日帝強占期(日本による植民地時代)の強制動員に対する日本戦犯企業の賠償責任を認めた韓国最高裁の判決が再び出た。2018年の最高裁全員合議体の判例にともなう当然の判決だ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が一方的に推し進める「第三者弁済」が司法府の判断に真っ向から反することを再確認したわけだ。60件余りに達する他の強制動員訴訟の勝訴の可能性も高まり、第三者弁済案にも赤信号が灯った。日本の戦犯企業の賠償金を肩代わりするために作った基金が償金額総額にはるかに及ばないためだ。尹大統領が司法府の判断を無視し、対策もなく第三者弁済を推し進めたのが原因だ。
最高裁2部(主審:イ・ドンウォン最高裁判事)は、日帝強制動員被害者の遺族が日本製鉄(旧新日鐵住金)と三菱重工を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、原告勝訴判決を下した原審を確定した。日帝の植民支配と強制動員の不法性を前提に日本企業の賠償責任を認めた2018年の最高裁全員合議体判決の趣旨にそのまま従ったものだ。特に今回の判決が消滅時効の起算点を最高裁の判決が下された2018年だと判断したのは、他の強制動員訴訟にも大きな影響を及ぼすものとみられる。残りの60件余りの訴訟は全て2018年以降に提訴されたものだ。三菱重工などは、キム・ヌンファン元最高裁判事が主審を務め初めて賠償責任を認めた2012年の判決を基点にし、3年の消滅時効がすでに完成したと主張したが、受け入れられなかった。最高裁判事全員が参加した全員合議体の判決が下された後になって初めて被害者が損害賠償を請求できる状態になった、という判断だ。
韓国政府が第三者弁済のために作った日帝強制動員被害者支援財団の基金は、韓国企業のポスコなどが出した40億ウォン(約4億3700万円)に過ぎない。残った訴訟の原告は110人以上で、賠償総額は少なくとも150億ウォン(約16億4千万円)を越えるものと推算される。政府は第三者弁済案を発表した当時、企業などの参加により民間基金を作る方針を掲げたが、日本の経済協力資金の恩恵を受けたポスコの他にはいまだ参加した企業がない。財団の基金を増やさなければ、第三者弁済さえできなくなる荒唐無稽なことが起きかねない。日本に「大きく」譲歩したものの、見返りとして何も得られなかった状況で、韓国企業だけに負担を負わせ続けるのか。政府が賠償金の受領を拒否した被害者に「強制供託」までしようとして、裁判所にブレーキをかけられたこともあった。尹政権は法理的にすでに破綻しただけでなく、実現可能性も低くなった第三者弁済にこれ以上固執してはならない。