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[寄稿]西側企業らがロシアを離れない理由

登録:2023-10-19 06:31 修正:2023-10-19 08:28
11日(現地時間)、ロシアが集中攻勢をかけているウクライナ東部ドネツク州アウディーウカ方面から煙が立ち上っている。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は12日、アウディーウカ一帯で、ロシアの攻撃を10回以上撃退したと述べた/聯合ニュース

 イスラエルとハマスの戦争の惨状が連日ニュースのトップを飾っているが、この事案はロシアとも深い関係がある。戦争による西側の視線分散と原油価格の上昇はロシアのウラジーミル・プーチン大統領にとって追い風となり、それだけウクライナは苦戦を強いられることになるだろう。そうでなくても、西側の経済制裁の刃は鈍くなっており、大方の予想に反してロシアを離れた西側企業はそれほど多くない。民間人死亡者だけで1万人を超えたロシアとウクライナ戦争の戦況にも神経を尖らせなければならない理由だ。

 ウクライナのキーウ経済大学が集計するデータベースは、ロシアに投資した海外企業を、事業維持▽新規投資の留保、事業縮小▽事業中断、撤退▽撤退完了の4つに分けて、再編の現況を把握している。これによると、今年10月1日基準で3533社の海外企業のうち、事業維持が41.5%で最も多く、撤退完了は8.1%にとどまっている。なぜだろうか。直接的な制裁対象でない限りは莫大な投資費用を簡単に諦められず、自発的に事業を継続しているか、ロシア政府の様々な企業撤退抑制措置で「やむを得ず」振るわない事業を維持している企業が増えたためだ。「カールスバーグ」や「ダノン」のように、ロシア当局に事業を差し押さえられた事例もある。この戦争の被害者は民間人だけではない。民間企業も含まれる。

 このような状況で、因小失大(小さな利益にこだわり、かえって大きな損失を招くこと)の企業もある。オランダの酒類企業「ハイネケン」は、戦争勃発直後、いち早く脱ロシアを宣言したが、ライバル会社が先に撤退すると、素早く新しいブランドまで発売し、反射利益を享受した。しかし、反ロシア運動団体の撤退圧力に耐え切れず、わずか1ユーロで全資産を現地企業に売却し、急いでロシアを後にした。ハイネケンは今も、ロシア政府の撤退抑制措置と1800人の雇用に対する責任のために撤退を見送っていただけだと主張する。真実はその中間のどこかにあるだろう。

 ロシアが競争力を持つ防衛産業とエネルギー業種でも、西側企業はできるだけ長く持ちこたえる方を選んでいる。海外企業の業種別対ロ事業再編実態を見てみると、事業維持の比重が最も高い業種は防衛産業(87%)だ。ロシアに残った企業の中には中国、イランだけでなく、驚くべきことに米国やドイツ、フランスなど対ロ経済制裁の先頭に立つ主要7カ国(G7)の企業も含まれる。エネルギー業種でも英国とカナダを除いた残りの主要7カ国の企業が残留したのが目を引く。米国やフランスなどの原発稼動国が、ロシア国営企業「ロスアトム」に高純度低濃縮ウラン調達を完全に依存しているという“不都合な真実”も確認できる。

 ロシアの海外企業再編実態を国別に見ると、安全保障への脅威が最高潮に達したフィンランドやスウェーデン、ノルウェーなどロシアに隣接した国は、事業中断および撤退完了の比重が非常に高い。一方、海外企業の中で最も高い比重を占める米国(21.2%)とドイツ(11.3%)の撤退完了率はそれぞれ7.6%と8.5%で、最低水準だ。事業維持の比重が高いからといって、ロシアの反対陣営とは限らない。アラブ首長国連邦(89%)、トルコ(87%)、中国(84%)、インド(83%)などの西側に属さない国々だけではなく、韓国(79%)やイタリア(63%)、ドイツ(55%)などの企業が事業を維持している割合も米国(23%)の2倍をはるかに上回る。

 欧州復興開発銀行(EBRD)は9月、カザフスタン、アルメニアなど中央アジア5カ国がロシアからの移民や送金、対ロ迂回輸出、ロシアに代わる投資・観光など、対ロ経済制裁の反射利益に支えられ、2023年(5.7%)と2024年(5.9%)に高成長を実現するとの見通しを示した。ロシアも2023年に1.5%の成長が見込まれている。実際、欧州連合(EU)産半導体を搭載した家電製品はもちろん、先端電子部品とドローンが中国、イラン、カザフスタン、トルコ、アラブ首長国連邦など経済制裁に参加しない国を迂回し、ロシアに流れている。相互依存性が高度化した今日、西側の一部の対ロ制裁は当初から効果がないとみられていたが、西側では互いに一致しない対ロ制裁リストを調整しようとする動きもまともに見られなかった。

 今、私たちの目の前の状況は、依然として相互依存性の高い国々が軍事安全保障の面では「新冷戦」的秩序を強化し、価値と理念を前面に掲げている一方、経済の面では実利は得るという、冷酷な「保護主義の陣営化」の現実を物語っている。すべての国の生産と雇用、自国民の安危がかかった実存的問題だ。明日、どこでまたどのような戦争が起こるかも分からない状況で、誰がこれを責められるだろうか。価値と実利のバランスを取る有能な外交がいつにも増して重要な時期だ。

//ハンギョレ新聞社
キム・ヤンヒ|大邱大学経済金融学部教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1112516.html韓国語原文入力:2023-10-18 02:41
訳H.J

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