「コンサートを一番やりたい。早くアルバムを作って舞台に復帰できるようにする」
10日に除隊した防弾少年団(BTS)のリーダーのRMは、江原道春川市(チュンチョンシ)の軍部隊近くのサッカー場でファンたちに会い、このように述べた。同時に除隊したVは「1日も早くARMY(BTSのファンクラブ名)のもとに駆けつけたい。もう少し待ってもらえれば、本当に素晴らしいステージに戻ってくる」と述べた。二人の言葉どおり、BTSの全メンバーがそろう完全体の復帰が秒読み段階に入った。
11日にはジミンとジョングクが除隊し、21日にはSUGAが招集解除となる。2022年12月13日の最年長のジンの入隊から2年7カ月ぶりに、7人メンバーの完全体として復帰する。
この日、春川の軍部隊の近くはもちろん、ソウル市龍山(ヨンサン)にある所属会社HYBEの社屋前まで、除隊を祝うBTSファンでにぎわった。HYBEは7人全員の除隊を控えた9日、社屋の外壁に「WE ARE BACK」(私たちは帰ってきた)というメッセージを掲示し、復帰を祝った。
復帰を記念するオフラインイベントも開催される。13~14日に京畿道高陽市(コヤンシ)のKINTEX(キンテックス)第2展示場で行われる「2025 BTS FESTA」では、メンバーの音声メッセージを聞ける「ボイス・ゾーン」、受賞した主なトロフィーを展示する「トロフィー・ゾーン」などを設け、BTSファンが楽しめるようにする予定だ。この期間中に近隣の高陽総合運動場では、J-HOPEのソロ・ワールドツアーのアンコールコンサートも開かれる。この公演に除隊したメンバーが参加するかどうかも関心の的だ。
「軍白期」(メンバーが兵役で活動休止となる期間)でもBTSの存在感は消えなかった。RMは入隊直前にアルバム「Indigo」と「Right Place, Wrong Person」を相次いでリリースし、高評価を得た。SUGAは社会服務要員の服務直前まで「August D」というアーティスト名でアルバムを出し、ワールドツアーを行った。ジミンとジョングクもそれぞれ入隊前にリリースした「Like Crazy」と「Seven」が世界的なヒットを記録するなど、空白期間を感じさせない人気を博した。昨年、最初に除隊したジンは復帰後すぐにソロアルバム「Happy」と「Echo」を相次いで発表し、活発な活動を続けている。J-HOPEも同様に、除隊直後の昨年10月にソロシングルを発表し、ワールドツアーを開催した。
空白期の活動の様子をみると、完全体復帰後の活動の方向性をある程度推測できる。いわゆる「別々に、かつ一緒に」で、個々のメンバーがソロ活動にまい進し、グループのアルバム発表とコンサートの際には一つにまとまる方式だ。各メンバーが世界トップレベルの人気を維持し、7月に全員でコンサートを行うBLACKPINKが先例を示している。
カギとなるのは、どれくらい早く音楽とコンサートで復帰するかだ。所属会社のビッグヒット・ミュージックは、現時点では公に活動計画を発表していない。しかし、音楽業界では、今年中にどんな形であれ、音楽とコンサートを通じてファンに披露するとみている。ある音楽業界関係者は「今年中にアルバムを発表するのは難しいと思われるが、シングル発表程度は十分に可能だ」として、「完全体復帰を伝えるファンミーティングのようなイベント性のある公演なども開くのではないか」と述べた。
グループの今後の音楽的な方向性にも関心が集まっている。ビルボードのメイン・シングルチャート「HOT 100」1位や、スタジアム級のワールドツアー、各種の受賞など、アイドルスターとして成し遂げられることはすべて達成したBTSだが、一つ課題が残っている。それはグラミー賞だ。今後リリースするBTSのアルバムは、グラミー賞を念頭に置いて制作される可能性が高いという話が出ている。BTSは2021年と2022年、「Dynamite」と「Butter」で連続してグラミー賞の「最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞」の候補になったが、受賞は逃した。
大衆音楽評論家のイム・ヒユン氏は「グループの曲は『Dynamite』や『Butter』のような世界的ヒットを飛ばした後期のスタイルの音楽に、ソロ曲はメンバーのキャラクターと音楽性を生かす方向性になりそうだ」としたうえで、「グラミー賞に最も近づいたK-POPアーティストであるため、HYBEが構築したネットワークを活用して、完成度の高い音楽を追求すると思われる」と予想した。
ただし、音楽業界の一部では、SUGAの飲酒運転の前科に対する批判的な世論が完全におさまっていないことと、BTSの音楽的な方向性に決定的な影響を与えたHYBEのパン・シヒョク取締役会議長が、株式上場関連の不正取引の疑いで金融監督院と警察の捜査対象になっている点が、円滑な復帰の障害になる可能性があるという懸念も出ている。