複数の拠点を持ち生活を送るデュアルライフ族は、人口減少に悩む地方自治体にとっても主な関心の対象となりつつある。2つの都市を行き来して生活する人々は、首都圏と非首都圏との「人口両極化」問題における伝統的アプローチだった「大都市対地方」という対立概念から抜け出すヒントを与える。
日本のケースをみると、地域活性化のために、定住人口に限らずその地域に関心と好感を持ち、持続的な関係を持つ人々に注目している。学術誌「地域社会学」(21号)に昨年掲載された論文「日本の『関係人口』概念の登場と意味、そして批判的検討」(リュ・ヨンジン)によると、日本では数年前から、地域に活力を吹き込むためには、必ずしも定住人口を増やす必要はないという発想が登場している。2017年に日本の山梨県は「やまなしリンケージプロジェクト」を発表した。山梨県を支持し、経済的貢献度が高く、地域に愛着と帰属意識を持つ人の人口を「リンケージ(linkage、関係)人口」と定義し、このうち地域居住者、山梨県出身の帰郷者、観光客などを6万人ほど増加させるという目標を設定した。リンケージ人口が地域内に滞在した時間と消費額が、その地域に住民登録している人口の何人分の経済的効果を生むのかを研究し、それを政策に活かす可能性を示してもいる。
同じ頃、明治大学の小田切徳美教授は「関係人口」の概念を理論的に確立した。小田切教授は、当初はある地域に全く関心がなかった人たちがその地域に住居地を移す場合、最終的な移住までには様々な段階があると分析した。同氏は、地域特産品の購入、地域でのボランティア活動や寄付、頻繁な訪問、滞在型観光、両地域での2拠点生活などの様々なやり方で地域と交流する人々は、すべて地域活性化に役立つと考える。同氏の理論は、自治体が定住人口を増やすために政策対象をどのように細分化すべきか、様々な人々を受け入れるためにはどのような力量を養うべきかを示しているというところに意義があると評価されている。
日本の総務省は小田切教授を座長とする特別委員会を設置し、2018年から政府の政策に関係人口概念を積極的に導入しはじめた。総務省が推進する「関係人口創出・拡大事業」により、2018年には30自治体、2019年には44自治体が関係人口関連の人口流入事業を拡大している。また総務省は関係人口ポータルサイトを開設するとともに、地域から関係人口創出事業を募集し、支援している。北九州市立大学地域戦略研究所のリュ・ヨンジン特任准教授は上記の論文で「住民登録人口を増やすという量的な意味での定住人口は、発展が続くことを仮定する成長時代の概念に近い。低成長の時代であり、生活の質とのバランスを取り戻す時代においては、人口概念は多角化されなければならない」と強調した。
最近は韓国でも、特定地域に長期間滞在したり定期的に往来したりしている人、地域商品の持続的な購入者、心理的支持者などのすべての人を、その地域に「関係のある人口」と見て、それを増やすことに注目すべきだとの提案がなされている。
5月に発表された韓国地方行政研究院の政策イシューレポート「関係人口を活用した人口流入策」によると、関係人口を積極的に考慮した国土バランス発展政策のパラダイム転換が必要だとの声があがっている。同院のバランス発展共生センターのイ・ソヨン所長は「多くの人は、地方移住を決める前にまず関心を持ってしばらく滞在し、最終的に引っ越すかどうかを決める」とし「実現の難しい住民登録人口の増加ばかりを望むのではなく、観光客、流動人口、地域商品を購買する消費者などを含めて、地域活性化政策の対象を幅広く見るべきだ」と述べた。