医療装備分野への参入が早まる
太陽電池やLEDの動きは微々
ザッカーバーグなどと相次ぎ会合
モバイルソリューション分野が浮上する可能性
かつて世界電子産業最の強者だったソニーの4代目代表の出井伸之会長は「ソニーが困難を経験したのは過去の成功を忘れられなかったから」として「サムスン電子が今後経験することになる困難は、いかにDラム、LCD、携帯電話など過去の成功を忘れることができるかという問題」と話したことがある。現在の李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長は闘病中の父、李健煕(イ・ゴンヒ)会長に代わり6か月サムスンを率いている。サムスングループでは李副会長が後継者からいつのまにか経営者としての役割を果たしつつあると語られだした。サムスン電子の未来が不透明な状況にあるなか、彼がソニーの前轍を踏むのか、あるいは再び大きく跳躍するのか関心が集まる。画一的な企業文化を持つサムスンで、彼の動きはサムスンの今後の経営方向を占う意味で注目される。
李副会長は18日帰国して19日に開かれる創業者の李秉喆元会長の27周期追悼式を主導する。12日に韓国シリーズを参観した翌日にスイスのバーゼルに向け出国。闘病中の父に代わる家長の役割はもちろん、世界屈指の最高経営者らと会っている。彼の動きはバイオ製薬・医療機器分野で目立つ。バイオ製薬分野では最近、スイスでグローバル製薬会社「ロッシュ」の最高経営者セベリン・シュワンに会ったと伝えられた。これに先立ちグローバル製薬会社「メルク・シャープ&ドーム」(MSD)のケネス・フレーザー会長を昨年に続き4月に再び会い、医療装備では2012年にドイツ本社訪問の時に会った「ジーメンス」のジョー・ケザー会長が先月訪韓した時にも再会している。
これらは2010年にサムスンが明らかにした5大次世代事業のうち最も活発に投資がされている分野だ。李副会長の活発な動きは、サムスンがこれらの分野で投資を増やすという分析を呼ぶ。バイオ製薬業者である「サムスンバイオロジック」は、総帥一家が大株主である第一毛織とグループの核心となるサムスン電子が45.65%ずつ株を保有している。グループ支配の構造上、すでに積極的に投資する可能性が高い分野に選ばれており、李副会長の動きはこれが事実と確認させるものとなる。
サムスン電子が主導する医療機器も世界屈指の医療装備業者であるジーメンスとの協業を試みれば大きなシナジー効果を得ることができる。「サムスンメディスン」をはじめとして米国の心臓疾患診断ソリューション業者である「ネクソス」、移動型シティ(CT)装備メーカーの「ニューロ・ロジカ」を買収し成長の可能性が高く評価される。
HMC投資証券のキム・ヨンウ首席研究委員は「最近ある英国のバイオ会社と協力を強化する次元でサムスンが持分50%を買収した」として「多くのバイオ企業の持分投資を通じてバイオ製薬業界のファウンドリー(Foundry、専門性を備えた委託生産業者)になるだろう」と見通した。また「ジーメンスと特許同盟が結べるなら訴訟に巻き込まれるリスクを減らすことができ、市場に成功裏に参入できる基礎となる」と評価した。
かつて半導体事業が創業者会長時代から始り李健煕現会長時代に大きく成長して“神話”になったように、これら分野が“李在鎔時代”に神話となるのか注目される。
当初、バイオ製薬と医療機器分野はサムスンの5大次世代事業の中で投資規模が少なかった。それぞれ2兆1000億ウォン(1ウォンは約0.1円)、1兆2000億ウォンで、太陽電池(6兆ウォン)、自動車用電池(5兆4000億ウォン)、LED(8兆6000億ウォン)などの半分にも満たなかった。李副会長の動きはサムスンの投資優先順位が変わり、サムスンが一部事業では撤収していることを示している。サムスン関係者は「LEDは事実上撤収し、太陽電池分野も考慮中にある」と話した。その代わりに先月フェイスブック最高経営者のマーク・ザッカーバーグと会合するなど情報通信関係者との出会いが増えたことは、モバイルソリューションに新たに注目していることを示唆する。サムスンはすでに世界的ビッグデータ分析企業であるドイツの「SAP」と戦略的協力を結び「企業用モバイルソリューション」を提供する計画だ。
李副会長の動きをめぐりサムスンでは具体的な言及を避けている。サムスングループ関係者は「李副会長の動きに対して一つひとつ把握することはできない。次世代事業など投資関連によるものでもあり、既存の事業の基盤を固めるためのものでもあるだろう」と話した。ある財界関係者は「事実上後継者の役割から抜け出ている」として「ただし、まだ決断が必要な大きな投資をするのは容易ではないだろう」と評価した。
韓国語原文入力:2014.11.18 22:23