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ウクライナ戦争で「ドルの底力」再確認…なぜ基軸通貨は敵なしなのか

登録:2022-04-01 01:18 修正:2022-04-01 09:01
基軸通貨は全世界で最も信頼される貨幣 
世界経済に対する懸念でドルに資金が集中 
脱ドルの試み、ロシアのドル切れで混乱 
流動性、信頼性…その他の通貨はまだ追いつけず
米ドルと欧州のユーロの紙幣、ロシアのルーブル硬貨/タス・聯合ニュース

 危機の際にはよりいっそう輝くドル。

 世界大戦後、英ポンドから基軸通貨の地位を受け継いだ米ドルは、以降70年あまりの間、ユーロ、円(日本)、人民元(中国)などの多くの挑戦者を退けてきており、世界の金融市場で最も強力な貨幣としての地位を失っていない。21世紀に入ってからは、ロシアが別の決済システムを構築するなどにより、「脱ドル」に向けて数年にわたり準備してきていたものの、最近のウクライナ戦争をきっかけとしてドルの覇権ばかりが再確認されている。ドルはなぜ強いのか。

最も信頼される貨幣

 「別の通貨を使いたくても相手が受け取ってくれない。それこそまさに基軸通貨の力だ」。大統領選挙期間中、基軸通貨が議論の的になっていた際に、経済省庁の当局者が口にした言葉だ。基軸通貨の核心はほかでもない「信頼」だというわけだ。別の専門家は同じ脈絡から「世界が大きな危機に陥った際に、取り引きが可能な唯一の通貨は何なのか考えてほしい」と問い返す。実際、今年に入り、世界経済の物価上昇や景気低迷への懸念が膨らみ、ドル需要はさらに高まっている。安全資産としてのドルの魅力が浮き彫りになったからだ。主要6カ国の通貨に対するドルの相対的価値を示すドルインデックスは、3月28日に99ポイントを突破し、新型コロナウイルス禍初期の2020年5月以来の最高値を記録した。

 ウクライナ戦争においてもドルの底力は再確認される。ロシアは2014年のクリミア半島併合後、脱ドルに力を入れてきた。にもかかわらず、ロシアの金融機関の外国為替取り引きの約80%はドルで行われており、先月米国がドル取り引きを遮断すると、金融市場は大きく動揺した。ロシアと中国がドルに対抗するために作った代替国際取り引き決済網も、予想より力を発揮できずにいるようだ。人民元国際決済システム(CIPS)は、ドルではなく人民元の決済のみが可能だからだ。ある政府関係者は「国際取り引きでドルの代わりに人民元を渡すとしたら、誰が快く歓迎するのか。CIPSにはどうしても限界がある」と説明した。

「信頼」を支える多くの条件

 独歩的信頼を得ているドルの覇権の背景には、長い間に様々な要素が絡み合って形成された全世界の人々の暗黙の同意がある。何よりも米国が経済力はもちろん、政治的、軍事的にも大国であるという点が大きい。米国が滅びることはないという信頼のおかげで、ドルに対する信頼も保たれているのだ。世界の覇権の歴史と基軸通貨の歴史が一致する理由がここにある。

 ドルは流動性の面でも他の貨幣を上回る。全世界の人々がドルを自由に使うためには、それだけ供給量が多くなければならない。米国は数十年間、相当な貿易赤字に耐えながら、この機能を維持してきている。また、ドルに基盤を置く米国債も、発行量が多いにもかかわらず価値は落ちず、「安全資産」としての役割を十分に果たしている。さらに米ドルは1970年代半ばから、米国がサウジを軍事支援する対価として、原油がドルのみで決済される「ペトロダラー」としての地位も持っている。

 準基軸通貨と呼ばれるユーロ、ポンド、円、人民元などは、こうした条件からみて、ドルを代替するには力不足だ。2002年に導入された欧州連合(EU)の貨幣であるユーロの国際決済比率は今年2月現在で37.79%で、それなりにドル(38.85%)を追いかけてはいるが、単一の国家ではないため、国債発行などの流動性の供給で限界が存在する。円は、日本の緩和的通貨政策の継続、マイナス成長に対する懸念などで、今年に入って対ドル相場がここ6年での最安値を記録し、不安定な様相を呈している。

 中国は3月15日からサウジと石油代金を人民元で決済するための協議に入り、ペトロダラーに挑戦状を突きつけているが、実際に合意へとつながる可能性は低い雰囲気だ。サウジが米国に対して間接的に不満を示すための政治的行為にとどまる可能性が大きいということだ。中国の人民元が国際決済に占める割合は2.23%にすぎない。

 延世大学のソン・テユン教授(経済学)は本紙に対し「基軸通貨となるためには取り引きに不便が生じないよう貨幣量が豊富でなくてはならず、相当な量の国債を発行しても国の信用度が影響を受けてはならない」とし「こうした条件を備えた基軸通貨は、事実上いまは米ドルしかない」と述べた。ドルの覇権は永遠ではないだろうが、かといって容易には崩れないだろうということだ。

チョン・スルギ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1037093.html韓国語原文入力:2022-03-31 18:59
訳D.K

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