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「維新は偉大な始まり」朴正煕独裁を美化した真実和解委員長=韓国

登録:2022-12-16 06:37 修正:2022-12-19 10:57
過去に5・16軍事クーデターと維新体制を美化する発言 
歪曲された歴史認識、被害者救済に影響及ぼす恐れも
第2期真実・和解のための過去事整理委員会のキム・グァンドン新委員長=真実和解委提供

 真実・和解のための過去事整理委員会(真実和解委)のキム・グァンドン新委員長が、公の場で「維新は偉大な勝利の始まり」と発言するなど、5・16軍事クーデターおよび維新独裁体制を美化する発言をしたことが明らかになった。同委員会のトップの歪曲された歴史認識が、独裁体制による被害事件などを調査してきた真実和解委の被害者救済などにも影響を及ぼしかねないという懸念の声が高まっている。

 キム委員長が2019年に朴正煕(パク・チョンヒ)大統領記念財団の「10月維新47周年記念討論会」に発表者として出席した当時の動画を見ると、彼は「1971年(1972年を間違えたものと見られる)に展開された10月維新は、当時の我が民族と大韓民国が迎えた国家存続の危機への対応であると共に挑戦であり、その対応と挑戦における偉大な勝利の始まりだった」とし、「10月維新は私たちの近現代史の偉大な転換であり、成功の基盤だった」と述べている。

 キム委員長にとって5・16軍事クーデターは「民族主義革命」だった。キム委員長は2015年9月、ユーチューブチャンネル「チョン・ギュジェTV」の「大韓民国の民主主義の話」というタイトルの講演で、「5・16は民族主義を代弁したもの」だとして、このように主張した。また「4・19革命と5・16は連続的な性格を持っており、民主主義に基づいた民族主義革命だったことは、この30~40年間にわたる韓国の発展を見れば、誰でも分かるだろう。大韓民国は4・19と5・16という連続革命で新しい繁栄国家体制を作った」と述べた。 キム委員長は2017年の「朴正煕大統領生誕100周年記念講演」でも、「5・16韓国軍事革命は、腐敗と貧困に苦しむ多くの発展途上国の国民の道しるべであるとともに、モデルになっており、実際に朴正煕時代以後20年の歴史がそれを裏付けている」と主張した。

 キム委員長はこのような歴史認識のもと、李承晩(イ・スンマン)元大統領と朴正煕元大統領が独裁者ではないという主張も展開した。キム委員長は2017年、朴正煕大統領生誕100周年記念講演で「大韓民国は近代化の遅れや共産主義との戦いの中で、自由民主革命と近代産業革命を成し遂げ、その延長線上で継承され発展していったが、むしろ1987年(の民主抗争)を作った勢力が自ら民主化勢力だと主張し、1948年(李承晩)と1961年(朴正煕)を独裁だと言い始めた。大韓民国の歴史が継承されず断絶した理由は、私たちが陰に陽にこれを受け入れた結果だ」と述べた。

 このようなキム委員長の歪曲された歴史認識は、過去の人権侵害事件の被害者の救済などにも支障をきたす恐れがあると懸念されている。第1期真実和解委(2005~2010年)が調査した事件のうち、保導連盟虐殺事件、釜馬(釜山と馬山)民主抗争、人民革命党事件など、多くが李承晩政権と朴正煕政権時代に起きた事件だ。2020年に発足した第2期真実和解委でも、朴正煕政権時代に発生した事件に対する真実究明は続けられた。1960年代初め、「社会浄化政策」の一つとして政府が警察と軍隊を動員し、瑞山(ソサン)埋立地一帯で孤児や浮浪者など1700人余りを不法逮捕した後、強制収容した「瑞山開拓団事件」が代表的な事例だ。

 キム委員長は朝鮮戦争当時の代表的な民間人虐殺被害事件である「老斤里(ノグンリ)事件」についても、2003年の著書『反米運動が韓国社会に及ぼす影響』で、「戦争中に後退していた米軍の誤認射撃による忠清北道老斤里の犠牲」だとし、「まるで米国が良民を殺害する目的で組織的に行ったかのように『集団虐殺』という表現を使い、社会全体が怒り震えたことなどは、まさに韓国社会で反米化がどこまで進んだかを示す指標といえる」と述べた。 真実和解委はキム委員長就任以前の先月、朝鮮戦争前後の犠牲者全員を賠償と補償の対象とする法案を作るべきだと国会と政府に勧告した。

 本紙は同日、キム委員長の立場を聞くため、電話とショートメールで数回連絡を試みたが、応答がなかった。

チャン・ナレ、イ・ウヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1071762.html韓国語原文入: 2022-12-15 20:25
訳H.J

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