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サッカー場の100倍、年齢2500歳…世界最大「怪物キノコ」の驚くべき実体

登録:2022-06-03 10:10 修正:2022-06-03 11:58
米ミシガン州の森のワタゲナラタケの菌糸体、重さ推定400トン 
複製を重ねても突然変異が極めて稀…がん抑制に応用できる可能性
群がって生えているワタゲナラタケ。地上のキノコはこぢんまりとしているが、地下の菌糸体は巨大な個体だ=ダン・マルタ、ウィキメディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 世界的科学ジャーナル「ネイチャー」は1992年4月2日、「世界で最も大きく、最も古い生物が発見された」というタイトルの論文を載せた。メディアを通じて大きな話題となったその主人公は、ワタゲナラタケだ。ところが30年近く経った後、発見者が新しい分析技法で再び測定した結果、そのキノコは当時測定したものよりはるかに大きく、年齢も高いことが分かった。

 ワタゲナラタケは韓国をはじめアジア、欧州、北アメリカに広く分布する食用キノコだ。高さ5~8センチ、直径4~6センチの黄色い笠が付いた平凡なキノコだが、キノコの笠と柄は全体の一部に過ぎない。地中にはもっと大きな菌糸体が植物の根のように伸びている。米ミシガン州クリスタルヒルにあるワタゲナラタケの菌糸体は、とりわけ大きい。

ワタゲナラタケが属するアルミラリア属のキノコの菌糸体の様子。死んだ木や弱い木を探して伸びていく=エリック・スタイナー、ウィキメディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 カナダのトロント大学の生物学者ジェームズ・アンダーソン氏などカナダと米国の研究者たちは、科学ジャーナル「王立学会報B」の最近号に掲載された論文で、新たに測定したこのキノコの菌糸体が75ヘクタール(サッカー場の面積の100倍)にわたる森の地下にはびこっており、重さは少なくとも400トン、年齢は2500歳と推定されると明らかにした。研究者たちが1980年代末にこのキノコを初めて測定した記録は、面積37ヘクタール、重さ100トン、年齢1500歳だった。

 このキノコは「怪物キノコ」と呼ばれ有名になった。クリスタルヒルは観光名所になり、毎年8月にキノコ祭りが開かれる。この30年間、このキノコはその場で生き続け、さらに大きくなり年齢を重ねた自身の姿を見せた。

 今回の研究で、ミシガン州のワタゲナラタケは地球上で最も大きな生命体の一つとして記録されることになった。もちろん、このキノコは複製方式で自分の体を大きくしたため、オオクジラなど有性生殖をする動物とそのまま比較することには議論がある。複製による地上最大の生物は、米国ユタ州のヤマナラシの森であり、重さが6000トンに達する。

ワタゲナラタケの地上部位である笠と柄の部分=ダン・マルタ、ウィキメディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 酵母、カビ、キノコなどからなる菌類は、動物や植物とは異なる別途の生物群を成し、光合成をせず酵素を分泌して有機物を分解するなど、植物よりは動物に近い。

 温帯地域に主に分布するワタゲナラタケの菌糸も、地中で死んだ木を分解し、または力の弱い木の根に寄生して殺す形で勢力を広げる。研究者は「このキノコは古い森なら他のところでも巨大に育ちうる」として「極少数だけが大きく育ち、残りは早く死滅する繁殖戦略を取っているとみられる」と論文で説明した。

ブナに生えたワタゲナラタケ。菌糸体が数百~数千年にわたり遺伝子を複製して巨大な体に育つが、体細胞の突然変異はきわめて少ないことが明らかになった=ポール・ダービーシャー、ウィキメディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 また、今回の研究では「怪物キノコ」の遺伝子を初めて分析し、巨大な体で長い期間生きながらも体細胞の突然変異がきわめて少ないという事実を明らかにした。研究者はその理由として、このキノコの菌糸体の先端が損傷した遺伝子塩基配列を復旧し、生息地である森を透過し突然変異を誘発する紫外線の強度が弱いためだと説明した。

 このように遺伝子の突然変異を抑制する優れた能力は、がんを抑制するのに活用されるかもしれない。研究者は「このキノコが複製で進化する様子は、人の体内でがんが広がっていくのに似ている」と明らかにした。しかし、がんが極端な遺伝子の不安定性によって、複製の過程でDNAの損傷が積み重なることで進むとしたら、このキノコでは同じ過程が数百、数千年にわたり、遺伝子が非常に安定した状態で起きる。研究者は「このキノコの遺伝子の安定性とそれを可能にする過程が分かれば、がんを抑制するのに有用に使われるだろう」と論文で述べた。

■記事が引用した論文の原文情報:

Anderson JB, Bruhn JN,

Kasimer D, Wang H, Rodrigue N, Smith ML. 2018 Clonal evolution and genome stability in a 2500-year-old fungal individual. Proc. R. Soc. B 285: 20182233. http://dx.doi.org/10.1098/rspb.2018.2233

チョ・ホンソプ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/animalpeople/ecology_evolution/876693.html韓国語原文入力:2019-01-02 15:17
訳C.M

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