本文に移動

[コラム]“歓迎されない存在”、移民の「潜在力」

登録:2021-07-17 03:07 修正:2021-07-17 09:33
シン・ギソプ|国際ニュースチーム先任記者

 国際部の記者として残念に思うことの一つは、第三世界に関する記事は飢えや戦争のような不幸な事態が発生した時にのみ大きく扱われるということだ。このような現象は韓国のメディアだけでなく、全世界のニュースの流れを主導する国際的なニュース通信社や英語圏の巨大メディアも、程度の差があるだけで似たり寄ったりだ。

 このため、多くの読者はアフリカと言えば貧困と飢えを、中東と言えば宗教対立とテロを真っ先に思い浮かべがちだ。普通の読者が第三世界にも大都市の洗練された暮らしや流行、先端情報技術があるということを同時に思い浮かべることを望むのには、どうしても無理がある。

 それでも、第三世界が直面する困難を浮き彫りにする記事は肯定的な側面もある。米国、欧州、アジアの富裕国に比べて相対的に困難な状況にある低開発国に対する支援と連帯の必要性を強調する効果がそれだ。

 特にコロナ禍は第三世界の困難が決して「他人事」ではないことをはっきりと教えてくれた。今の全世界の「デルタ株大流行」は、第三世界の代表格と言えるインドが4~5月に経験した深刻なコロナ大流行と決して無関係ではない。富裕国が第三世界を無視し続ければ、最近南米ペルーで広がっている「ラムダ株」が「第2のデルタ株」にならないという保障もない。今や世界は、外国の出来事が決して他人事ではないほど相互につながっているからだ。

 「第三世界」という言葉よりもはるかに否定的なイメージを与える言葉が「移民」ではないかと思う。移民は、やっかいだったり危険だったり被害ばかりを与えたりする存在として扱われる。このようなイメージは、移民にたまにしか接しない人々の個人的な経験を通じてさらに強化される。食堂や地下鉄などで少しの間顔を合わせる移民に対して、なじみがなくやっかいだと感じたりする人は多い。

 移民への反感やこれを巡る対立が非常に激しい欧州では先日、このような印象を変える助けとなりそうな統計が発表された。欧州連合(EU)統計局が7日に発表した資料で、EU内の移民の学歴は、先住民と比べてさほど低いわけではないということを明らかにしたのだ。

 2020年現在、EU加盟国出身で他の加盟国に住む25~54歳の成人に占める大卒者の割合は全体の35.6%に達した。自国に住み続けている先住民の大卒者の割合(36.7%)との差はわずか1.1ポイントだ。EU内の他国に定着している移民の多くが相対的に貧しい国の出身で、農業などの肉体労働に従事している人が多いという先入観を払拭してくれる統計だ。多くの移民は「学がなく貧しいため富裕国に来た下層民」ではないわけだ。この点は、欧州外部からEUに移住した人も似たようなものだった。彼らに占める大卒者も29.6%に達したのだ。彼らの多くが貧しい第三世界出身であるということとは似つかわしくないような数値だ。

 韓国人の過去の移民の様相も実際にはこれと似ていた。1960年代以降に米国などへ移住した人々の多くは、高い学歴を持つ中産層だった。「ロサンゼルスの韓人社会ではソウルの有名大学出身者がチームに分かれて競争している」という真偽不明の話が飛び交っていたこともあった。

 移民の学歴は、彼らが定着した社会に貢献する道を共に探るうえで、極めて重要な要素だ。EU統計局はこの統計を紹介しつつ「移民が現地社会との統合を成すうえで非常に重要な側面は学力水準」と指摘している。高学歴の移民は現地の言語をより早く習得する可能性が高く、言葉の問題さえ解決すれば有能な人材に生まれ変わりうるからだ。少子化社会において移民を偏見なく見つめるべき非常に現実的な理由がここにある。

//ハンギョレ新聞社

シン・ギソプ|国際ニュースチーム先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1003689.html韓国語原文入力:2021-07-15 16:13
訳D.K

関連記事