』の固守は誤り(2)

登録:2023-08-30 00:48 修正:2023-08-30 08:36
キム・サンジョ元大統領府政策室長が22日、ソウル城北区の漢城大学の研究室で、近著『21世紀の世界経済』について語っている=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

(1の続き)

-市民団体で活動していた時、たびたび大企業中心の経済政策を批判していた。政策担当者になった時、以前指摘していたような大企業中心の産業政策はあったのか。

 「評価が極端に分かれるが、公正取引法、商法、金融複合グループ監督法の公正経済3法などの努力と成果もあった。ただし、日本の輸出規制と新型コロナ・パンデミックのショックを克服するには大企業の協力と支援が必要だった。それを否定すべきではないと思う。問題は、素材・部品・装備のエコシステムを発展させるという課題の登場は今にはじまったことではないのに、その成果がなぜ足りなかったのかにある。大企業の支配構造と不公正取引の慣行にも問題があるが、政府の政策にも改善すべき部分が多い。何よりも縦割り行政がひどすぎるし、企業の現場との意思疎通も非常に足りない。日本の輸出規制とパンデミックの衝撃は、このような限界を克服するための努力の転換点となったと思う。産業政策を「How」(どのように)の問題だと強調するのもそのためだ。実際のところ、韓国の産業構造の問題点は誰もが知っている。大企業はグローバル企業に成長したが、それを取り囲んでいる産業環境は非常に脆弱だ。要するに、半導体、電気自動車、バッテリーに対する補助金の支給も必要だが、それに劣らず重要なのは、中小企業とベンチャー企業を含めた素材・部品・装備のエコシステム構築のために、現場とつながる省庁横断的なコントロールタワーをいかに作るかが、私たちが考えるべき産業政策の枠組みだと思う」

-著書では「財政政策は健全性神話のくびきを脱することができるだろうか?」という問いを投げかけ、「政治、理念の問題になって久しい」と答えてもいる。

 「韓国は単年度予算を組むというシステムになっている。もちろん、それと共に5年間の中期財政計画を国会に送ってはいるが、かなり曖昧なものだ。革新であれ保守であれ、政権には5年の任期中に取ろうと考えている国政基調、取り組もうと考えている国政課題があるはずなのに、それは1年単位の予算では担保されない。だから単年度予算体系を越える、少なくとも5年単位の企画と予算の体系を作れる何かが必要だと前政権時代にずっと考えてきた。今の企画財政部を解体して企画予算処を作ろうという政府組織法改正レベルの主張ではなく、各省庁と事前に緊密に協議しつつ5年程度の中期予算基調を企画できる大統領室傘下の機関が必要だということだ。文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に財政企画官制度が作られはしたものの、秘書官級なのでうまくいかなかった。より体系的な機関が必要だ。

 また、2010年代以降の韓国社会の主要な対立要素として、経済問題に劣らず世代、ジェンダー、環境、安全などの社会問題が浮かび上がった。それらの社会問題と社会政策を調整する仕組みが必要だ。各省庁の社会政策的問題を事前に調整する権限と手段を社会副首相に与えるとともに、経済副首相と協議したうえで予算にも反映できるようにすべきだ。社会領域の対立の諸要素を政府内で調節できなければ、外部でも調節は不可能だろうと思う。

 最後に、経済安全保障に関連する組織の役割が明確化されなければならない。軍事や外交安保だけでなく、経済安保の観点から政策資源を効果的に動員、執行する仕組みが必要だということだ。必要であれば、国家安全保障会議(NSC)の経済安保機能を強化するか、またはそれとは別に、米国のように国家経済会議(NEC)を大統領室に設置することも考えうる。

 財政政策をめぐる議論は、単なる景気浮揚のための財政規模の拡大に限られるわけではない。どの分野にどう使うのか、どれだけ一貫して効率的に使うのかという問題も重要だ。財政の使い方がでたらめだと長期的には財政健全性に深刻な問題が生じるが、かといって財政政策が硬直的すぎるとデジタル・グリーン大転換に向けた政府投資と社会福祉への支出は削減されざるを得ないという現在の欧州の苦悩を反面教師にする必要がある」

-また「比較的自信を持って言えるのは、グローバルなマクロ経済環境は安定するという意味では決してないということだ。危機は続く」と述べている。危機はやって来るのか。

 「マクロ政策の無力化、長期低金利による過剰流動性の問題、財政の健全性の問題、国際金融の循環の問題など、21世紀のマクロ経済学の難題で解決されたものは一つとしてない。このような問題を解決するためには、G7またはG20レベルでマクロ政策の国際協力を確実に定着させなければならない。しかし、危機の諸要因はさらに強まり、国際協力体制は以前より弱まっていると評価しているため、危機は続くと書いた。ただし、危機がいつどのようなかたちでやって来るのか、それを予測できる人はいない。危機は変装の名人なので目の前に迫ってくるまで分からない」

-著書の最後で「コントロールタワーがその役割を果たすよう監視し、責任を問うことこそ民主市民の役割だ」と述べている。

 「まったく扇情的でないこの本で私が言える最も扇情的な言葉だ。これまで教授として、市民運動家として、そして任命された公務員として生きてきた私の経験に照らすと、政府が果たすべき役割を果たさせる動力は、結局はその政府を監視し応援する市民社会の力だと思う。

 政府は取り組むべき課題を自律的に決定するとしても、それは真空状態または孤立した状態においてではなく、国民と絶えず相互作用を起こしながら調整し、進化しなければならない。だから政府の成功のためにも、積極的に参加し行動する市民社会の役割が何よりも重要だと考える。政府もそれを受け入れなければならない」

-市民社会の役割は重要だが、キム教授も市民社会から政府に行ったという批判がある。特に文在寅政権時代には市民社会と政府との壁がなくなり、けん制が弱まったとの批判の声は大きかった。

 「当然の批判だと思う。私が文在寅政権にかかわる前、市民社会団体にいた時、このようなことを言ったことがある。韓国の民主化後、各政権は市民社会の力量または専門知識人を徴発した。なぜなら、各政権が自らの国政哲学を実現するための動力を行政省庁内のみから見つけることは容易ではなかったし、汝矣島(ヨイド・国会)の制度政治界隈も同様だった。革新か保守かは関係なくどの政権もそうであったし、政府と市民社会の境界は徐々にぼやけていった。私はそれを徴発と表現した。

 しかし、そのような過程が続いたことで、韓国の最もダイナミックな部門だった市民運動の力量に傷がつくのではないかという恐怖を感じていた。そのような恐怖を感じていた人間がなぜ政府に参加したのかと批判されれば、本当に返す言葉がない。

 そして、政府に参加した知識人の中できちんと役割を果たしたと評価される人物はそれほど多くはないだろう。いずれにせよ、様々な思想的背景を持つ市民運動家や知識人が参加してきたし、結果的に国民からきちんと役割を果たしたと評価されることが困難な状況と経験が積もり積もって、そのような悪循環の繰り返しが韓国の市民社会の力量を大きく蚕食した。それについては強い痛みを感じている」

イ・ワン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1106001.html韓国語原文入力:2023-08-28 07:00
訳D.K

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