イスラム武装組織ハマスに対する地上軍投入を明らかにしているイスラエルが、最大規模のガザ地区への侵攻を予告した。イスラエルの地上軍投入が本格化すれば、戦争が周辺国へと広がる可能性も高まる。何よりも、幼い子どもを含む何の罪もない民間人の人命被害が極に達する可能性がある。さらに手遅れになる前に予告された人道主義的惨事を止めなければならない。
イスラエルは地上軍投入に先立ち、正規軍16万9500人、予備軍36万人を招集した。1973年の第4次中東戦争後の50年で最大の規模だ。イスラエルは11日(現地時間)にガザ地区北部の住民110万人に対して南に避難するよう通告したのに続き、14日には陸海空軍合同のハマス壊滅作戦を宣言した。米国、欧州連合(EU)、国連などが全面攻撃の延期を求めているが、イスラエルは考えを曲げていない。
世界保健機関(WHO)は、ガザ地区北部の病院で治療中の2千人あまりの患者にとって、避難要求は「死刑宣告」だと警告した。さらにイスラエルが避難通路の1つに爆撃を加えたため、避難を開始した70人あまりの住民が死亡した。妊娠した女性、高齢者、体の不自由な人などは避難をあきらめている。だがイスラエルはすでに電気、ガス、飲み水の供給をすべて断っている。出ていくことも入ることもできない状況なのだ。さらにイスラエル軍は交戦規則を緩和し、兵士が敵と疑われる人を撃つ前の確認手続きを簡素化したという。人口が密集しているガザ地区で市街戦が繰り広げられれば、ハマスと一般市民が入り混じり、民間人の被害はさらに拡大せざるを得ない。
米国のジョー・バイデン大統領はイスラエル、パレスチナの首脳と通話し、民間人被害の最小化と人道主義的支援について議論した。トニー・ブリンケン国務長官も「戦争拡大の防止」を強調しつつ、サウジとアラブ首長国連邦の外相に会ったほか、中国の王毅外相とも電話で話し合った。しかし米国は休戦を提案しておらず、イスラエルの地上戦にも明確な反対の声をあげていない。米国の国内政治上の理由からだ。だから口で「民間人の殺傷の防止」を語るだけで、空母の派遣などで事実上イスラエルの大規模報復を支えている格好だ。
音楽祭に参加していた一般市民を標的として銃を乱射し、人質に取るなど、ハマスの行為はいかなる大義名分を掲げても許されない蛮行だ。しかし、ガザ地区の民間人の命を気にもとめないイスラエルの大規模地上戦も容認できない。戦争中であっても民間人の殺害は戦争犯罪として処罰される。一般市民がこれ以上「血の報復」の対象となってはならない。