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「インドは韓国になど関心がない」(1)

登録:2023-06-22 07:25 修正:2023-06-22 09:09
[インタビュー]ソウル大学アジア研究所のカン・ソンヨン南アジアセンター長 
 
「米中対立の地形から浮上するインド 
地域覇権国インドを攻略するのは容易ではない」
ソウル大学のカン・ソンヨン教授が1日午後、ソウル大学アジア研究所でハンギョレのインタビューに応じている=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 インド哲学を専攻したソウル大学アジア研究所のカン・ソンヨン南アジアセンター長は、インドをはじめとする南アジアの政治・経済・社会文化などの韓国社会への紹介に努めている、韓国を代表するインド専門家だ。アジア研究所は政策研究報告書「アジア・ブリーフ」を毎週発行している。

 世界銀行は、2023~2024会計年度のインドの経済成長率を6.3%と発表している。韓国貿易協会とインド産業協会は昨年11月に韓印ビジネスフォーラムを開催。国内外でインドに対する関心が高まっている。インドが注目を浴びるにつれ、カン教授も忙しくなってきている。昨年半ばからは経済ユーチューブ・チャンネル「3プロTV」と地上波放送局の経済番組に出演している。今月1日にソウル大学アジア研究所でハンギョレのインタビューに応じたカン教授は、インドについて「米中対立の中で多極化する国際情勢において、インドの地域覇権主義を理解することは重要だ」、「単に消費市場が大きいからインドでは成功する可能性があると考えてはならない。企業にとって攻略が難しい国であり、多元的な国だ。インドの現実について冷徹に認識すべきだ」と助言した。

-20年前にBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)諸国が注目を集めたが、なぜ改めて注目されているのか。

 「率直に言えば、韓国はインドに対して関心を持ったことがない。BRICSが注目された時も、ブラジルやロシアなどの資源大国に対する注目の方が大きかった。中国への依存度が高まった後、『THAAD』問題で中国から遠ざかった韓国は抜け道を探していたが、最近になってインドが話題になりだしているという感じだ。米中対立の中で、韓国にとっても世界3強を自任するインドが次第に重要になってきている。韓国では企業が真っ先に反応している。

 この10年間におけるインドの変化は、物を買う市場としての価値が高まりつつあるということ。消費力を持つ人口がどれほどいるかへと焦点が移っている。2008年の金融危機以前の5年ほどは年8%の高度成長を続けていた。まだ比較的高いが、かつてと比べると成長率は鈍化している。

 インド市場に対する不信が少しは消えたことの背景には、2017年の商品サービス税(GST)導入がある。以前は州ごとに間接税が異なっていたが、この時統一された。地方政府が課していた税を中央で統一したために配分の問題が生じたが、単一市場としてのアプローチが可能だと外国企業が判断しはじめたと思われる」

-インド人の消費は現在どのような水準か。

 「報道を見ると、インドは中産層が増えているという。14億の人口のうち3~4億だといわれるが、この概念は慎重に検討すべきだ。インドの中産層は新興富裕層だ。この用語は、伝統的な金持ちではなく、インド経済が市場経済体制へと転換するにつれて登場した富裕層を指す。私たちが考えるように、所得五分位階級の中ほどの人々に経済力があると考えてはならない。外国製品を買う人たちはごく少数で最上層、外国企業に勤めていたり、外国企業の下請け企業で働いていたりする人たちだ。製造業が発達していないため、実際の中間層の人々も経済的に厳しい。その下は統計にも表れない、生計を立てるための様々な仕事に従事している人々だ。まだ社会が全体的に透明性が低く、離職率も高い。消費水準は高くなったが相対的なものだ。1970年代の韓国は1950年代の韓国に比べて相対的に生活水準があがっていたが、絶対的にあがったとは言えないのと同じだ。

 現在のインド国民1人当たりの国民所得は約2300ドルだが、5000ドルまでは簡単にあがると予想している。しかし、中国(1人当たり国民所得1万3000ドル)ほどにまで成長できるかどうかは断言できない、というのが私の考えだ」

-カースト制度(身分制)などのインドならではの社会・文化的背景は企業活動にどのような影響を与えるか。

 「カースト制度は固定的なものではない。資本主義の世界になったから、上位階級は『能力主義』へと移行していった。上位階級というのは階級が高いということだけでなく、名門の学校を出て多くの給料を得ている人たちを指す。既得権を持つ者たちが経済力でもって教育を行うことで階級を世襲しているから、社会的に不満がたまるが、極端なヒンドゥー主義を利用してそれを正当化している。経済発展がヒンドゥー主義や国粋主義と絡み合っている。現在、インド与党はこれを利用している。だから国粋主義と市場主義が混在している社会だ。同時に全般的な不正腐敗を否定できておらず、意思決定も遅い。失業率、離職率ともに高いため、安定した企業経営は容易ではない」

-その他のインド市場の特徴は。

 「価格感応度が非常に高い市場だ。インド人はいくつものオンラインショッピングモールを訪問し、価格を比較してから購入する。消費財市場では『メイド・イン・コリア』の競争力に期待してはならない。韓国の商品は欧州のブランド品ほどのブランド力はなく、支配力も際立ったものはない。サムスン製品は高価な製品で性能も良いとも思うが、中国製とシェアを分け合っている程度だ。

 電力や道路などの社会インフラがまだ不十分だ。ただし、アダニ・グループを中心として近ごろ太陽光・風力発電の造成を急速に増やしている。再生可能エネルギーで水を分解して作る『グリーン水素』の製造に潜在力があると注目されている」(2に続く)

チェ・ウリ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/global/1096796.html韓国語原文入力:2023-06-20 19:30
訳D.K

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