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チャーチルのタバコを奪った巨匠

原文入力:2009-02-24午後07:52:28
‘人物写真の巨匠, カーシュ’ 展
20世紀 ‘非凡な人物たち’ 撮影
普通の人と異なる情熱に注目

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

↑ ウィンストン・チャーチル,1941

ユサーフ カーシュ(1908~2002).
私たちには目新しいが彼の作品を見てみれば「あー! この写真を撮った人だね」と首を縦に振ることになる。最も広く知られている写真はカメラマンを取って食べるよう睨み付けるウィンストン・チャーチル。2次世界大戦が真っ最中だった1941年の作品で、冷徹に戦争を導いたチャーチルの真の姿をよくつかみ出したという評価を受けている。

「彼をカメラの前に立たせるのに成功してしばらく待っていた。ずっとタバコを吸っていたためだ。結局彼に近付いて、丁重に許しを請うて口からタバコを奪い取った。チャーチルは怒りが頭までのぼりつめたような激しい表情になり、まさにその時シャッターを切った。短い寂寞、彼は笑って‘もう一枚撮るように’といった。撮影後、チャーチルは私に握手を求め‘あなたはうなるライオンでも静かにさせて写真を撮れますね’と言った。」

← アルベルト・アインシュタイン1957

カーシュが記録に残ったのはチャーチル写真に絡むエピソードだ。

オードリー・ヘップバーン,ヘレン・ケラー,パブロ・ピカソ,アルベルト・アインシュタイン,ドワイト・アイゼンハワー,ジョージ・バーナード ショー,パブロ・カサルス,ジャクリーン・ケネディ,アーネスト・ヘミングウェイ,フィデル・カストロ,ソフィア・ローレン,テレサ修道女,アレクサンダー・カルダー,アンディ・ウォーホル,アンセル・アダムス,ミーズ・バン・デル・ロヘ,フランク ロイド ライト,ウォルト・ディズニー,クラーク・ゲーブル,エリザベス・テイラー,グレース・ケリー,川端康成,モハメド・アリ,カール・ユング,アレクサンダー・フレミング,ロバート オッペンハイマー…. 彼がカメラの前に立たせた名士らを数え上げようと思えばキリがない。

カーシュが偉大な人物に注目したのは、彼らには凡人とは違った情熱が内包されていると信じたため。彼は彼らの無意識的なジェスチャー,つりあげた眉毛,驚いた反応,ほんの少しの静寂などにかくされた内面の力を捉えた。平常時に見せるマスクが暴かれる瞬間にシャッターを合わせた。

← パブロ・ピカソ1954

彼は故郷から追放されたアルメニア難民の出身だ。カナダ,ケベック シャーブルックに先ず定着し肖像写真家として仕事をした叔父ジョージ ナカーシュがこの14才の少年を呼び入れた。当初法律家を夢見たカーシュは写真館の助手の仕事に関心がなかった。だが学歴もバックもない移民者が短期間に自立するには写真家が適当であることを知り叔父が持つ写真に関する知識をすべて吸収した。もう習うことがなくなった彼はボストンの写真家ジョン・ギャロの助手になり、この時写真術よりさらに重要な被写体を見る方法と記録の習慣を身に着けた。

”君が得ようと思うことが何かを明確に理解しなければならない。そしてそれが目前に迫った時、記録として残しておけ。”

ギャロの教えによりカーシュは人物を撮る度に記録を残すことによって人物と時代的背景が有機的に連結した歴史物語を作ることができた。

カーシュの作品は照明を使うのが特徴。レンブラントとハンス ホルバインなどの作品研究を通じて、人物写真での光の重要性を体得した。彼は一歩進んで人工照明を使って望む雰囲気を思いのままに表わした。当時でもスタジオに人物を座らせておき光がうまく当てられるまで数時間待つのが普通のことだった。彼はカナダ,オタワの小劇場祝祭に招請され演劇人の写真を撮り舞台照明の利点を完全に我が物にした。この時、初めての妻の俳優ソルランズ ゴーチェに出会い祝祭委員長のベスポロ総督とも親交を得た。

← ソフィア・ローレン1981

“総督夫婦をスタジオに2回も呼んだあげく撮った写真がヒットして‘宮廷写真家’になり、これが41年にオタワを訪問したチャーチルの写真を撮ることに繋がった。その後は自然に2次世界大戦が作り出した無数の英雄に会い彼らの内面世界を記録することになった。自身の情熱と資質そしてタイミングの賜物だった。

3月4日から5月8日までソウル芸術の殿堂ハンガラム美術館で彼の作品70点余りを紹介する‘人物写真の巨匠,カーシュ’展は3部から構成される。1部の肖像写真では1930年代から1990年代までカーシュが会った政治家,芸術家,俳優,科学者たちの写真が展示される。2部の‘社会の顔’では彼がフォトジャーナリズム精神で撮った1950年代カナダの社会像を見られる。 3部はカーシュの初期作品。

同時に国内作家イム・ウンシク,ユク・ミョンシム,パク・サンフン,イム・ヨンギュン,キム・ドンウク氏の作品集である‘韓国人物写真5人展’も開かれる。

イム・チョンオブ選任記者blitz@hani.co.kr

← オードリー・ヘップバーン,1956
永遠の少女として伝えられる俳優オードリー・ヘップバーン。カーシュが彼女と初めて会ったのは1956年のハリウッドであった。ヘップバーンを撮影する時、カーシュが「あなたの内面には‘傷つきやすい軟弱さ’が見える」と指摘して、ヘップバーンは2次大戦の時の自身のみじめな経験談を打ち明けたという。オードリー・ヘップバーンの内面を捉えたカーシュの作品が世の中に公開され、ある有名人はヘップバーンぐらい自分も美しく撮れるなら撮影すると我を張ったという。

 

← パブロ カサルス,1954
巨匠パブロ カサルスは他の写真と異なり、空っぽの部屋にチェロを抱いた後ろ姿だけが見える。祖国スペインから追放された芸術家の寂しさを表わすようだ。撮影の数年後、写真がボストン博物館に展示されたが、ある老紳士が毎日彼の写真の前に永らく立っていた。キュレーターが尋ねた。「なぜ常にこの写真の前に立っていらっしゃるのですか?」彼は叱るようにこのように話した。「どうぞお静かに。今私が音楽を聞いていることが見えないのか!」

 

← アーネスト・ ヘミングウェイ,1957
小説<老人と海>を書いたアーネスト・ ヘミングウェイは自殺の4年前の1957年にカーシュと会った。撮影前日の夕方、カーシュはヘミングウェイの事前調査をかねて彼が好んで飲んだラム カクテル‘ダイキリ’を味わうためにヘミングウェイが好んで訪ねるというバー‘ラ プルロリディタ’を現地調査した。翌日午前9時、そこで会ったヘミングウェイが尋ねた。「何を飲むのか?」カーシュは迷わず堂々と「ダイキリ」といった。するとヘミングウェイ曰く「いやカーシュ! こんな早い時間からそれを飲むと?」

https://www.hani.co.kr/arti/culture/music/340623.html

原文: 訳J.S