本文に移動
全体  > 文化

衛星衝突時計は今「運命の日の2.8日前」

登録:2025-12-24 06:41 修正:2025-12-24 07:58
[クァク・ノピルの未来の窓] 
低軌道衛星衝突の危険指標を開発 
回避機動がなければ3日以内に災い 
2018年の121日から7年間で40倍短縮
衛星間の衝突で衛星が爆発する様子を描いた想像図=欧州宇宙機関(ESA)提供//ハンギョレ新聞社

 9日、宇宙からインターネット接続サービスを提供するための米企業「スペースX」の衛星群(コンステレーション)「スターリンク」と中国の衛星が衝突寸前まで行く事態が発生した。同日、中国甘粛省のゴビ砂漠にある酒泉衛星発射センターから打ち上げられた衛星9基のうちの1基が、高度560キロメートルの上空でスターリンク衛星から200メートル離れたところを通り過ぎたのだ。スターリンク衛星はほとんどが530〜550キロメートルの低軌道を回っている。

 低軌道に配置される衛星が急増したことで、衛星間の衝突の危険性がますます高まっている。この7年間で人工衛星の数は4000基から約1万4000基へと3倍になった。

 スペースXが米連邦通信委員会(FCC)に提出した今年の半期報告書によると、スターリンク衛星は今年5月末までの6カ月間、14万4404回の衝突回避制御を行った。1.8分ごとに1回ずつ衝突回避制御が行われたわけだ。バーミンガム大学のヒュー・ルイス教授(宇宙航空学)は「これは以前の6カ月に比べほぼ3倍に増加した数値」だと語った。ルイス教授は「このような傾向が続くと、スターリンク衛星は2028年までに6カ月ごとに約100万回軌道を修正しなければならないだろう」と話した。

 しかし、もし人工衛星に異常が生じて衝突を避けることができる装置が作動しなかった場合、どのような状況が起きるだろうか。

2つの衛星が1キロメートル以内で接近・遭遇するのにかかる時間は、2018年(左)に比べて2025年には大幅に減った//ハンギョレ新聞社

■衝突回避制御、半年ごとに2倍ずつ増加

 米国プリンストン大学が主軸になった国際研究チームは、公開された衛星位置データをもとに計算した結果、わずか2. 8日後に衝突が発生する可能性があることが分かったと、プレプリントサーバーのアーカイブに発表した。

 研究チームは衝突の危険を具体的な数値で表現するために「クラッシュ(CRASH、衝突発生および重大被害)時計」という名の新たな指標を開発した。この時計は衝突回避制御を全くしなかったり、ソフトウェアのエラーなど状況認識に深刻な支障が発生した場合、致命的な衝突が発生するまでかかると予想される時間を示す。人類の核戦争の危険を警告するために作った「世界終末時計」に因んで「衛星終末時計」とも呼べるかもしれない。

 この指標を適用した結果、スペースXの最初のスターリンク衛星が打ち上げられる前の2018年の衛星数を基準にした場合は、すべての衛星が突然起動能力を喪失した場合、衛星衝突は121日に1回の割合で起きると予想された。これは衝突回避制御を行わなかった場合、24時間以内に両衛星が衝突する確率が1%未満であることを意味する。

 ところが、衛星コンステレーションだけでも約1万基が配置された2025年6月基準では、2. 8日に1回の割合で衝突が発生する可能性があるという計算結果が出た。わずか7年間で時間が約40倍短縮された。このような変化は、一つの衝突が連鎖的に他の衝突を起こすケスラー・シンドロームにつながる可能性を高める。衛星の密集度が高いうえに、対応できる時間も足りないためだ。

 研究チームが現在の衛星数を基準にシミュレーションした結果、何らかの理由で衝突回避制御が効かなかった場合、低軌道全体では22秒ごとに、スターリンク衛星密集区域(高度550キロメートル)では11分ごとに、他の衛星と1キロ以内で近接・遭遇することが分かった。1キロは現在、衛星会社が衝突回避制御を実行する距離だ。研究チームは「スターリンク衛星の場合、現在1基当たり年平均41回の衝突回避制御を行っており、衛星コンステレーション全体に拡大してみると、平均1.8分に一回ずつ衝突回避制御が行われている」と述べた。研究チームによると、これまでスターリンクの衝突回避制御の回数は6カ月ごとに2倍ずつ増加してきた。

スターリンク衛星の移動軌跡=米航空宇宙局提供//ハンギョレ新聞社

■災いが現実になる可能性のある2つの要因

 研究チームは衝突時計が指す数値の危険度を、危険、注意、安全の3つの段階に区分した。

 これによると、衛星終末時計の値が3日未満なら注意、1.4日未満なら危険段階に当たる。危険段階は24時間以内に1回以上の衝突が発生する確率が50%である段階だ。研究チームによると、今の数値2.8日は24時間以内に1回以上衝突が発生する確率が30%である注意段階。研究チームは「危険より前の段階を維持するためには時計の値が1.4日を切らないようにしなければならない」と強調した。

 研究チームは、すべての衛星が突然起動能力を止める事件を誘発しうる要因として、強力な太陽暴風や致命的なソフトウェアのエラーを挙げた。2つの状況が発生した場合、衛星航法および通信システムが損傷し、衛星が機動力を失う恐れがある。実際、2024年5月の強い太陽暴風により、以後3日間にわたり全衛星の半分以上が大気抵抗増加とそれによる衝突防止のため、軌道を修正したことがあった。しかし、ルクセンブルクの衛星通信会社「SESサテライト」のエンジニア、ウィニード・バタパリ(Wineed Vattapally)氏は科学専門誌の「ニューサイエンティスト」に「強力な太陽暴風がすべての衛星を同時に不能状態にする可能性は高くない」と語った。同研究に参加していないルイス教授は、「地球軌道の混雑度を示すのに有用な指標だ」と評価した。

*論文情報

An Orbital House of Cards: Frequent Megaconstellation Close Conjunctions.

https://doi.org/10.48550/arXiv.2512.09643

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/technology/1235843.html韓国語原文入力:025-12-22 13:39
訳H.J

関連記事