国際通貨基金(IMF)は、今後5年間の世界経済の成長は、ここ30年で最も弱いものになるだろうと警告した。
IMFのクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事は6日、ワシントンのメリディアン国際センターで行った講演会で、世界経済は今後5年間で約3%の成長を遂げるだろうとの見通しを示した。ブルームバーグなどが報じた。同氏は「これは1990年以降で最も低い中期展望値であり、ここ20年の(5年間の)平均成長率である3.8%にもはるかに及ばない」と付け加えた。
ゲオルギエバ専務理事は、今年の全世界の国内総生産(GDP)の成長率は3%未満との予測を示したが、これはIMFが1月に発表した展望値2.9%とも符合する。昨年の世界の経済成長率は3.4%。
同氏は、さらに低下した成長率は「致命的な打撃」だとし、低所得国が特に打撃を受けるとの懸念を示した。同氏は「貧困と飢餓がさらに拡大する可能性がある。これは新型コロナウイルス危機で始まった危険なすう勢」だと述べた。低所得国の約15%がすでに債務危機に直面しており、45%は債務の多さから来る脆弱性があるとIMFは診断している。同氏は、一部の新興国市場は成長を示しており、特にアジアにおいてインドと中国は世界の経済成長の半分を担うことが期待されると述べた。
ゲオルギエバ専務理事は、高金利、米国と欧州での一連の銀行の破綻、深刻化する地政学的分裂が世界の金融の安定を脅かしているとの憂慮を示した。同氏は「前にのびる道、特に強力な成長へと戻る道は険しくて霧が濃く、私たちを結びつけていたひもは数年前よりも弱まりうる」と語った。
この日、ゲオルギエバ専務理事は移住、資本の移動、国際協力に対する制限などによる長期的な貿易の瓦解のせいで、全世界のGDPは最大で7%減少しうるとする警告を繰り返した。これは約7兆ドル規模で、ドイツと日本の1年間の生産量に匹敵する。ゲオルギエバ専務理事はまた、技術貿易の中断は一部の国には12%のGDPの減少を招きうると警告した。中国を標的とする米国のサプライチェーン再編の動きがもたらす損失を指摘したものだ。
IMFと世界銀行は来週、ワシントンで各国の財務相と中央銀行のトップが参加し、当面の世界経済の課題について論議する定期春季会合を開催する。