本文に移動
全体  > 文化

「鉄の王国」伽耶古墳群の世界遺産登録、最後の峠を越えるか

登録:2022-04-04 08:43 修正:2022-04-04 09:49
世界遺産委員会、6月の会議で決定の予定 
古墳群780カ所のうち主要7カ所を推進 
一部団体「植民史観で歴史歪曲」 
学術的な欠陥を批判して保留要求 
専門家「任那日本府説とは無関係」
世界遺産登録が推進されている伽耶古墳群の位置(1)金海大成洞古墳群(2)咸安末伊山古墳群(3)陜川玉田古墳群(4)高霊池山洞古墳群(5)固城松鶴洞古墳群(6)昌寧校洞・松峴洞古墳群(7)南原酉谷里・斗洛里古墳群=慶尚南道提供//ハンギョレ新聞社

 「鉄の王国」伽耶の優れた文化水準を証明する伽耶古墳群が、価値を認められ、世界遺産に登録されるだろうか。

 世界遺産委員会は6月19~30日、ロシアのカザンで会議を開き、「伽耶古墳群」(Gaya Tumuli)の世界遺産の登録の可否を決める。これに先立ち、伽耶文化圏である慶尚南道・慶尚北道・全羅北道などは、2013年から同意を集め、伽耶古墳群のユネスコ世界遺産の登録を推進している。この9年間、ユネスコ世界遺産の暫定リストへの登録、世界遺産登録申請の対象選定、登録申込書の完成度の検討などの手続きをすべて通過し、世界遺産委員会の最終決定だけを残している。

■ 慶尚道・全羅道で合わせて780カ所の伽耶古墳群

 紀元前1世紀の朝鮮半島南部地方で生まれ、562年の大伽耶滅亡に至るまでの600年あまりにわたり繁栄した伽耶が残した古墳は、数十万基(古墳群基準で780カ所)に達する。このうち、世界遺産の登録を推進する連続遺産(地理的に接近していないが、関連性が強い遺産)は、伽耶の開始と王墓の出現を示す金海大成洞(キムヘ・テソンドン)古墳群▽殉葬制度を示す咸安末伊山(ハマン・マリサン)古墳群▽日本と中国はもちろん、西域との交流を証明する陜川玉田(ハプチョン・オクジョン)古墳群▽伽耶古墳群のなかで最大規模の高霊池山洞(コリョン・チサンドン)古墳群▽一つの封墳に多くの墓が次々と造成された固城松鶴洞(コソン・ソンハクトン)古墳群▽派手な装飾馬具と金銅冠などが出土した昌寧校洞・松峴洞(チャンニョン・キョドン・ソンヒョンドン)古墳群▽中国系と百済系の遺物が出土した南原酉谷里・斗洛里(ナムォン・ユゴクリ・トゥラクリ)古墳群など7カ所。行政区域別では、慶尚南道5カ所、慶尚北道1カ所、全羅北道1カ所となる。

 当初、2013年までは、慶尚南道と慶尚北道がそれぞれ世界遺産登録を推進していた。しかし、文化財庁が類似の性格の遺産を一つにまとめて登録するよう勧告したことにより、代表的な伽耶古墳群35カ所を専門家が検討し、7カ所を候補地に選定した。これら7カ所は、伽耶の各政治体の中心地に位置し、伽耶文明を代表的に証明し、伽耶文明の社会構造を反映した祭祀と副葬遺物を備えているという評価を得ている。

■ 干潟に続く韓国16番目の世界遺産になるだろうか

 「ユネスコ遺産」は、世界遺産・無形文化遺産・世界記録遺産など3種類に分けられる。世界遺産は合わせて10個の基準があるが、伽耶古墳群は、3番目の基準である「現存するかすでに消滅した文化的伝統や文明の卓越性、または少なくとも無二の証拠」に該当する。伽耶古墳群が登録されれば、海印寺大蔵経板殿、宗廟、石窟庵・仏国寺などに続く韓国16番目の世界遺産になる。

 7つの古墳群が位置する3つの広域団体(慶尚南道・慶尚北道・全羅北道)と7つの地方自治体が共同で設立した「伽耶古墳群世界遺産登録推進団」は、「伽耶古墳群が世界遺産に登録されるということは、伽耶史の世界史的な認証を通じて、伽耶が高句麗・百済・新羅に対応する歴史的な実体として認められるようになったということを意味する。ユネスコ世界遺産という世界的な地位の獲得を通じて、観光需要の増大効果も期待できる」と明らかにした。

 韓国政府は2017年、「伽耶文化圏調査研究および整備」を国政課題に加え、伽耶古墳群の世界遺産登録を支援している。2020年、超広域協力伽耶文化圏助成計画も用意した。この作業は、伽耶古墳群の発掘・整備を皮切りに、伽耶史の究明・確立▽伽耶遺産の合理的保存・管理▽伽耶歴史資源の活用と価値創出などに拡大している。2020年10月には、金海大成洞76号墳から出土のネックレス、金海良洞里(キムヘ・ヤンドンリ)270号墳から出土の水晶のネックレス、金海良洞里322号墳から出土のネックレスが宝物(重要文化財)に指定された。

■ 多羅国・己汶国などについて植民史観とする議論も

 伽耶古墳群の世界遺産登録は、順調なことだけではない。

 2月18日、「植民史観で歪曲された伽耶史を正す全国連帯」が、記者会見を開き、伽耶古墳群の世界遺産登録推進の保留と、「伽耶古墳群研究叢書」の廃棄を文化財庁に要求した。これらの人々は記者会見で、「伽耶古墳群の登録推進の過程において、学術的にも歴史的にも絶対に容認できないとんでもない欠陥があることを発見した。『伽耶古墳群世界遺産登録申込書』は、日本帝国主義が作ったいわゆる植民史観で汚染されており、伽耶の実情を明らかにするどころか、広く知られている伽耶史自体さえ歪曲している」と主張した。「伽耶史を正す慶尚南道連帯」共同代表のキム・ヨンジン慶尚南道議員(共に民主党)は先月17日、慶尚南道議会の本会議で、「伽耶古墳群の世界遺産登録推進の過程で、日本の極右と植民史学家が主張する任那日本府説が召喚された」とし、「任那日本府説を伴ったまま登録することになれば、倭(日本)が朝鮮半島南部を支配したという任那日本府説を私たち自らが認めることになり、これは、古代から韓国が日本の植民地だったということを認める格好」だと述べた。

 これらの人々は、特に「多羅国」と「己汶国」という伽耶の国の名称を問題視している。世界遺産の登録申込書では、慶南陜川郡の玉田古墳群は「多羅国」、全羅北道南原市の酉谷里・斗洛里古墳群は「己汶国」の古墳に分類されている。この多羅国や己汶国などは、韓国の歴史書の『三国遺事』には書かれておらず、『日本書紀』や『梁職貢図』などの日本と中国の歴史書や資料に出てくる名称だ。

 議論は、伽耶に関する文献記録と、最近発掘と確認がなされた伽耶の実体が反映されている点があることによる。これまで当然視されてきた伽耶についての一般的な常識は、「首露王ら6兄弟が建国した、金官・安羅・大・小・星山・古寧などの6つの小国」だ。しかし、2018年に「伽耶古墳群世界遺産登録推進団」が発行した『伽耶古墳群研究叢書』(研究叢書)はこれについて、「『三国遺事』の記録のために作り出された虚構にすぎず、史実とは完全にかけ離れている」と明らかにしている。伽耶史研究関連の20の機関の専門家25人が共同執筆した研究叢書は、「『三国志』『三国史記』『日本書紀』などを総合的と分析すると、伽耶は12以上の小国で構成されていた」と結論づけた。そのため、世界遺産登録を推進する古墳群7カ所は、金官伽耶(金海大成洞古墳群)、安羅伽耶(咸安末伊山古墳群)、非火伽耶(昌寧校洞·松峴洞古墳群)、小伽耶(固城松鶴洞古墳群)、多羅国(陜川玉田古墳群)、大伽耶(高霊池山洞古墳群)、己汶国(南原酉谷里・斗洛里古墳群)などに整理された。また、韓国と日本の両国の歴史学界の長きにわたる論争の種である「任那日本府」については、「倭王権が伽耶に派遣した外交使節」と定義した。

 慶尚南道・伽耶文化遺産と学芸研究員のキム・スファン氏は、「『三国遺事』 などの韓国の歴史書に、星山伽耶と古寧伽耶という名称が出ているが、この地域の古墳群を発掘した結果、伽耶ではなく新羅の古墳だと確認された」とし、「反対に、韓国の歴史書には、陜川や全羅北道の南原地域に伽耶の国の名称は出ていないが、その地域の古墳群を発掘した結果、伽耶の古墳であることが明確に確認された」と述べた。さらに「そのため、専門家らは、発掘結果の分析と韓国・中国・日本の古文書の比較検討などを経て、『多羅国』と『己汶国』の名称を受け入れたのだ。これは、倭が伽耶を支配したという、いわゆる任那日本府説とは何の関係もない」と説明した。

チェ・サンウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/area/yeongnam/1037351.html韓国語原文入力:2022-04-04 02:32
訳M.S

関連記事