韓国政府が米国主導の半導体サプライチェーン協議体「チップ4」の予備会議に参加する方針を決めたことで、サムスン電子とSKハイニックスなど半導体メーカーが政府の対応戦略に神経を尖らせている。政府は「性格、議題、形式のどれもまだ決まっていない」と述べているが、中国の反発に伴う余波を避けられないとみているためだ。
サムスン電子やSKハイニックスなど国内半導体メーカー各社は、チップ4への参加についての立場表明は控え、政府の対応を静観している。匿名の半導体業者関係者は8日、本紙との電話インタビューで「半導体はもう個別企業がビジネス戦略のレベルで扱うイシューではない。米中技術覇権争いに加え、国家レベルで経済安全保障戦略の勝負所になった。様々な可能性と各国の動きを注視しているが、企業レベルの対応策を取り上げる時点ではないと思う」と語った。今は政府の戦略的選択および対応戦略が優先だということだ。
SKグループのチェ・テウォン会長も、先月米国を訪問し特派員たちと行った懇談会で、チップ4への参加に関して「これは私たちが行うのではなく、政府や他の所でもこの問題をちゃんと扱うと思っている。そこでも一緒に議論され、私たちにとって最も有利な方向に選択せざるを得ないのではないかと思う」と述べ、企業レベルの対応の限界をうかがわせた。
中国は韓国のチップ4参加に強い反対の意思を明らかにしてきたが、直ちに半導体部門で対応に乗り出す可能性は低いとみられる。産業研究院のキム・ヤンパン専門研究員は「中国は韓国と台湾産の半導体を輸入して電子製品を作り、販売しなければならない。韓国産半導体の輸入を禁止したり、中国内の韓国半導体工場に制裁を加えれば、結局自国産業が同時に大きな被害を受ける構造であるため、それが選択肢になることは考えにくい」と話した。キム研究員は「ただし、(THAADをめぐる軋轢のように)中国に依存している他の製品に対して韓国への輸出を禁止する可能性はある」と指摘した。
昨年の韓国の半導体輸出総額1280億ドルのうち、中国と香港への輸出が占める比重は60%に達する。サムスン電子は中国西安と蘇州で、SKハイニックスは無錫、重慶、大連でそれぞれ半導体工場を稼動している。中国との関係がぎくしゃくすれば、対中輸出だけでなく生産にも影響が出る可能性が高い。半導体の材料に対する日本の輸出規制を経て、中国産半導体材料の輸入が増えるなど、中国への依存度がさらに高まったという分析もある。祥明大学のイ・ジョンファン教授(非メモリー半導体工学科)は「中国が半導体の原材料に対する輸出を規制する形で報復に乗り出した場合、半導体業界に大きな被害が予想される」と話した。
政府が予備会議で「一つの中国原則を尊重し、対中国輸出規制には言及しない」という原則を提案するだろうという一部報道について、政府は否定した。韓国半導体ディスプレイ技術学会のパク・ジェグン会長(漢陽大学融合電子工学部教授)は「チップ4に加入しても、韓国の中国内メモリー半導体工場の今後のアップグレードおよび拡張の際、米国と日本の装備と材料を安定的に供給するという確約を取り付けなければならない。中国工場で安定的な生産を約束しなければ加入できないということを強く主張すべきだ」と語った。また別の半導体業界関係者は「いつか半導体サプライチェーンの混乱が収まり、半導体市況も下落に転じる時期が来るだろう」とし、「企業としては米国の技術より中国の市場の方がより重要になる時期も念頭に置かなければならない」と話した。