サムスン電子が横領・背任などの疑いで裁判を受けている会社役員に対し、「企業価値の毀損を防止するため、必要な場合、相当の措置を取ることができる」という立場を表明した。現在、国政壟断破棄差し戻し審の裁判(賄賂供与および横領など)を受けているイ・ジェヨン副会長にも、同原則が適用されるかどうかに注目が集まっている。
サムスン電子が5月29日に金融監督院に提出した「2019年コーポレートガバナンス報告書」によると、「役員が横領などの疑いで起訴され、刑事裁判が行われた場合、当該裁判の結果が確定すれば、事案の具体的内容と関連法令を総合し、当該役員に対する必要な措置を取る」と記されている。同報告書はさらに「裁判が確定する前でも企業価値の毀損を防止するため、必要な場合には相当の措置を取ることができる」と付け加えた。コーポレートガバナンス報告書は毎年作成されるものだが、このような内容は今回初めて追加された。
特に同報告書には、イ・ジェヨン副会長を念頭に置いたものと見られる内容が含まれている。「現在未登記役員として在職中の一部役員が横領などの疑いで起訴され、一部有罪が言い渡された。なお、当該裁判は最高裁で破棄差し戻しされ、現在差し戻し審の手続きが進められている」という文面がある。ソウル高裁で審理中の国政壟断事件に関連し、イ副会長の裁判を除けば、サムスン電子の役員が係わった差し戻し審はない。また、イ副会長が裁判を受けている事件で、イ副会長を除いた残りの人物の中で、未登記役員として在職している人物もいない。
今年初めて明示された同規定が、イ副会長にも厳しく適用されるかどうかについては、懐疑的な見方もある。漢陽大学のイ・チャンミン教授(経済改革連帯副所長)は「有罪が確定すれば現行法上就業制限に引っかかるし、確定される前でも相当な措置を『取ることができる』という表現は強制力のある条項ではない」としたうえで、「遵法を強調し、裁判で有利に適用するための一種の“名分作り”とみられる」と述べた。
これに関し、サンムスン電子側は「特定の人物を指定して書いたわけではない」とし、「さらに透明な意思疎通を図り、詳細に記述するため、関連内容がアップデートされた」と述べた。