世界的な不況を乗り越え持ちこたえているドイツ経済を支える主要な柱である“隠れたチャンピオン”(強小企業)の成功の秘訣のうちの一つは、家族経営に基づく“リーダーシップの持続性”にある。昨年3月、ドイツで『ハンギョレ』に会ったマンハイム応用化学大学のビンフリート・ベーバー教授は、「隠れたチャンピオンの家族経営が成功には“合理的後継プログラム”がある」と強調した。
115年の歴史を誇る世界でプレミアム家電業界1位のミレーがその代表例だ。ミレー・コリアのアン・キュムン代表はミレー成功の秘訣として二つの創業一族が4代目まで守っている「合理的後継および経営システム」を挙げる。「創業一族から1人ずつ選んで経営に参加させ共同代表となる。一族の代表は厳格な後継者選定過程を経て、能力を検証した後に最終承認を受ける。理事会では創業一族の2人と専門経営者3人が全員一致で意志決定をする『創業一族と専門経営者間のパートナーシップ経営』をする」。
韓国財閥のベンチマーキングの対象とされてきたスウェーデンのバレンベリーが150年の歴史を受け継いできた背景にも、子弟に幼いころから責任感や質素さを身につけさせ、海軍士官学校に入校させて強靭な体力と精神力を育てた後、世界的な金融会社に勤務して専門性と国際的ネットワークを確保させる緻密な継承戦略がある。
韓国経済の主軸を成す財閥の事情はこれとずいぶん違う。財閥3世たちは20代後半に父親の会社に入社した後、特別な検証もなしに30代初中盤に役員に昇進し、40歳になる前に社長など最高経営者に駆け上がる。ロッテのように他の会社でまず経営修行をさせるのは例外だ。ロッテのある役員は「シン・ドンビン会長(ロッテ2世)は若い頃に日本の野村証券で8年間経営修行を受け、シン会長の長男(ロッテ3世)はその伝統を受け継ぎ、2年前に野村証券に入社した」と話した。
父親の会社に入社しても実績不振の責任を負わないポストを引き受けたまま最高経営者に昇進する場合が多い。サムスン総帥一族の3世であるイ・ジェヨン副会長も、こうした指摘から自由ではない。イ副会長は33歳で初めて役員昇進を果たし、42歳に社長となり、44歳で副会長になった。それでも彼は財閥家では昇進が遅い方だ。
「多くの財閥3世に企業家精神不足
法を破るのも意に介さない
こんな3世たちを排除しなくては
財閥の未来はない」
チョ・ヤンホ韓進(ハンジン)会長は娘のチョ・ヒョナ副社長の過ちを直接謝罪し、すべての地位から退くようにしたと発表した。しかし、チョ前副社長の復帰を見越した見解も少なくない。総師らが背任、横領、脱税などで法的処罰を受け経営の一線から退いた後、ほとぼりがさめると経営に復帰するのが今まで続いてきた慣習だ。今回の事態を機に、経営の世襲をするにしてもまともな経営ができる人を厳選する必要が提起される理由だ。だが、財界でこれを真正面から話せる人はほとんどいない。5大財閥グループのある建設系列会社の役員は「後継問題はグループの中でも一種の聖域だ。会長の耳障りになればすぐにクビを切られるので誰も話をしようとしない」と打ち明けた。
財閥が国家経済で占める大きな比重を考えれば、財閥3世をめぐる“リスク”をこれ以上放置してはいけない時期に入っている。いくつかの財閥企業で仕事をしたことがある経営者は「大多数の財閥3世は幼い頃から皇太子のような扱いを受けて育ち、会社に入ってからも超高速昇進をするので傍若無人になりやすい」として「3世たちは一般大衆との疎通がほとんどなく、彼らと似た者同士の“彼らだけのリーグ”で生活し、国民が何を考えているのかよく分かっていない」と指摘する。
ヒョソンの3世出身で、皇太子の地位を自ら投げ出してしまったチョ・ヒョンムン元副社長は「かなりの数の財閥3世は創業者や2世に比べて企業家精神が不足しており、企業の金と個人の金の区別ができず、金儲けになるなら法を犯すことも意に介さない。こんな3世を排除しない限り財閥に未来はない」と指摘する。ドイツの数多い家族経営企業は100年以上の歴史を持ち続けているが、変化した経営環境に合わせて合理的な後継システムを取り入れられなかった企業はほとんどが淘汰された。
韓国語原文入力:2014.12.15 21:47