イ・ゴンヒ サムスン電子会長が昨年5月に倒れ、イ・ジェヨン副会長が事実上経営権を行使している。他にも現代自動車のチョン・ウィソン副会長をはじめ多くの財閥3、4世が経営権の継承過程にある。彼らが経営権確保のために持分と財産を膨らます過程で、株式の低価格買収に始まり、業務の集中割当、ビジネスチャンス流用など、各種の不公正問題が起きた。近い将来に現実化する“財閥3・4世時代”を控え、不公正問題を招いた彼らの財産増殖過程を調べる。 今も進行中の不公正継承過程を改善し、グローバル企業として跳躍する上で必要な社会的合意点を模索するためだ。
イ・ジェヨン1363億ウォンを8兆9千億ウォンに
イ・ブジン97億、イ・ソヒョン73億→2兆ウォン
エバーランド・SDSで魔法を使用
BW・CBを引き受け後“爆風成長”させ
相続税用資金は準備完了
今後は経営権を受け継ぐだけ
第一毛織を核に支配構造を再編
サムスン“SDSはBW贈与税を完納”
仮にあなたがイエスが生まれたその日から毎日100万ウォン(約11万円、1円=9ウォン)ずつ2014年間休むことなしに金を使ったとすれば、いくら使えただろうか? 7351億ウォンだ。1兆ウォンにはまだならない。 ところが、父親からもらった数十億ウォンを特に努力もせず20年も経たないうちに数兆ウォン台の巨富を積んだ人々がいる。
イ・ジェヨン サムスン電子副会長は昨年末基準で保有する株式の価値が80億ドルと推算されてブルームバーグが集計した世界億万長者番付で158位に上がった。 ウォン貨(韓国ウォン)にすれば9兆ウォンに肉迫する。 75位を記録した父親のイ・ゴンヒ会長(132億ドル)に次ぎ、韓国で2番目の大金持ちと集計された。 イ副会長の順位は、サムスンSDSと第一毛織(旧サムスンエバーランド)が昨年末に上場されて株式価値が急騰したおかげだ。イ副会長は第一毛織の23.2%、サムスンSDSの11.3%を保有している。
■種銭膨らまし
財産を8兆ウォン以上に膨らませた“魔術”は、イ副会長が父親イ会長から1994~1996年に受け継いだ61億ウォンの種銭から始まった。 贈与税を納めて余った資金40億ウォン程が“上場前株式(新株引受権付き社債・転換社債)の低価買い入れ→該当会社上場→高価処分”を経て数百倍に膨らんだわけだ。
イ副会長は1994年にサムスンエバーランドからエスワンの株式を買い入れ(23億1500万ウォン)、1996年の有償増資に参加(55億6100万ウォン)した。 続いてエスワンが上場すると1996~1997年に株式を355億1600万ウォンで売却し、276億5600万ウォンの差益を得た。 サムスンエンジニアリングと第一企画でも新株引受権付き社債(BW)や転換社債(CB)を買い取り持分を確保した後、上場後に売って投資金38億7600万ウォンが442億1500万ウォンに増えた。
妹のイ・ブジン、イ・ソヒョン社長も1996年に父親からもらった16億1000万ウォンで兄のイ副会長(48億3100万ウォン)と共にサムスンエバーランド転換社債を1株当り7700ウォンで買った。新株引受権の行使価格は旧ハンソル製紙がサムスンエバーランド株式を売却する時の価格である8万5000ウォンや、1999年4月にサムスンエバーランドが相続贈与税法に従って評価した1株当り資産価値10万364ウォンに比較すればあまりに安かった。そのために法的手続きを担当したホ・テハク元サムスンエバーランド代表理事とパク・ノビン元常務が裁判所から業務上背任の容疑で有罪判決を受けたが、その後最高裁では無罪判決を受けた。 そして1996年に三兄妹が投資した80億5100万ウォンは、現金配当収益を除いても昨年末現在で8兆2606億ウォンに化けた。
三兄妹はサムスンSDSを通じても財産を大きく膨らませた。 1996年サムスンSDSの有償増資の時にサムスン物産とサムスン電気が放棄した株式と1999年に発行された新株引受権付き社債を買い取り持分を確保した。問題は新株引受権付き社債だった。持分確保の時、1株当り7150ウォンで取得したが、当時の場外取引価格は5万3000~6万ウォン水準だったので低価買収疑惑に火が点いた。 この件と関連してサムスン特検を経て、イ・ゴンヒ会長とイ・ハクス前副会長、キム・インジュ社長らが有罪判決を受けた。 しかし三兄妹の株式保有は維持され、昨年11月の上場を経て価値が4兆3267億ウォンに増えた。 投資金は合計で188億9500万ウォンだった。
二つの会社が巨額の富を三兄妹に抱かせたのは“業務の集中割当”によるものだった。 サムスンエバーランドはサムスン系列会社の建物を管理し、労働者に給食を提供して40~60%の売上を上げた。 サムスンSDSもやはりサムスン電子をはじめ系列会社から仕事を受注し会社を成長させた。
イ副会長が1997年に買収したサムスン電子の転換社債(転換価格5万ウォン)も当時海外公募転換社債の転換価格が11万6763ウォンだったことを考慮すれば、安値で買ったという疑惑が出されたが、裁判所は“多少安い価格”などの理由で無罪判決した。 昨年イ・ジェヨン副会長が472億ウォンで売却したサムスン資産運用持分も当初の投資金は67億ウォンに過ぎなかった。
投資に失敗したが、高く転売して損失を減らしたケースもある。イ副会長はeサムスンの持分60%などeサムスン インターナショナル、CQIドットコム、カチネットなどのインターネット企業に投資した。 だが、その翌年にベンチャー熱風が冷めこれらの企業実績が振るわなくなると、持分をサムスングループの系列会社に売った。 そのおかげで投資金451億ウォンに対して413億ウォンを回収した。 これらの会社は全て消滅した。
■第一毛織を中心に支配構造再編
イ・ジェヨン副会長三兄妹がグループの経営権を完全に受け継ぐまでには、まだ課題が残っている。 イ・ゴンヒ会長はサムスン電子の持分7.5%を持つ三星生命(20.8%)とサムスン電子(3.4%)、サムスン物産(1.4%)等の株式約12兆3393億ウォン分を保有している。 受け継ぐ際の相続税を単純計算すれば6兆ウォンを越える。三兄妹がこれまで財産を増やしてきた理由の一つだ。
さらに支配構造もイ副会長を中心に再編される可能性が高い。その過程でサムスンは系列会社間の複雑な循環出資構造を解消し、持株会社体制に転換されると見られる。すでに2013年末から事業構造の再編を通じて多くの循環構造が解消された状態だ。今後サムスン電子を人的分割して、サムスン電子持株会社を設立した後、これをイ副会長ら総帥一家が支配するシナリオなど種々のシナリオが出てくる。 この過程でイ・ジェヨン副会長ら三兄妹の持分が多い第一毛織が支配構造における核心的役割を果たす可能性が高い。1株当りの公募価格が5万3000ウォンだった第一毛織株式が、14万ウォン(11日終値)を記録するなど株価が急騰した背景だ。
■道徳性と経営能力の検証が残る
イ・ゴンヒ会長は『新東亜』1993年9月号のインタビューで「(創業)2世代がグループを率いるためには、第一に家の中に(中略)雑音はあってはならず、第二に会社役職員に認められなければなりません。(中略)第三に社会に認められなければなりません」と語った。 イ・ジェヨン副会長は1991年に入社してサムスンに身を置き、会社役職員と多くの交流があり、持分も相当部分を継承されている。 だが、イ会長が語った社会の認定はまだはっきりしない。
サムスン関係者は「サムスンSDS新株引受権付き社債の引き受けは正常に発行され、会社の損害額と贈与税も全て納付済だ」として「第一毛織(旧サムスンエバーランド)の転換社債低価発行論議も背任行為には該当しないと裁判所が決めた内容」と明らかにした。 だが、不公正継承という社会的世論に対しては「ノーコメント」と口を閉ざした。
キム・サンジョ漢城大教授(経済改革連帯所長は「この間の不公正継承により形式的な経営権継承のための手続きは相当部分進行されたが、社会的な認定面では不十分」として「サムスンが韓国社会で例外的な存在ではなく、社会が定めた規則の中で動いているということを示すのはイ・ジェヨン副会長が担わなければならない課題」と話した。
経営能力にも相変らず疑問符がついている状態だ。ソウル大学パク・サンイン教授(行政大学院)は「財閥の世襲と継承は、経営能力が検証されていない後継者が皇帝経営を継続し不確実性の高い革新型経済では企業の成功を担保できないという問題と、優秀な人材が最高経営者を夢見て企業を選択するよりは公職を好むようになるという弊害を産む」と話した。また「単に財閥の子供だという理由で不法、不公正な仕事集中割当で数兆ウォンの利益を得られるならば、財閥は正常な利潤追求よりこのような私益追求に一層関心を持つことになり、大多数の社会構成員は勤労意欲を失うことになる」と付け加えた。