地球のような惑星の明るさは、地球の大気と表面に到達する日光がどれだけ反射されるのかによるものだ。光が反射される比率をアルベドというが、現在の地球の平均アルベドは0.3(30%)だ。太陽から到達する光の30%は反射し、70%は吸収するという意味だ。地球の表面の60%を覆っている雲が最大の影響を及ぼしている。
惑星全体が厚い雲で覆われている金星はアルベドが0.76で、地球よりはるかに明るい。一方、満月は非常に明るく見えるがアルベドは0.12(12%)で、地球よりもはるかに暗い天体だ。
地球では、雪と氷、雲は主に光を反射し、海と森、都市のアスファルトは主に光を吸収する。したがって、人間の活動によって地球の気温が上昇し、北極の氷と氷河が溶けると、光を多く反射する白色の表面が減少し、地球の明るさは暗くなっていき、地球の気温がさらに上昇する悪循環を招くことになりうる。
実際に地球の軌道を回る衛星から測定したデータによると、地球はますます暗くなっている。2021年に「地球物理学研究書簡」(Geophysical Research Letters)に発表された研究によると、1998~2017年の間に地球のアルベドは0.5%減少した。
科学者たちはしかし、北半球の陸地と南半球の海と氷、そして大気中の雲の分布が絶妙なバランスをとっており、両半球の反射率はほぼ同じだと考えていた。
■地球の気象システムの撹乱要因になる可能性も
ところが、米国航空宇宙局(NASA)のラングレー研究センターを中心とする科学者たちが最近、米国立科学院会報(PNAS)に発表した論文によると、北半球が暗くなる度合いが、南半球よりさらに深刻であることが判明した。北半球がより多くの日光を吸収していることを意味する。
これは、全世界の人口の約90%が住んでいる北半球の地表の気温をさらに高め、地球全体の気象システムのバランスを乱す要因になる可能性がある。
研究チームは2001~2024年、3つの観測衛星「CERES」(雲と地球の放射エネルギーシステム)から収集したデータをもとに、過去24年間に地球の明るさがどのように変化していったのかを調査した。衛星が測定した日光の入射量と放射量のデータを、高解像度分光画像、雪と雲の地図、コンピューター気候モデルと組み合わせた結果、北半球が南半球にくらべより暗くなっている事実が判明した。北半球は南半球に比べ、10年ごとに1平方メートルあたり約0.34ワットの太陽エネルギーを多く吸収していた。
研究チームは、太陽放射エネルギーの平均吸収量が1平方メートルあたり240~243ワットである点を考慮すると、大きな違いではないとも考えられるが、統計的には有意な値だと明言した。
■何が反射率の不均衡を引き起こしたのか
研究チームは原因として三つを推定した。一つ目は、反射率が高い氷が溶け、光を吸収する地表と海がより多く露出したというものだ。これは、北半球の気温をさらに高める要因でもある。
二つ目は、気温が上昇したことで、大気中の水蒸気が増加したことだ。雲を形成する氷の微粒子は光を反射するが、気体中の水蒸気は光を吸収する。
三つ目は、北半球で大気中の微粒子であるエアロゾルの量が減少したことだ。これは、大気中で反射されずに地表まで到達する日光が増加したということを意味する。21世紀に入ると、米国と中国を含む世界各国が汚染物質の排出規制を強化し、エアロゾルの量が減った影響だ。一方、南半球では火山活動やオーストラリアでの山火事などによって、過去何年間にわたり、エアロゾルの量が増加した。
両半球の反射率のバランスが崩れると、地球全体の空気の流れが変わる。エネルギー量の高い側、すなわち、日光を多く吸収する側(北半球)から、そうではない側(南半球)に物質が移動し、海流と降雨前線の動きに変化が起きることになる。研究チームは現時点では相関関係を確認したわけではないが、北半球の熱帯地域の降水量が南半球に比べて増加していると明らかにした。
研究チームは「観測期間が短いため、確実な結論を出すのは難しい」とし、結論を出すためには、より長期的な観測による証拠が必要だと付け加えた。
*論文情報
Emerging hemispheric asymmetry of Earth’s radiation.
https://doi.org/10.1073/pnas.2511595122